オス!かずだ!
(推定されない嫡出子とか表見嫡出子とか紛らわしいし、再婚禁止規定や憲法の法の下の平等からむし、もうダメ…)
という方はいないだろうか?
俺もそうだった。
しかし、ピンチはチャンスだ!
嫡出推定規定は改正を控えていて、試験的にも実務的にも、家族法の超重要ホット分野である。
だから俺は、これを機に、休日返上で法制審議会の中間試案や基本書を読み込み、現行嫡出推定規定には、3つの急所(問題点)があることがわかった。
3つの急所とは、
- 婚姻前SEXを想定しないのは古い!(婚姻後200日問題)
- 離婚が迫れば他の人とヤルこともあろ~が!(離婚後300日問題)
- 女性にだけ再婚禁止期間があるのは、女性への差別よ!(再婚禁止期間と法の下の平等)
である。
本記事では、嫡出推定の上記3つの急所に対しての、
- 裁判所による不合理性の指摘と救済
- 立法による対処(改正)
について、その本質的部分を抜き出して完全整理している。
本記事の内容を理解し覚えとけば、嫡出推定が、
- 択一で得意分野になる
- 論文ででたときも、逃げてきた他の受験者と差がつく理解を示せる
- 実務に出たときに中途半端に暗記してごまかして乗り切る苦痛がなくなる
から、本記事と出会った機会を十分に生かしていもらいたい。
ではまず、そもそも嫡出推定って何?良いとこあんの?という疑問から解消していこう。
目次
問題の根源「嫡出推定制度」ってなに?良いところあんの?
嫡出推定とは
嫡子推定とは、父と子の親子関係の有無とその内容(嫡出子か否か)を、一定の事実から推定する制度である。
引用元:『再婚後の出産、現夫の子に 「嫡出推定」300日規定に例外―法制審部会・中間試案』JJ.COM
この規定の趣旨は、
- 懐胎から出産までの期間がだいたい266日
- カップルは婚姻した後に初めてSEXをし、婚姻中はSEXを継続する
- 婚姻関係にある男女は、婚姻関係外の性交渉をしない
ことを立法事実とするものである。
そして、
- 子が婚姻後200日(早産の場合を考慮)経過後に生まれれば、婚姻中の懐胎である
- 子が婚姻の解消後300日(遅産の場合を考慮)以内に生まれれば、婚姻中の懐胎である
といえるところ(上記①。2項)、婚姻中の懐胎であれば、夫の子であるといえる(上記②③。1項)というものである。
推定は、反対の事実が認められば、覆る。
推定規定は、「普通はこうでしょ」くらいの蓋然性を基礎にして、とりあえず一定の事実を想定しておく際に用いられる。
嫡出推定についてみると、772条が上記のような蓋然性に基づき夫の子を推定しており、それを覆すには、
- 父が、子または母に対する嫡出否認の訴え(775条)を、
- 子の出生をしった時から1年以内に提起(777条)
して行うことになる。
他方、「みなす」という規定は、高度の蓋然性を基礎にしており、反証を挙げても覆えらない(例えば失踪宣告。民法31条)。
そして、このような嫡出推定規定で夫の子をとされた子を、「推定される嫡出子」といい、「推定されない嫡出子」・「表見嫡出子」、婚姻関係にない男女関係生まれた子である「非嫡出子」や、人為的に親子関係が創設された「養子」と区別される。
良いところ
嫡出推定の良いところは、一言でいうと、子の身分の早期安定が図れることである。
これを理解するために、仮に、嫡出推定を放棄した場合にどうなるか考えるとわかりやすい。
嫡出推定の規定がないと、婚姻している女性が生んだ子についても、父親が誰か決まらない状態がデフォルトになる。
- そうなると、子について、監護・教育(820条)・扶養(877条1項)する人がすぐに決まらず、子はほったらかしにされる危険がある。
- また、子は、嫡出推定がされていれば父親とされていた者が死亡したときに、その者を相続することができない(887条1項)。
これを避けようとして、
- 「原則として夫が父に…」とすれば、結局、嫡出推定と同じことになってしまう。
- また、出産した女性が決めればよいという考えもありうるが、それによると、母親が「父親であってほしい人」を父親に決めてしまい、それが常に子の利益になる保証はない。
だから、嫡出推定を完全に取っ払うことは、あまり合理的な判断とはいえなさそうだ。
そうであれば、どのような嫡出推定制度が合理的なのか探究し、冒頭で述べた3つの問題点をつぶしていくというアプローチを選択することになる。
