目次
大ウソの弱点
大ウソの弱点として、「バレ」の部分が、どうしても聞き手に依存してしまうというものがあります。
つまり、
- 「冗談を言った」を見抜けるほど互いの関係性が深まっていなかったり、
- 相手が冗談を理解できないオカタイ頭の方だった場合、
非現実的なことを真面目に受け取ってしまい、引かれてしまう場合があるのです。
どういうことでしょうか。
例えば、部長と部下(2人)が飲みに行って、料理を注文したけれど、なかなか来ないとしましょう。
そのとき、部長が気を利かせて、「よし、俺が厨房で料理を作らせてもらうわ!」と席を立とうとしました。
このとき、部下が2人と部長との関係が浅かったり、部下が両方オカタイと、「いえいえ、部長は座っていて下さい…」と普通の会話になってしまいます。落とせていないですね。
これは、部長の雰囲気を和ませようという愛を、受け止め、活かせていない、ということです。
これだと、飲み会もあまり盛り上がらず、2人の部下と部長との距離も縮まらないでしょう。
では、大ウソのこのような弱点をどう生かすかというと、ツッコミ役を誰かが担う、ということです。
「部長が厨房でトントンやっている絵は見たいですけど!ここは板前さんを信頼しましょうよ!」
こうすることで、ウソがバレて、笑いが起きてツッコミを入れなかった方の部下を笑わせることができますし、「あなたは面白いことを言った」というメッセージが部長に伝わり、部長も嬉しいです。
ボケとツッコミの共同作業で、場を和ます。漫才がこれです。
そして、ツッコミとは、「サービス」なのです。
引用:後掲『ウケる技術』
たとえツッコミ
「25万て…中古の400CCのバイクじゃないんですから‥」
ふわちゃんのツッコミが鋭いです!
「薬やってるの?」
「やめて!誰が田代まさしだし!」
「特殊か!?」
「砂漠か!?」
5分くらいのおじいちゃんのノリツッコミ
特集か!?」
「墨汁か!?」でオチです。
ツッコミができると…
異性にモテる
Q:異性でこの人頭いいなと思うことを教えてください(複数回答)
- 1位…話の引き出しが多い(49.9%)
- 2位…答えにくい質問への切り返しの速さ(40.0%)
- 3位…ツッコミが鋭い(39.6%)
- 4位…理解が早い(38.3%)
- 5位…アイデアが豊富(37.8%)
20代男性の場合も、「ツッコミが鋭い」は4位に入っていました。いいツッコミができればスマートに見えて、異性にもモテるわけです。
会話相手に喜ばれる
仕事の現場でも、誰かがダジャレを中心にボケてくることはよくあるでしょう。このとき、ツッコミを入れてあげれば、ボケた相手は喜びます。ツッコミにおかしな部分を指摘され、自分がより面白く見えるからです。
逆に、ツッコミを入れずに無視してしまうと、印象は最悪です。意図的におかしいことを口にした相手からすれば、ツッコミがないと、おかしいままの状態です。
ここんな恥ずかしいことはなく、もし二回連続でスルーすると、「もう、こいつの前ではボケない」と煙たがられてしまうでしょう。
喜ばれるツッコミをする代表格が、今田耕司さんです。今田さんが司会の番組は、「損する出演者がひとりもいない」と言われています。
今田さんは、どんな小さなボケでも見逃さずにツッコミます。たとえ、相手が素人出演者でも同様です。仮にボケがすべったとしても、「今のは正直イエローカードです!」などと言い回しが面白いツッコミに変えることで、すべった人を輝かせます。
ウケようがウケまいが、今田さんがきちんと処理してくれる、ボケる方からしたら安心で、主演者はみんな満足して帰るのです。
今田さんがその事について、インタビューでこう話しています。
「少なくとも本人は面白いと思って話しているんです。ということは、どっか面白いんでしょう。100人おったら、100通り面白いツボがありますから、それを共感できた方が嬉しいし、楽しいじゃないですか。『それ面白くない』って言ってしまったらおしまいだけど、僕は『おれもそれ、わかった!』って感じていたいですね」
