天丼

③「テンドン」~笑いは弱めだが、マネするだけなので比較的簡単に笑いがとれる~

定義

ある過去に発せられたあるキーワードを、現在の文脈にあてめて、「ああ、あれね」と一体感をあたえます。これが「テンドン」です。

テンドンは、あるキーワードをギャップがある文脈で繰り返すだけなので、難易度が低く、使いやすいです。

しかし、フリはそれ自体日常で用いられる言葉ですから、非人間性がそれほど高くありません。また、オチも、キーワードを卑近な文脈で真似をしただけなので、深いところでの共感を得られません

そのため、とれる笑いは大きいものではありません。

よく、ダウンタウンのまっちゃんが番組の最後でオチを付けるときに、その番組で他の芸人が言った印象的なキーワードをテンドンすることで締めています。このように、「テンドン」は使いやすいので、どうしてもオチを付けたいときに有効です(頻発して使うと「またか」とウザがられてしまいます)。

テンドンを効果的に使いたいなら、緊張感のある真面目でお堅いフレーズを、卑近な文脈でその真似をすることです。これだと、落差が激しくなるからです。

 

天丼の語源

なぜ同じギャグやボケを繰り返すことを天丼と言うのかというと、

「同じネタを並べる」という掛詞で、天丼には必ず海老二本載っているのがお約束であったというところからきていると言われています。

同じギャグやボケを並べる=ネタを並べる=海老二本並んでる天丼という感じになりますね。

語源を聞くとなんとなく江戸や庶民といった雰囲気を感じるのではないでしょうか。

引用:お笑いで使われる「天丼」とは?意味や使い方を解説!意味解説ノート

 

具体例

例1:韓国料理っぽく
韓国料理っぽく怒ってください(IPPONグランプリ)

→「チャンジャこの野郎」(ミルクボーイ駒場)。ダジャレは、テンドンの一つです。シンプル。

例2:ダンカンバカヤロー

 「大御所を叱ってください」(IPPONグランプリ)

これに対するナイツ塙の回答は‥

(ビートたけしののモノマネをしながら)「ダンカンバカヤローじゃねえよ。バカヤロー!」。

大御所すぎるビートたけしの事だともろバレで、それをディスってるから、審査員もポイントをつけられず、0ポイント。

だけど、だからこそ緊張感(非現実感)が高まります。そして、ビートたけしならこんなことで怒ったりしないという安心感もある。ギリギリつく感じが絶妙。

このような絶妙な踏み込み具合が功を奏し、テンドンにしては一体感へのギャップが大きくなっています。さすが漫才のプロ。おもしろいですよね。

そして、ここでこのお題が終わったとしてもオチますよね。

大御所で締めには最適だし、「やりすぎはダメ」って教訓を残して締めくくれてます。

点数にはならないけど、番組的にはかなりのファインプレーです。

例3:Perfectなのは…

あっちゃんね!というアハ体験です。

例4:人間失格

こっちは、太宰の「人間失格」のフレーズもじりですね。

例5:抱きたい

引用:後掲『ウケる技術』

この男性への好意が伝わり、ほっこりしますね。

例6 セールスの足掛かりをつかむ

仕事上、のるかそるかの場面はいろいろありますが、とりわけ重要なのは「お願い事」をするときでしょう。

誰かに何かをやってほしくて、相手が応じてくれるかどうかは、自分の説得力にかかっているという状況です。

こういうときに、ユーモアが説得力をぐっとたかめるカギとなる場合があるのです。

大人気の補正下着メーカー「スパンクス」社の創業者県CEOサラ・ブレイクリーの場合が、まさにそうだった。

スパンクスの立ち上げ当初、ブレイクリーは有名デパート等の大規模小売業者で自社製品を扱ってもらうという、重大な課題に直面していた。

それは生易しいことではなかったと、彼女も認めている。

スパンクスは競争の激しい市場に参入してきたばかりの、無名ブランドの新製品だったからだ。しかもこまったことに、ブランド名のスペルが間違いやすく、ネットで検索するとポルノサイトにつながってしまうのだった。