そこで以下、まずは、3つのの問題点の詳細を説明した後、それについてどのような対策が考えられているのか、説明していく。
①婚姻前SEXを想定しないのは古い!(婚姻後200日問題)
婚姻後200日問題(かず命名)とは
すでに見た通り、嫡出推定は、婚姻後に初めてSEXをするという価値観を基礎にしており、これを基に婚姻後200日後に生まれた子を、夫の子と推定する。
ところが、今の時代、結婚式の「ヴァージンロード」は、本当に処女が歩く道を意味しない。
多くのカップルは、婚姻前にSEXを済ませ、その相性をみているだろう。
そうすると、婚姻後200日を経っていないのに、夫の子を産むということが起こりうる。
この場合に嫡出推定規定を素直に適用すると、子は夫の子として届け出ることができず、非嫡出子となって上述したような不利益を受けてしまう。
これを、婚姻後200日問題と(かずが)命名する。
「推定されない嫡出子」とすることによる手当
この問題に対しても、裁判所が救済の手を差し伸べた。
すなわち、大審院昭和15年1月23日判決は、
親子法の精神に鑑みれば、嫡出子とするのが相当
との判断を下した。
しかし、戸籍担当者は裁判官のように実質的審査権がなく、「結婚前からヨロシクやってたの?」と聞いて判断することはできない。
そこで、窓口の対応としては、婚姻成立後200日以内に生まれた子も、嫡出子として届けられば、嫡出子として扱うということになった1。
「推定されない嫡出子」の問題
このように、「婚姻後200日」について、「推定されない嫡出子」というアイディアにより、救済が図られたかにみえるが、まだ問題は残っている。
それは、「推定されない嫡出子」の身分が不安定であることである。
推定されない嫡出子は、嫡出子であるが772条の推定規定が適用されていない。
そうすると、上述した嫡出否認の訴え(775条)によらなくても、親子関係不存在確認訴え(人事訴訟法2条2号。誰でも、期間制限なく提起できる)によって、親子関係を争うことができてしまう。
これにより、たとえば、「推定されない嫡出子」と別の嫡出子が、父が死亡した際「推定されない嫡出子」を相続人から除外するために、親子関係不存在の訴えを提起するといった事態が起こりうる。
いつまでたっても、「推定されない嫡出子」の身分関係が安定しないのだ。
そこで、後述する立法による問題の抜本的な解決が求められることになった。
②離婚が迫れば他の人とヤルこともあろ~が!(離婚後300日問題)
離婚後300日問題とは
嫡出推定規定は、離婚後300日以内に生まれた子を、(前の)夫の子と推定する。
これは、民法は婚姻期間中夫婦はSEXをし続けると想定しており、それは離婚直前であっても変わらないからである。
ところが、実際は、離婚間近の夫婦がベッドを共にするということは、それほど多いものではない。
むしろ、冷え切った関係で中だしSEXするなんて考えられないというのが多数であろう。
例えば、以下の事例を考えてみて欲しい。
A男とB女は婚姻していたが、Aの暴力に耐えかねて、Bは、家を出た。
その後、Bは、離婚の事等について相談にのってもらっていたC男と親しく交際し、ともに暮らすようになった。
なお、Bは、家を出てからAと全く接触していない。
- A・Bの離婚がようやく成立した後100日後にBはCと再婚し、離婚後300日以内に、BはDを出産した。
- A・Bの離婚がようやく成立した後、300日内にBはDを出産した。なお、BとCは結婚を考えているが、まだ婚姻はしていない。
(引用元:窪田充見『家族法 民法を学ぶ【第4版】204頁。事例を少し改変した)
1、2いずれのケースも、Bは離婚後300日以内にDを出産しており、嫡出推定規定を素直に適用すれば、Dは、Aの嫡出子となる。
しかし、Bは離婚前に家を出てまったくAと接触していなかったのであり、Aの血縁上の子である可能性はない。
そうであるにもかからわず、Aの嫡出子・実子として扱うと、Dは血縁上の親であるCによる法的な保護を受ける地位が得られないことに加え、新たなB・C・Dによる生活にAの介入を招き、不都合である。
この不都合を解消するためには、Aに対してBが嫡出否認の訴えを提起するよう頼むことが考えられるが、
- Aはこれに応じる義務はないし、
- Bは暴力を振るう男になんか2度と関わり合いを持ちたくない
から、これは難しいだろう。
「表見嫡出子」(推定の及ばない子)概念による不都合の解消?