意図的なボケにツッコむことで、損することは何一つありません。老若男女の心をつかめるひとは、どんな時でもツッコめる人なのです。
あなたの職場にいる、ダジャレ好きの上司。「親父ギャグだ」と揶揄する前に、今田さんのようにきちんとツッコミを入れてあげたら、確実にその上司に愛されます。
ですが、上司のダジャレは、いつ飛んでくるかわかりません。身構えていれば、ツッコミや愛想笑いの一つでも浮かべられるものの、突然来ると、次のような事態に陥ってしまうことがあります。
あなた:「部長、このコピーのサイズは、A4でよろしいでしょうか?」
上司:「ああ、A4でええよん」
あなた「…」
このように沈黙してしまったら、今更愛想笑いするわけにはいきません。間が悪すぎますからね。そこで、このようなケースでは、今田さんの言葉を借りて、次のようなツッコミを入れて下さい。
「部長すいません、失礼を承知でいいますが、今のは正直、イエローカードですわ!」
気が利いたツッコミですから、上司が機嫌を損ねる可能性は低いでしょう。
「イエローカードか。ま、レッドカードじゃないだけましか」と返されたら、「うまいことおっしゃいますね」とフォローしておけば盤石です。
笑いが増幅する
ツッコミに「あるある」を入れ込んで、笑いを増幅させることができます。それが、後で詳しく説明する最強のツッコみ、「たとえツッコみ」です。
言い間違え漫才でおなじみ、ナイツのツッコミ担当、土屋伸之さんの塙宣之さんの言い間違いに対するツッコミを見て見ましょう。
塙:「子供の頃は、家でアニメとか観てましてね」
土屋:「僕もそういうタイプでしたね」
塙:「それいけアンポンタンが好きでね」
土屋「アンパンマンね。怒られますよ。全国の子供から」
塙:「すきだったのは、タバタさんという女の子ね」
土屋:「バタコさんだよ!普通のパートのおばちゃんじゃねえか!」
「バタコさんだよ!」で塙さんの大ウソを落としていて、それだけでも十分な笑いになります。
しかし、それに加え、「普通のパートのおばちゃん」という具体的な例を挙げることで、より落差がつくのです。
会話が広がり、深まる
ツッコミを修得して「ツッコミ脳」になると、他人と話しているときに、「相手の発言に、常識ではない部分(=違和感)はないか」を念頭に置いて話を聞けるようになります。すると、会話が広がり、途切れなくなります。
例を挙げましょう。
仕事を終えたあと、仕事で関わった初対面の人と、帰る方向が同じことがよくありますね。大して話すこともないのに、駅までふたりっきりで歩かなければなりません。
話題に困って、居心地が悪い沈黙が訪れた経験は、誰にでもあるでしょう。
こんなときでも、相手の発言の違和感に要所要所でツッコミを入れていけば、会話がどんどん広がっていきます。
あなた「さきほどは、打ち合わせをありがとうございました。」
相手「いえいえ、こちらこそありがとうございました。」
あなた「…ところで、〇〇さんって、この辺はよく来られるんですか?」
相手「仕事のときだけですね。一度だけ、家族でこの近くの百貨店に買い物に来たことがございますが」
あなた「あの百貨店は、なんでもそろっているからいいですよね」
相手「ええ、確か、スイーツの食べ放題に行ったのかな」
あなた「あ、甘いものお好きなんですか?」←ツッコミ
相手「いや、私はそうでもないのですが、子どもが好きでね」
あなた「お子さんですか。確かに、子どもはお菓子とかケーキが大好きですからね」
相手「そうなんですよ。私はむしろ苦手だっったりするのですが、上の子も、真ん中の子も、下の子も、全員甘いものに目がないんですよ」
あなた「お子さん、三人もいらっしゃるんですか!?」←ツッコミ
相手「手がかかって大変ですよ」
あなた「そうですか。私は子どもはまだなので、なんだか楽しそうでうらやましいですよ。」
相手「かわいいですけど、大変ですよ。なにしろ、三人とも女の子ですからね」
あなた「三人とも女の子なんですか!?」←ツッコミ
ツッコミ目線で会話を拾っていくことで、会話が広がり、展開していくのがわかりますね。