資金も限られ、コネもほとんどない彼女は、ついに売り込みの電話をかけ始めた。リストの片っ端から当たっていく。

ニーマン・マーカス、ノードストローム、サックス・フィフス・アベニュー、ブルーミングデールズ、QVC。だが、折り返しの電話をくれた相手はなかった。

彼女はバイヤーと電話で5分話すことさえできれば、自社製品を売り込めると確信していた。だがそれは、口でいうほどたやすいことではない。

一瞬のひらめきで、彼女はハイヒールを何足か購入した。そして、片方の靴と手書きのメッセージを入れた箱をいくつも郵便局へもっていき、各店のバイヤーあてに送りつけた。カードにはこう記されていた。

足がかりをつかみたいんです。数分でいいので、お時間をいただけませんか?」

メッセージの下に電話番号を添えて。

これが功を奏した。ニーマン・マーカスのバイヤーは彼女の作成を非常に面白がって、電話をかけてくれたのだ。その後、相談が見事にまとまったおかげで箔がつき、他の大規模小売業者とも関係を構築するのに役立った。それから一年もたたないうちに、ブレイクリーはリストにあったすべての店との取引を成立させただけではなく、さらに多くの取引先を獲得していた。

引用:『ユーモアは最強の武器である』 189頁以下

例7:ステイホーム、ソーシャルディスタンスのように、熟年離婚を言い換えてください
【名回答10選】バカリズム&佐久間Pが解説する大喜利名回答10選!「バカリズムの歴代大喜利をもう一度味わおう!」

「爺ショック」

おじいちゃんがショックであることと、誰もが知っているカシオの名作腕時計、「GーSHOCK」をかけています。

「うまい」ってなりますね。

例7:対義語

長年選挙を取材してきたフリーランス・ライターの畠山理仁さんが、NHKラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」(2023年7月28日放送)で言った名言があります。

彼は、「無頼系独立候補者」と呼ばれる大型政党の支援に頼らず、自分の信念に基づいて、始発から終電まで駅に立って人の話をきき、街のごみを拾う候補者にスポットライトを当て、取材し続けました。

「票を捨てる有権者より、ごみを拾う候補者。」

彼の言葉です。

これはキーワード自体は違いますが、対義語の関係になっており、共感できる一つのメッセージを伝えています。

この最後の「ごみを拾う候補者」と聞いて思考が進んだときに、「ああ、普通の有権者は何も考えず大型政党に投票したり、棄権したりして、票を捨ててることを皮肉っているんだな」と一体感が得られるのです。

テンドンとは、要は、キーワードを使って何かを共有することであり、それは言葉自体やその響きだけでなく、本例のような「メッセージ」でもいいのです。

例8:男性ブランコ
男性ブランコ 漫才 「M 1ファイナリストの癒し系」「お笑い王者」 【漫才LOVE 2023】
  • ハラハラはらみ
  • トントロンボーン
  • ナムナムナムル

その前に「何やってるんだこの店員は?」という非現実的緊張感を作っていることに着目してください。

例9:中華料理漫画でありそうなセリフとは?

https://youtu.be/p2SWiVva0yU?t=162

R藤本さんの「ニック・マン・アタック!」

ベジータの「ビックバン・アタック」のもじりです。

肉まんという身近な食べ物の親近感が、ベジータのお堅さをユーモラスにしています。

例10:共同作業(カブセ)

↑と同じ動画ですが、14分46秒からの、「柴sベスト」発表後の流れに着目してください。

https://youtu.be/p2SWiVva0yU?t=880

ミサイルマン岩部さんの「うどん屋のあいつとラーメン屋のあいと、入れ替わってる!?」からの、「麺麺麺世」からの、サツマカワRPGさんの「ラードWINPSの!?」。

これが、前の人の受けたフレーズにキーワードを関連させて繋げる、「カブセ」という技です。

みんなでやるお笑いは、一人では出てこないアイデアから気づきを得るという大きなメリットがあります。

そして、回答する場面だけがお笑いではありません。

目的は、楽しむこと、楽しますこと。それが、回答より大きな「番組」を成り立たせます。

あなたと出会う全ての相手は、ライバルであり、かつ仲間です。

最後の、フルーツポンチ村上さんの「君のメンマ…」は少し無理がありましたが、食いつこうという意識の現れであり、「あるある」の失敗談として機能し、オチになっています。

このような集合意識が、一体感を作り出すのです。

落語とは…「業の肯定」?「イリュージョン」?
立川談志「代書屋」

喉頭癌により2011年11月21日に亡くなった立川談志さん。死去から約10年が経った今も伝説の落語家として語りつがれています。

彼が、「伝説」といわれるゆえんは、どこにあるのでしょうか?

