(作成中)第5章 不法行為

709条の請求原因

  1.  Xが一定の「権利または法律上保護される利益」を有すること
  2.  ①に対するYの「侵害」行為
  3.  ②について「故意又は過失」があること
  4.  Xに「損害」が発生したこと
  5.  ②の侵害行為に「よって」④の損害が生じたこと(因果関係)

①② 権利または法律上保護される利益の侵害

「法律上保護される利益」…「権利」の意味を狭く解した場合に生じる保護が欠けてしまう不都合を避ける。人格・環境にかかわる利益や取引・競争に関わる利益であって、いまだ現代社会おいて「権利」として成熟していないもの(生成中の権利)についても、保護の窓口なる。

③ 故意又は過失

故意とは、結果発生を認識し、または認容していることをいう。

過失とは、結果発生の予見可能性を前提とした結果回避義務違反をいう。

→過失の評価根拠事実の指摘

④ 損害

差額説=不法行為がなければ被害者が置かれたであろう財産状態と、加害後の現在の財産状態との差額を損害と捉える立場

判例は基本的に差額説。しかし修正する場合もある。  

⑤ 因果関係

事実的因果関係ある損害事実をすべて含めるとすれば損害の公平な分担を図ることができない。そこで416条を類推適用し、相当因果関係の範囲内に限定する。

企業損害

 

企業の代表者・従業員らが被害を受けたことに起因する、企業の逸失利益の損害は、通常生ずべき損害として認められるか。

このような企業の営業活動に伴うリスクについては、企業自身が自らの負担すべき事業リスクとして計算に入れ、保険をかけるなどの回避措置を講じるべきである。したがって、原則として認められない。

もっとも、被害者と会社が一体のものといえるであれば、代表者が個人として逸失利益を請求した場合と差をつけるべきでないから、通常生ずべき損害と認められる。

 

最判昭和43年11月15日

本件についてみると、X₂社は法人とは名ばかりの、いわゆる個人企業であり、その実権はX₁に集中していて、同人にはX₂の機関としての代替性がなく経済的にX₁とX₂は一体をなす関係にある。したがって、被害者と会社が一体のものといえるから、通常生ずべき損害として認められる。                                                      

2 709条の請求に対する抗弁