トーク番組の司会者も、ゲストに質問を投げかけて情報を引き出し、違和感をツッコミを入れながら話しを広げています。そして、時折自分の情報や意見も交えながら、また同じように相手の情報にツッコミを入れていく。これで、長時間引っ張るわけです。
このときポイントになるのが、ツッコミが別の話題を始める「起点」となっている、ということです。
さきほどの会話例では、甘いものの話をしたあとで、家族の話に移行しています。そのきっかけとなったのは、「お子さん、三人もいらっしゃるのですか?というツッコミ。
違和感を意識していれば、ツッコミで話題を変えることもできるのです。
甘いものの話を広げたければ、このツッコミは後回しにすることもできます。甘いものの話で盛り上がった後で、「ところでお子さん、三人もいらっしゃるんですか?」とツッコミ直せばいいわけです。
これらを繰り返していると、途中で相手の方からもいろいろ質問してくるようになります。会話の中で、出身地や趣味など、お互いの共通項が見つかれば、話が盛り上がります。
ミスを正せる
上司と二人で取引先に出向くケースで考えてみましょう。上司がしっかりしている人であればいいものの、そうとは限りません。何かとミスの多い人であれば、きちんとフォローしてあげなければなりません。こんな時でも、ツッコミが使えます。ツッコミ脳になって違和感を意識すれば、次のようにフォローできます。
上司:「こちらが御社にご提案したい、保険の見積もりプランでございます」
取引先:「…うーん、ご提案いただいたこのプランだと、少し予算オーバーしてしまいますね」
上司:「なるほど、でしたら、B案の方はいかがでしょうか。B案ならご予算の方はお安く…」
あなた:「課長。失礼ですが、安いのはA案の方ではないでしょうか?」←ツッコミ
上司:「あ、A案の方か。失礼しました。安いのはA案の方です。しかも、A案は今すぐに申し込んでいただければ、さらにお安く…」
あなた:「課長、そのオプションはC案です!」←ツッコミ
上司の言葉を漫然と聞き、悠長に構えていたら、ミスを見逃してしまうかもしれません。仕事の現場では、すぐに指摘して訂正しなければならないことがたくさんあり、だからこそツッコミ脳になるべきなのです。」
ツッコめるのは、言い間違いだけではありません。いい忘れを指摘してり、自分から補足説明したりすることもできます。
このように、あなたがツッコ脳を持っていれば、関係性の深い上司と、頼りになる部下の名コンビとして、取引先と良好な関係を深めることができるでしょう。
そうすれば、上司にも好かれます。
ツッコミ3ステップ
ツッコミとは何なのでしょうか?その反対概念であるボケの定義から浮き彫りにしていきます。
ボケとは、常識とかけ離れた発言の事を言います。「大ウソ」ですね。
これに対して、ツッコミとは、人のボケの違和感に気づき、それ指摘して説明することです。
ツッコミは、次の3ステップを踏むことでできます。
- 違和感を感じる
- 指摘する
- 補足説明
です。
それぞれ説明しましょう。
違和感を感じる
上で、おかしな言動を取るのがボケで、それを指摘するのがツッコミであると定義しましたね。
この「おかしな部分」は、「違和感」と言い換えることができます。つまり、違和感を指摘するのがツッコミの役割です。
このとき、「非常識なところはどこか」を意識すると、違和感を見つけやすいです。
例をいつくか挙げましょう。
例1:醤ゆ
あなたは、この言葉がボケになっていることに気づきましたか?
「醤」という字は、読み書きが難しい部類に入ります。
対して、「油」という漢字は小学校3年生で習うものであり、難しくありません。
つまり、この問題は、難しくてひらがなにすべき「醤」という字を漢字で書いておいて、漢字にすべき「油」がひらがなになっているという、ボケなのです。「ひらがなにするの逆だろ!」と突っ込むわけです。
このように、ツッコミの本質とは、違和感を見抜くことなのです。そして、このような違和感に反応することを、「拾う」といいます。