落語界は師弟関係で成り立っており、多くの落語家は、師匠から伝えられた型を守る事に専念する事でしょう。

ですが談志さんは古典落語に自分の意見や哲学を盛り込むというオリジナルの型を開発しています。

「お客さんは噺ではなく談志を聴きに来る」

そういわれるほどでした。

参考:立川談志の伝説と逸話。天才の理由とは。師匠から破門&ヘアバンドの意味 アスネタ !

また、彼は、世の中の寄席離れの流れを敏感に察知し、「笑点」の前身番組である「金曜夜席」を立ち上げ、テレビを通じて、落語の世界を広く広めました。

落語界の伝説の革命児であり、大きな貢献者ですね。

そして、立川談志といえば「落語とは、人間の業の肯定」論が有名ですね。

「業の肯定」…

人間の弱さに直面せよ、ということでしょうか。

しかし、晩年はこれをさらに進め、「落語=イリュージョン論」も唱えています。

これについては、『立川談志師匠の「落語とは、人間の業の肯定」論について ポンコツ山のタヌキだより』が詳しく説明してくれています。以下引用します。

「でも、落語が捉えるのは〈業の肯定〉だけではないんです。人間が本来持っている〈イリュージョン〉というものに気がついたんです。

つまりフロイトの謂う『エス』ですよね、言葉で説明できない、形をとらない、ワケのわからないものが人間の奥底にあって、これを表に出すと社会が成り立たないから、〈常識〉というフィクションを拵えてどうにか過ごしている。落語が人間を描くものである以上、そういう人間の不完全さまで踏み込んで演じるべきではないか、と思うようになった。ただ、不完全さを芸として出す、というのは実に難しいんですが……。」

 この「落語はイリュージョンである」論なんですが、DVD「立川談志 古典落語特選」第4集に入っている「松曳き」(2002年2月15日になかのZEROで収録)という噺では、まくらで「良い映画」のことを結構長くしゃべった後、「イリュージョン落語」と言ってから、赤井御門之守というお殿さまとこの殿さまに仕える田中三太夫の支離滅裂な言葉のやり取りが開始されています。

 三太夫が「どうやら梅雨も明けたようでございますな、殿」と言うと、殿さまは「おおそうかつゆか。今朝の膳部の汁(つゆ)は冷たかったな」とボケ、三太夫が「そのつゆのことではございません、梅雨のことで」とツッコミますと、「分かっておる、洒落だ」と返し、「草双紙の面白いものはないか。枕絵のいいのがあったら竹書房に電話して…」と殿さまが言い出しますと、三太夫が即座に「論語などはいかがで」と提案しますので、また殿さまが「論語!! 論語道断だな。火の玉を喰うってのは熱いな」とボケてみせます。それに対して三太夫が「子曰く(し、のたまわく)でございます」とまたツッコミますので、殿さまもまた「分かっておる、洒落だ」と返しています。

 さらに殿さまが「庭の松が繁って月見の邪魔になる。左に移せ」と命じますと、三太夫が「松を曳くのはたいそう難しうございます。植木屋が入っておりますので、植木屋に訊いて参ります。下世話に餅は餅屋と申しますから」と返事をしまと、殿さまはまたまた「餅屋が松を曳くのか」とボケるといった調子です。まさにワケの分からない会話が殿さまと三太夫の間で繰り返されることによって生みだされる可笑しさを作り出そうとする「イリュージョン落語」の試みですね。