引用元:子供の身分(出生時期と各訴訟の関係)あなたの街司法書士グループ
このような不都合を解消するために、「表見嫡出子」(推定の及ばない子)という概念が考え出され、判例でも承認されている(最判昭和44年5月29日など)。
母とその夫とが、離婚の届出に先だち約2年半以前から事実上の離婚をして別居し、まつたく交渉を絶って、夫婦の実態が失われていた場合2には、
民法772条による嫡出の推定を受けないものと解すべきである。
表見嫡出子とは、772条の適用は形式的には認められるが、夫の嫡出子・実子であることが否定されるものである。
親子関係不存在確認の訴えなどを提起し、そこで表見嫡出子と認められれば、新しい夫による認知等により、新しい家庭の親子関係の創設が可能となる。1
このように、「表見嫡出子」という制度によって一定の保護が図られた。
しかし、それは完全なものではなく、「無戸籍児」という問題が新たに顕在化した。
「表見嫡出子」でも解消されない問題~無戸籍児~
すなわち、親子関係の不存在確認の訴えであっても、
- それによってこちらの所在が分かってしまうなどの恐れがあったり、
- そもそもこのような制度を知らない
という場合がある。
そういう場合に、子を元夫の嫡出子とすることを回避しようと思えば、やることは出生届を提出しないことである。
そうすると、子は戸籍を持たないまま成長をし、パスポートを取得することができずに海外への修学旅行へ参加できなかったり、住民票を作れず行政サービスを受けられなかったりという不都合が生じた。
これを解消するために、外務省や役場が一時的な救済措置をしたが、いずれも局所的な対応であり、十分な救済とはなっていなかった。1
そこで、やはり問題の抜本的な解決には立法により嫡出推定規定自体にメスをいれなければならない。
③女性にだけ再婚禁止期間があるのは、女性への差別よ!(再婚禁止期間と法の下の平等)
再婚禁止期間とは
次の規定を見てみて欲しい。
女性の再婚禁止規定はなぜ100日になったのか(1日5分で学ぶ!行政書士試験)
例えばある女性が離婚をしたとき、新しい男と結婚したければ、原則100日を経過していなければならない。
その趣旨は、100日の期間の空白期間を設けないと、前の夫(離婚後300日)と新しい夫(婚姻後200日後)の嫡出推定規定が重複して適用されてしまい、前夫、新しい夫どちらの子が決めることができなくなってしまうから、それを避けることである。
再婚禁止期間規定に違反した婚姻届けは受理されないし、何らかの事情で受理されてしまっても、取り消すことができるものとなる(743条・746条)。
この再婚禁止規定であるが、当初は100日ではなく、6か月(約180日)であった。
上述のように100日あれば推定の重複は避けれられるのであるが、なぜ当初は6か月であったのだろうか?