もう一例挙げます。
例2:「夫婦円満!商売繁盛!恋愛成就!眼病治癒!合格祈願!ー2014年12月30日 山田倫太郎より」
神社で見つけたこの絵馬に、入れられるだけツッコミを入れてみてください。
…
…
- 「いくつお願いしてるんだよ!」
- 「夫婦円満を願っているのに、恋愛成就とは何なんだよ!」
- 「商売繁盛を願っているのに、合格祈願とは何なんだよ!社会人なのか学生なのかはっきりしろよ!」
ここまでは一般の方でも拾えるでしょう。でも、拾える人は、さらに次のようにツッコんでいきます。
- 「年末にお願いしているけど、どうせだったら年が明けてからお願いしろよ!あと二日まったら正月なんだからよ!」
- そもそも『山田倫太郎』とか言ってるけど、こんな無茶苦茶なお願いしといて、どこに倫理観があるんだよ!」
- 「眼病治癒とか言っているけど、そもそもお前は自分のことが見えてねえぞ!こんな無茶なお願いしてるんだから、目を直す前に自分をもう一度見つめ直せ!」
- 「『山田倫太郎より』って、何でお前そんななれなれしいんだよ!相手は神様だぞ!伝言残すみたいなノリで、神様に無茶苦茶なお願いしてるんじゃねえよ!」
どうでしょうか。
こんなに細かく拾ってくれるツッコミがいれば、ボケた人は安心しますし、嬉しいですよね。
仕事においても、拾える数が多いほど、仕事の質が上がります。書類一つとってみても、内容、誤字脱字、図形やグラフの見せ方…拾うことを意識していれば、違和感がたくさんみつかります。
上司に提出する前にたくさんツッコんで修正しておけば、より完成度の高いものを提出できるわけです。
もう一つ例を出します。
例3:「石の上にも3三年」
「我慢強く耐え忍べば、必ず成功する」という意味の格言です。冷たい石の上に3年座っていれば、石が暖まってくることから、最初はつらくても、長く辛抱していればやがて報われることのたとえで使われます。
これにツッコんでみてください。
…
…
この言葉の非常識な部分を指摘するのは難しくありません。
「石の上に3年いるのなんて、無理だよ!」このツッコミなら、誰でも入れられます。
ですが、着眼点としては甘いです。普通の人が思いつかないような非常識な部分を、脳みそを振り絞って考えてみてください。
いかがでしょうか。イメージで入り込み、客観的かつ俯瞰的に熟慮すれば、次のようにツッコめるはずです。
- 「餓死するよ!」
- 「トイレはどうするんだよ!」
あなたが契約社員なら、次のようなツッコミも可能です。
「いいこと言っているようだけど、俺は契約社員だから、そもそも三年もいられねえんだよ!弱者切り捨てか!」
このように違和感を感じることができるのが、コミュニケーションに必須である、「共感力」や、「空気を読む」、という能力です。
「違和感」は会話の相手や環境だけに存在するものではありません。そう、あなた自身の違和感です。
自信満々に発したボケが、残念ながらウケないときがあります。場がシーンとしてしまい、バツが悪くて仕方がありません。
こんなとき、ますだおかだの岡田さんや、FUJIWARAの藤本さんは、よく次のようなツッコミをします。
- 「全然ウケへんやんけ!これ!」
- 「自信満々にやったのにすべったやん!」
- 「なんやねん、この変な空気!」
また、高田純次さんも、このセルフツッコミの名手です。トークの最中に頭がこんがらがったら、「俺、何の話をしているんだっけ?」とセルフツッコミをいれます。
このセルフツッコミを入れると、ボケがすべったことが帳消しになります。そればかりか、笑いが起きるのです。それはなぜか?
それは、「失敗した」という「あるある」に転換しているからです。
例えば、酒の席で靴下に穴が空いていた場合、隠すより勇気を出して、「靴下、穴開いてるじゃねえか!」とセルフツッコミをした方が、笑いになり、みんなに親近感を感じさせることができます。
セルフツッコミという最終兵器を持っていれば、自信満々にボケていくことができますね!