   この噺の下げは、三太夫が自分宛てに国表から送られた書状に「殿様御姉上君御死去仕(つかまつ)り云々とあるその「殿様」の意味を、赤井御門之守のここと勘違いし、殿さまに「姉上様が御死去遊ばしました」と伝えてしまい、その間違いを後で伝えられた殿さまが怒り出し、三太夫に切腹を命じますが、死を覚悟して引き下がろうとする三太夫を急に呼び止め、「よく考えたら余には姉はいなかった」という、まあ実にクダラナイものなんですが、だからまた最高にオカシイものなんです。本来は殿さまと三太夫という慌て者としては優劣つけ難い両者の勘違いごっこを笑いの対象にした古典落語ですが、これを談志師匠は支離滅裂な会話が繰り広げられるイリュージョン落語に仕立て直したのですね。    

 なお、この「松曳き」という噺の下げの部分は、桂枝雀師匠の「緊張の緩和」論が見事に適合するような気がします。この噺の聴衆は「切腹」という言葉を聞いてグーッと緊張し、「よく考えたら余には姉はいなかった」でパーッと緩和し、そこでドッと笑いが起きるんですね。

 因みに、談志師匠のイリュージョン落語については、お弟子さんである立川志らく師匠もその著書『立川流鎖国論』で、「それまで談志は『落語は人間の業の肯定』だと言っていた。それが六十代のなかばごろから『落語はイリュージョンである』と言いだした。/落語における会話は、なんだかよくわからないが強烈におもしろいもの。それは非日常であり、まるでイリュージョンだ、と言ったのだ」と書き、「無精床」という噺で、現実の日常世界でお客さんと床屋さんとが交わすであろう会話なんかクソッ喰らえのはちゃめちゃイリュージョン会話を展開させています。

この話のお殿様と田中三太夫の掛け合いは、「大ウソ」と「テンドン」(ダジャレ)の複合技である、「言い間違い」という技です。

キーワードをつなげて、めちゃめちゃなことをいっていますね。

だけど、三太夫が切腹を免れたラストは、なんだかほっこりしてしまいます。

殿様は、本当にただの「バカ殿」だったのでしょうか。

なんだか、深い教養と、三太夫に対するが感じられませんか?

「お客さんは噺ではなく談志を聴きに来る」

人間の業も、イリュージョンも、もしかしたら、高いインテリジェンス(知性)がなせる技なのかもしれまんせん。

そして、落語の寄席とは、堅苦しいルールに縛られた日常生活を離れ、弱くて脆い本当の自分を出せる、イリュージョンのような空間だったのではないでしょうか。

立川談志さんの人柄や考え方をさらに知りたい方は、『立川談志の名言30選|心に響く言葉LIVE THE WAY』を覗いてみて下さい。

以下、そこから少しだけ引用してご紹介します。

(4)(「未来とは何か?」について)修正できると思っている過去。

(6) 上品=欲望にたいして動作がスローモーな奴。

(7) 酒は人間を悪くするものではなく、人間がいかにダメなものかを教えてくれるものである。

(19) 落語は忠臣蔵の(討入りした)四十七士じゃなく、逃げちゃった残りの赤穂藩士二百五十三人が、どう生きるかを描くもんだ。

創り方

「うまいっ!」という感情にさせることを意識して下さい。

https://youtu.be/PufNdBC7kGE?t=360

↑動画のソフィー上田さんの写真で一言の回答「電波も死んでいる」に対する、「スゴイじゃん」という柴さんのリアクションがこれです。

今の状況と昔の状況を、共通するキーワードで繋げることで、この感情を創り出します。

「共通するキーワードは何か?」という質問で、頭を回転させてください。

↑の動画の上田さんの回答だと、

  • 今の状況…幽霊が携帯電話を耳に当てている→話している様子はない(上田さんの解釈)→電波は入っていない
  • 昔の状況…人間だった人が死んだ

両者に共通するキーワードは、「死んでいる」です。

そのすぐ後のやす子さんのカブセ、「もう、全然彼氏こないんだけど。来る?きっと来る?」についても考えてみましょう。

  • 今の状況…幽霊が携帯電話を耳に当てている→彼氏に何かを言って、呼び出している(やす子さんの解釈)
  • 昔の状況…貞子という幽霊が出るホラー映画『リング』のエンディングテーマの歌詞「来る~きっと来る~」

両者に共通するキーワードは、「来る?きっと来る?」です。

天丼はカブセによって、人をまたいで、どんどんつなげていって笑いを増幅できることが強みです。

誰かが言った面白いことは覚えておいて、超元気玉のように、でっかくしてください。