平成27年 司法試験過去問検討 憲法

おす!かずだ!

本問は、憲法14条が保障する「相対的平等」の理解を問う問題だな。

平等は、書き方が分かりにくいが、本記事は俺が使っている高橋和之の基本書で述べられている手法(「平等」の中で「自由」の問題も検討)で書いてみたので、悩んでいる方は参考にしてもらいたい。

また、本来平成27年憲法の問題は、主張・反論形式だったのであるが、近年はリーガル・オピニオン形式となっているから、その形式の乗ってみた。

では、さっそく始めておこうと思うのだが、その前に、高橋和之の法の下の平等の論じ方を少し解説しておこう。

高橋和之の法の下の平等の論じ方~「平等」の中で「自由」の問題も検討~

高橋は、平等権違反を論ずるプロセスとして、

  1. 誰と誰との間で区別が生じているか
  2. その区別がいかなる事由に基づくか1
  3. その区別がいがなる権利・利益に対してなされているのか

を検討したうえ、その内容に応じた違憲審査基準を設定して、違憲か審査する、としている。

これって、違憲審査基準の設定の前提として一般的に検討する要素である、

  1. 制約の有無
  2. 制約の態様・程度
  3. 権利の重要性

を法の下の平等の審査の場合に置き換えたものといえる。

本質は、以下の図で表されるバランス論なので、ここを踏まえて単なる暗記に走らないようにしよう。

そうすることで、採点実感が要求する「優れた問題分析力」を示せることになるからである。

どういうことか。

すなわち、高橋の上記手法では、権利の性質を平等権の問題の中で論じることになる(3)。

そうすると、採点実感がいう『「平等」の問題が「表現」の問題と連動している点を見抜き,両者を密接に関連付けて論じる答案』として評価されうることになる。

つまり、巷にあふれる「平等の書き方」を暗記しただけの、「自由」と「平等」を並列的に論じている答案との差別化ができるのである。

かず
かず
しかも、ムダな記述量が減り、時間の節約になる

問題等

答案(リーガルピニオン形式)

1 BとCの区別について

(1)意見

Y対策課採用をBが拒否された処分(以下、「本件不採用処分」という)は、Cとの関係で、憲法14条1項(以下、「憲法」は省略)が保障する平等権を侵害するものであり、違憲である。

(2)平等権の保障

同条の「平等」について、個人の尊重(13条)の観点からは、いかなる者も同一に扱う絶対的平等を意味するという意味ではなく、違いに応じた取扱いを要請する相対的平等を意味すると解すべきである。

この観点からは、同じ立場にある者を異なるように扱うことも、違う立場にある者を同一に扱うことも、合理性を有する限り、14条1項に反するものではない。

そうであれば「すべて国民は」合理性を有する区別・同一取扱いを受ける権利(以下「平等権」を保障されているといえる。

そして、BはA市に居住する大学院生であり、「すべて国民」に該当するので、平等権が同条により保障されている。

そこで以下、①Bに区別が生じているか、②その取扱いがいかなる事由に基づくか、③その取扱いがなる権利・利益に対してなされているのか検討したうえ、④合理性を検討する。

(3)①区別が生じているか

BはCと異なり、甲市シンポジウムにおいて一般論として自らの意見を述べたにとどまり、甲市シンポジウム自体を阻止しようとして甲市職員に傷害を与えたCとは異なる立場に置かれている。

他方、Y対策課採用試験において、BもCも甲市シンポジウムにおいて上記のような発言・があったことを理由として不採用とされており、同じ扱いがされている。

そのため、区別がされていないといえる。

かず
かず
異なる立場にあるにもかかわらず区別がされていないことは、相対的平等の観点からは、憲法上の権利に対する「制約」である

(4)②同一取扱いの事由

同条が保障したのは一般的平等あるが、例示事項に基づく同一取扱いは違憲の疑いが強いので、その事由がいかなるものかが問題となる。

この点について、Bが甲市シンポジウムにおいて述べた意見は、Y採掘においては安全確保の徹底が不可欠であるというものであり、個人の基本的なものの見方・考え方を意味するものであるから、同条列挙事由の「信条」に基づく区別といえる。

したがって、違憲の疑いが強い同一取扱いであるといえる。

(5)③権利の性格

また、Bは上記信条を甲市シンポジウムで述べたことを理由として採用試験で不利に扱われたものである。

Bのこの行為は、自己の信条を外部に表明して賛同者を募って団結し、また議論を促して政治的意思決定に影響を与えるという、自己実現・自己統治の価値を有している。

したがって、上記信条は表現の自由(21条1項)としての性格を有しており、重要な権利であるといえる。

(6)④同一取扱いの合理性

ア 合理性の判断基準

以上のように、本件不採用処分によるCとの同一取扱いは、表現の自由としての性質を有するBの信条に基づくものであり、重要性な権利に対して違憲の疑いが強い取扱いがされている。

しかも、Bの見解の内容に着目して行われる表現内容規制であるから、それが直接規制でないとしても、間接的に将来の表現に対する強い委縮効果を生じさせる。

そうであれば、同一取扱いの合理性判断においては、目的が必要不可欠であり、かつその手段が目的達成のために必要最小限であることが要求されるべきである。

イ 目的

A市がBとCを同一に取り扱った目的についてみると、Y対策課の設置目的や業務内容に照らしてふさわしい能力・資質等を有しているものを採用する、という点にあり、採用選考としての性質上、必要不可欠であるといえる。