②指摘する
まず、相手のボケに素早く反応することが大切です。変な間を開けてしまっては、ボケた人に恥をかかせてしまいます。
次の例で見てみましょう。
あなた:「部長、来月、有給休暇を使わせてもらえませんでしょうか?」
部長:「いいけど、金払えよ」
あなた:「なんで金払うんですか!」←ツッコミ
部長:「そうか。ところで、有給休暇をもらってどうするんだよ?」
あなた:「気分転換で旅行でもしようと思っていまして」
部長:「気分転換って、もしかしてタイに行って性転換手術でもするのか?」
あなた:「なんで性転換するんですか!」←ツッコミ
有給休暇は売り物ではありませんし、旅行に行くと聞かされて、タイに性転換手術に行くと決めつけるのもおかしいです。部長のボケを全て拾っていますね。
しかし、ツッコミに不慣れな状態で、「なんで金払うんですか!」「なんで性転換するんですか!」というやや長いフレーズまで出てこない方がいるかもしれません。
そういう方は、「いやいや!」や、関係性が深ければ、「オイ~っ!」などでも構いません。
これに、体を使ったリアクションを加えると、なおよいです。
(手で突っ込んでる画像)
吉本新喜劇では、出演者全員でズッコケます。これも、ボケの非現実性を視覚的に具体化するテクニックです。
まずは、とにかく全力で拾うことを意識して下さい。
そのあとに、深ぼってボケを深めます。次の補足説明です。
補足説明
「いやいや!」「オイ~っ!」あるいは「なんで金払うんですか!」「なんで性転換するんですか!」だけでは、まだ抽象的であり、ボケの潜在能力を拾い切れていません。
指摘した後に、ボケの非現実性をさらに具体的にすることで、落差ができ、笑いが大きくなります。これが、補足説明です。
- 「いやいや!なんで金払うんですか!あこぎな商売やめてくださいよ!」
- 「オイ~っ!なんで性転換するんですか!そっちの気はないですよ!」
より非現実性が際立ちますね。右側のフレーズに移行するほど、具体性が高まっていることに着目してください。
ノリツッコミとは、相手のボケにすぐに反応せずに、ボケを肯定して話に乗った後にツッコむテクニックです。
明石家さんまさん、ますだおかだの岡田さんが、このノリツッコミを良く使います。
さんまさんの例をご紹介しましょう。
ゲスト:「まあ、でも、さんまさんはこの先、ずっと独身でしょうからね」
さんま:「そうやねん、結婚はこりごりやし、このままいって最後は孤独死…ってコラ!」
ゲストの「ずっと独身」という発言は、かなりリアルです。ですから、このボケの狙いそこにはありません。「さんまさんという大御所に、あえて失礼なことを言い放つ」という非現実性にあります。
しかし、これは態度によるボケであって、まだかなり抽象的ですよね。ここで返せるツッコミは、抽象的な「コラ!」あるいは「コラ!失礼だろ!」くらいであり、落差が少なすぎます。大ウソがバレず、悲壮感が漂ってしまいます。
ここで、「そうやねん、結婚はこりごりやし、このままいって最後は孤独死…」ということで、「一生独身」さらに具体的にし、極端にします。さんまさんほど人を笑わせてきた人は、人望も人脈もあるでしょうし、お子さんもいますし、お金もありますから、「最後は孤独死」は非現実性を高めるフレーズです。
相手の失礼さに乗ることで、軽いボケを非現実の世界にはね上げて、質量と落下エネルギーを高めているのです。
そうしたうえでの「コラ!」ならば、落差があり、笑いになります。
このように、ボケの弱さを補うために、自分も一緒にボケていくのが、ノリツッコミのテクニックなのです。
お笑い怪獣の「拾う力」の現れですね。
ツッコみのノンバーバル
「あの芸人は、ツッコミのキレがいいよね!」と芸人を評するときに、よく耳にする言葉です。プロのツッコミには、このようにキレがあります。
逆に、素人のツッコミにはこのキレがありません。
キレのいいツッコミか否か判断する要素として、
- 声
- タイミング
- 長さ
があります。それぞれみていきましょう。
声
素人のツッコミは、まず、声が小さい。
たしかに、普段の生活の中で漫才師のようになんでもかんでも大声でツッコミを入れる必要はありません。
しかし、ツッコミは違和感を指摘しなければなりませんので、普通の声のままでは、起伏がなくて、非常識性を際立たせることができません。
ですから、ツッコミをいれるとき、いつもより声をはって、ズバッと言えるように意識しましょう。
タイミング
タイミングが遅いのもアマチュアに多いミスです。
次の会話でみるように、ボケの意味を理解するまで、時間がかかってしまうのです。
上司:「いや、暑いな今日は。真夏日だな」
あなた:「ですね」
上司:「暑いから、今日のランチは、おでんでもいくか」
あなた:「…」
上司「…」