それは、婚姻中女性は夫とSEXするものであり、懐胎してから女性のお腹が大きくなりだすのが約5か月であることからすれば、6か月再婚禁止期間があれば、新たに夫となろうとする者は婚姻前に女性のお腹をみて、「あっこいつ前の夫の子と離婚直前くらいでSEXしたときの子を妊娠してやがるな」とわかる。
これは、新しく夫となろうとする者が、その女性と結婚するかどうか決める際の、判断材料の一つとなるだろう。
すなわち、自分の子以外は育てたくない男のための規定である。
なお、公式的な立法趣旨は、「血統の混乱を避ける」というものであるが、言ってしまえば、上記のような男性視点の目的だろう。
連子でも愛情を持ってちゃんと育てたい場合、法的保護にも気を配る必要がある。
それには、養子縁組(792条・797条・798条)をして、嫡出子としての親子関係を創設するのが一般であろう。
詳しい手続きは、このサイトがわかりやすい。
6か月の再婚禁止期間の問題と手当
このような6か月の再婚禁止期間について、ある女性がこの規定により再婚が遅れ精神的損害を被ったとして、国に対して男女不平等であること(憲法14条1項、24条2項違反)などを理由として、国家賠償を求めた事件がある(最判平成27年12月16日)。
この判決において最高裁は、
との判断を下した。
現行法は、この判決を踏まえての立法措置の結果である。
踏み込んだ司法判断により、上述のような男性視点の自分勝手な「隠れた目的」を処断することができたのであり、再婚における男女不平等という問題について、女性に一定程度の救済が図られたものとして評価できる。
もっとも、そもそも再婚禁止期間という制度自体を廃止すべきという見解も有力に主張されている。
これは後に述べる嫡出推定規定の改正案について取り入れられ、さらなる不平等解消に向け進展がみられる。
3つの問題の抜本的解決策~立法が重い腰を上げた!~
以上のように、嫡出推定制度の問題として、裁判所は色々と対応してきたのだが、どれも抜本的な解決には至らなかった。
すなわち、
- 婚姻後200日問題への「推定されない嫡出子」への対応では、第三者からの親子関係の不存在確認の訴えを許し、嫡出子の身分の安定が図れない
- 離婚後300日問題への「表見嫡出子」概念による対応では、親子関係不存在確認の訴えが機能せず、無戸籍児を生む
- そもそも女性にのみ再婚禁止期間があること自体、男女不平等なのではないか
という問題が残った。
これを一掃するために、立法によらなければならないということで、法制審議会1は令和3年2月9日、中間試案をまとめた。
その要旨は、
- 婚姻後に生まれた子について、200日以内であっても夫の子と推定する
- 離婚後300日以内に生まれた子を前の夫の子とする原則は維持するが、妻が前夫以外の男と再婚した後に出生した子は、再婚後の夫の子と推定する例外規定を設ける。
- これにより重複期間がなくなるので、再婚禁止期間を廃止する
- 嫡出否認の訴えについて、行使期間を延長しつつ、子または母にも否認権を認める
というものである。
新しい嫡出推定規定(案)
中間試案で示された新しい嫡出推定規定(案)は、以下のようなものである。
① 妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する。妻が婚姻前に懐胎した子であっても,妻が婚姻の成立した後に出産した子であるときは,同様とする。
② 婚姻の解消又は取消しの日から300日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定する。
③全各項に関わらず、婚姻の解消又は取消しの日1から300日以内に生まれた子であっても、妻が前夫以外の男性と再婚した後に出生したものは,1再婚後の夫の子と推定する
(引用元:『再婚後の出産、現夫の子に 「嫡出推定」300日規定に例外―法制審部会・中間試案』JJ.COM
婚姻後200日問題が改善されるか
新規定①によって,婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子について,嫡出推定が及ぶことになり,その地位を争うためには嫡出否認の訴えによるべきこととなる。
これにより、否認権の行使期間経過後は容易に父子関係を争うことができなくなるため,父子関係が安定し,子の利益の保護につながると考えらる。
夫婦となろうとする者同士の婚姻前の性交渉が増えていることを鑑みれば、婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は夫の子である蓋然性が高いと考えられ、合理的な推定規定であると思われる。
もっとも、現行法上,婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子について,母とその夫は,嫡出子の出生届を提出するか,嫡出でない子の出生届を提出するかを選択することができるが1、上記規定により選択できなくなってしまう。
しかし、夫がその父子関係を維持することを望まないときは,嫡出否認の訴えにより,父子関係を否定することができ、問題はない。