ウ 手段

もっとも、Cと共にBを採用しないとの達成手段については、以下のように必要最小限とはいえない。

すなわち、BはY採掘事業にはいまだ問題が残っており、安全確保の徹底が必要不可欠であるところ、A市のY採掘事業には現段階では反対せざるを得ないとの信条を有している。

Bのこのような問題意識は、Y採掘事業を全面的に反対するのではなく、その安全性が確保されることを条件として許容されるとの立場であり、Y採掘事業において安全確保の徹底に厳しく目を光らせるものである。

そして、Y対策課設置の目的が、将来実施されることとなるY採掘事業の安全性及びこれに対する市民の信頼を確保することであり、その業務内容もY採掘事業の安全確保・この安全に対する市民の信頼確保に関する業務であることからすれば、Bの上記信条はY対策課設置の目的・業務内容と合致するものである。

したがって、資質の面でY対策課の職員として不適任であるとはいえない

そして、Bが天然資源開発に関する研究を行っている大学院生であったことからすると、能力の面でもY対策課の職員として不適任であるとはいえない。

他方、CはY採掘事業についてこれを絶対に反対するという信条のもと、甲市シンポジウムの開催自体を中止させようと拡声器で連呼しながら会場に入場しようとし、さらにこれを阻止しようとする甲市の職員ともみ合いになり、その職員を殴って怪我をさせ、傷害罪で罰金に処せられている。

これは、Y採掘事業を行うことを前提とするY対策課の設置目的・業務内容に反する信条であり、かつその表現態様も犯罪行為であり、表現の自由の保護範囲を逸脱し公共の福祉(13条)に反するものである。

したがって、Cは資質の面でY対策課の職員として不適任であるといえる。

以上、BはY対策課の職員として適任であり、他方Cは不適任である。

そうであるにも関わらず、本件不採用処分は、両者の信条を具体的に考慮せずに同一に取り扱うものであり、Bに対して必要最小限度を超える手段を行使したといえる。

かず
かず
手段の不可欠性は、厳格な基準になればなるほど、事実の具体的な検討が要求される。

これは、立法裁量が狭まり、立法からこぼれた少数者の人権保障を任務とする裁判所の判断が前面に出てくるからである。

したがって、Cとの関係で不合理な同一取扱いである。

エ 結論

よって、Bに対する本件不採用処分は、法の下の平等に反し、違憲である。

2 BとDの区別について

(1)意見

Bに対する本件不採用処分は、Dらとの関係で、14条1項が保障する平等権を侵害するものであり、違憲である。

(2)平等権の保障

上述のように、Bには、平等権が保障されている。

(3)①区別が生じているか

Bの勤務実績は、Dらと比較してほぼ同程度ないし上回るものであったにもかかわらず、Bは不採用となり、Dは採用されている。

ここでは、同じ立場にある者を異なった取扱いがなされており、区別が認められる。

(4)②区別の事由

Y採掘においては安全確保の徹底が不可欠であるという「信条」に基づく区別である。

(5)③権利の性格

上記信条は、表現の自由としての価値を有している。

(4)④区別の合理性

上述の区別の事由、権利の性格として重要性に鑑みれば、目的が必要不可欠であり、かつその手段が目的達成のために必要最小限であることが要求されるべきである。

目的については、上述のように、必要不可欠であるといえる。

手段について、Bの勤務成績はDらと比較してほぼ同程度ないし上回るものであり、またBは天然資源開発に関する研究を行っていた大学院生であったのであるから、能力の面でBはDらよりもY対策課職員として適任であったとえる。

また、上述のように、Bの信条がY対策課の設置目的・業務内容に合致するものであったことに照らせば、資質の面でもY対策課職員として適任であったとえる。

したがって、Yに対する本件不採用は、必要最小限とはいえず、Dらとの関係で不合理な区別であるといえる。

よって、Yに対する本件不採用処分は法の下の平等に反し、違憲である。

以上

参考文献 

  • 立憲主義と日本国憲法(高橋和之)

この基本書のレビューはこちら↓

歯に衣着せぬ司法試験の基本書レビュー

2 件のコメント

  • 平等権のところで表現の自由は一緒に考慮せずに
    別に表現の自由の事後的な萎縮効果のところで述べれば

    平等権というよりも具体的憲法上の権利自由が保障されてない場合に平等原則違反の検討すればよいのでは?

    14条の限定列挙か例示列挙であること

    信条による区別なのか
    仕事の能力による区別なのか

    • 佐藤健さま

      コメントありがとうございます。以下、ご返答いたします。

      ●平等権のところで表現の自由は一緒に考慮せずに
      別に表現の自由の事後的な萎縮効果のところで述べれば
      平等権というよりも具体的憲法上の権利自由が保障されてない場合に平等原則違反の検討すればよいのでは?

      →そういう書き方も考えられますね。
      では、
      ①佐藤さんがいう「具体的憲法上の権利自由」とは、どんな権利をいうのでしょうか?
      ②それを検討する必要性は、なぜあるのでしょうか?

      一緒に考えてみましょう。ご回答をお待ちしております。

      ●14条の限定列挙か例示列挙であること
      信条による区別なのか
      仕事の能力による区別なのか

      →ご質問は、「区別事由が信条なのに違憲審査では仕事の能力が手段になっている。信条だから仕事に対する見解の相違で判断するべきで、仕事の能力は別の区別事由ではないのか」ということですね。
      これは、メールにて返信いたしました通り、信条は制約の強度の議論であり、手段の相当性の議論とは性質が異なる、という回答になります。

  • 佐藤健 へ返信する コメントをキャンセル

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)