あなた「……いやいや、なんでおでんなんですか!」
ツッコむのが遅く、ボケをしばらくほったらかしてしまっています。ボケを放った上司からすればこんなに恥ずかしいことはありません。
夏の暑い日におでんを食べるのはどう考えても非常識なので、すぐに反応しなければなりません。
あなたが単なるイエスマンなのか、自信をもっていて献身的なマインドなのか、それが分かれ目です。
ただし、ツッコミを学び始めて最初の方は、慣れていないので違和感を発見するのが遅くなってしまうのは仕方がありません。
その場合は、上記の様に、「ちょっと!」「いやいや!」などの擬音を挟んだりしながら、徐々に具体的にしていくことを意識すれば大丈夫です。
長さ
徐々に具体的にしていくといっても、無駄な言葉があってセリフが長くなってしまうと、焦点がぼやけてしまい、キレが鈍ります。
先輩:「今日は部長が出張でいないから、みんなのびのび働いているな!」
あなた:「ですね。正直、気が楽ですよ」
先輩:「お前、俺が出張でいないときも、陰で同じようなことを言ってるんだろう?」
あなた:「言ってませんよ!先輩が出張でいないときに悪口なんて!私が影で先輩のことを悪く言うわけないじゃないですか!」←ツッコミ
「先輩が出張でいないときに悪口なんて!」は単に先輩の言ったことを繰り返しているにすぎず、違和感の指摘にはなっていません。
もっとシンプルに、「言ってませんよ!私がそんなこと言うわけないじゃないですか!」の方がキレがでます。
練習問題
ここでは、これまでご紹介してきたことを踏まえて、問題を提示します。
問題を解くことで、自分のツッコミ力を試すとともに、実力を養って下さい。
上司:「じゃ、全員がそろったところで乾杯するか」
あなた:「そうですね!」
上司:「今夜は無礼講だから、みんな遠慮しないでどんどん飲めよ!心配しなくても支払いは全部こいつ(あなた)だから!」
あなた:「〇〇〇」←ツッコミ①
上司:「乾杯の音頭は、山田がとれ。お前は今年入社したばかりなんだから、いろいろ言いたいことがあるだろう?」
山田:「いいですよ、部長、すんなの!」
上司:「いいから言えよ。お前の音頭で今年を締めくくれよ」
山田:「わ、わかりましたよ。では僭越ながら、私が音頭を取らせていただきます。えーと、えーと。ちょっと待ってくださいね。何を言おうかな。えーと、えーと。」
あなた:「〇〇〇!」ツッコミ②
上司:「ああ、美味い!こうやって美味いビールを飲むと、また今年もがんばろうって気になるわ!」
あなた:「おっしゃる通りですね!」
上司:「みんな、あけましておめでとう!」
あなた:「〇〇〇!」ツッコミ③
上司「お前、さっきから俺に強くツッコミすぎだろう!何様だよ!お前!」
あなた「〇〇〇」←ツッコミ④
僕の解答例は、
- いやいや!なんで僕が払うんですか!僕の財布、今クレープの生地くらい薄いんですよ!ここは部長が厚い愛情で包みこんで下さいよ!」
- おい!しっかりしろ!「えっと」言い過ぎて「えっと星人」みたいになってるぞ!早く人間戻れ!
- 今年もよろしくお願いしま~っす!いや~昨年も部長にはほんとにお世話になりました、今年もひとつって、まだ明けてないですよ!
- 部長が無礼講っていったんじゃないですか!忘年会だからって忘れすぎですよ!
まとめ~ツッコミの本質の本質~
(年さんのツッコミ画像)
ツッコミには、攻撃性があります。相手のおかしな部分を指摘するわけですから、場合によっては相手を不快にさせてしまいます。
「失礼ですけど、ズボンのチャックが開いていますよ」
相手に親切のつもりで言ったとしても、真顔で、公衆の面前で言われたら、相手は恥をかき、あなたを恨んでしまうかもしれません。
だけど、この違和感を指摘してあげないのも、相手に対して不親切ですよね。どういうツッコミが、相手に喜ばれるのでしょうか?
「欧米か!」のツッコミで人気になったコンビ、タカアンドトシ、ツッコミのトシさんが、雑誌のインタビューで次のように話していました。
「僕は、ツッコミ芸人に一番必要なものは、優しさだと思うんです。誰がボケてきても、きちんと返してあげるという優しさがないとやれない仕事です」
お笑いの世界では、「ツッコミは愛情である」とよく言われます。ツッコむという行為は「ボケたらほったかしにしない」ということです。トシさんがいうように、本来、優しさや気配りがないと成立しないものなのです1。
トシさんはツッコむとき、
「失礼ですけど、ズボンのチャックが開いていますよ」
あなたは、愛を持って、どうツッコミますか?
参考文献
本記事で拾えなかった様々な具体的がありますので、ツッコミ力を鍛えたい方は、買って、読んでみてください。
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