よって、新規定①は、婚姻前200日問題に対する解決策として合理的であり、これにより問題の解決が図られると考える。
離婚後300日問題が改善されるか
事例1(再婚していたケース)への対応
母(B)が前夫(A)以外の男性(C)と再婚していた場合について,新規定③により、DをA・C間の嫡出子として届ることができるようになるから、無戸籍者を生ずることはなくなるものと考えられる。
離婚の場合はすでに夫婦関係の実態が失われていることが多いといえ、推定される前夫との間に血縁上の父子関係がある蓋然性が高くないといえるから、このような新規定は合理的なものといえる。
もっとも、前夫の死亡による婚姻の解消の場合や,婚姻の取消しの場合も同様に考えていいか。
前夫の死亡の場合には必ずしも夫婦関係の実態が失われているとは言えないであろう。
また、婚姻の取消しの場合も,婚姻の取消しは様々な原因によって行われることからすると一律に夫婦関係の実態が失われているとは言えないといえる。
したがって、新規定③が適用されるのは、離婚の場合に限定されるべきである。
この限りで、新規定③は事例1への対処法として合理的であるといえる。
事例2(再婚していなかったケース)への対応
もっとも、子の出生時に母が再婚している場合にのみ例外を設けるのでは,無戸籍者が生ずるとされている場面の一部しか救済されないとの指摘が予想される。すなわち、BとCが婚姻していないケースである(事例2)。
かかる場合は規定②が適用され、これまで通りDはAの子と推定される結果、それを嫌がるBはDを無届けにする可能性がある。
これを救済するには,子の出生時に母が再婚しているか否かにかかわらず,婚姻の解消又は取消しの日の後に生まれた子は一律に前夫の子と推定しないこととすることも考えられる。
しかし,推定に空白期間を設けると,著しく子の利益を害することになるのは既述したとおりである。
そして、BはCと婚姻することについて特に障害がない以上、新規定③が規定された施行された場合には、Bはその適用のために早急にCと婚姻すべきであって、それを実行しなかった以上、救済のためにBにある程度の行動を課しても不合理ではない。
その「行動」とは、Bが本人として、またはDの法定代理人として、自らのイニシアティブで、Aに対して嫡出否認の訴えを提起することである。
もっとも、現行法は、嫡出否認の訴えの提起を夫に限定している(774条)。
そのため、中間試案は、嫡出否認の訴えについて
- 子または母1にも否認権を認つつ、
- 行使期間を延長を現行の「1年」から「3年又は5年」に延長
することにした。
もともと嫡出否認の訴えの提訴権者が父に限定されていたことは、子の地位の安定ではなく父の利益のために恣意的に利用されるおそれを内包するものであり、妥当ではないという指摘があった(窪田200頁)。
そのため、新規定は、子または母に嫡出否認権を付与することで、「子の地位の安定」という本来あるべき姿で同権利を使う道を開くものであり、合理的であると考える。
また、このような趣旨からは行使期間の延長も要請されるのであり、3年から5年の延長はそれが不相応に長いともいえないから、合理的であるといえる。
以上のように、嫡出否認の訴えにつき、子または母に否認権を付与し、行使期間を3年から5年延長することは、事例2に相当する事案に対応可能性を開くものであり、必要かつ相当であるから、合理的である。
結論
以上のように、新規定③は、
- 前婚が離婚により解消した場合について、
- 子の出生時に母が再婚している場合に限り
適用される例外規定とするのが合理的であり、これにより離婚後300日問題へ対処すべきである。
再婚禁止期間の女性差別が解消されるか
上記③の見直しをした場合には,離婚後300日以内に生まれた子について,母の再婚前に生まれた子は前夫の子と推定され,母の再婚後に生まれた子は再婚後の夫の子と推定されることになるため,嫡出推定の重複は生じないこととなる。
したがってかかる場合、再婚禁止期間の定めを設ける必要性が失われるから、同規定は不合理であり、廃止されるべきである。
これにより、同規定による女性差別が解消される。
あとがき
いかがだっただろうか。
- 嫡出推定規定という杓子定規のな規定も、子の身分の早期安定のために必要であること
- したがって、嫡出推定規定を不要とするのではなく、その合理性が問題とされるべきこと
- 合理性が疑問視される場面として、婚姻後200日問題、離婚後300日問題、再婚禁止期間の女性差別の問題があること
- それぞれについて裁判所により不合理との認定及び、一定程度の救済措置が講じられたこと
- その救済措置には限界があり、問題の抜本的な解決には立法が動く必要があること
- 上記立法措置は、合理的となりえるものであること
がわかってもらえたかな?
異論や問題点の指摘などがあれば、コメントいただけると嬉しい。
みんなで話し合って、法的思考力を高めていこう!
参考文献・リンク
- 「民法(親子法制)等の改正に関する中間試案」(令和3年2月9日)の取りまとめ
- 窪田充見『家族法 民法を学ぶ【第4版】
この基本書のレビューはこちら↓
コメントを残す