おっす、かずだ!
本問の論点は、
・設問1…債権者の受領遅滞による危険の移転(債務者からの代金請求の可否)
・設問2…物権的請求の相手方と所有権留保
・設問3…特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)
だ!
さっそく始めよ!
目次
問題等
実際に使った問題用紙・答案構成用紙から見る改善点
問題用紙~問題文の把握が不正確~
時系列の把握を怠った
時系列を正確に把握していなかったため、設問1の問題文で意味が分からないところが生じてしまった。
問題文5で、「Cは、Bの指示に従って、強力な倉庫鍵も利用し、二重に施錠して帰宅した」と言っているのに、8で「簡易な錠のみで施錠して乙倉庫を離れた」としていて、矛盾しているじゃん!と混乱した。
だが、試験後よく読んでみると、前者は平成29年9月21日の夜、後者の事情は翌22日午前7時の事情で、矛盾していない。
時系列で事実を整理するのを怠ったからこうなる。
参照条文見落とし
設問2の参照条文として、道路運送車両法が、4頁で挙げられている。
しかし、俺はこれを完全に見失っていた。
というのも、俺はいっぺんにすべての設問の答案構成をして、いっぺんにすべての設問の答案を書くというスタイルではなく、各設問ごとに検討し答案まで書いていくことにしていたから、3頁最後の設問2の問題を見てすぐ書き出してしまった。
このスタイルは、情報を絞りこみ頭を混乱させないという意味ではいいが、このように見落としを生じる危険があることがわかった。
答案構成用紙~不十分な答案構成~
人物関係図を書いただけで、ほとんど答案構成できていない。
条文もあまり挙げられていない。
時間がなく、焦って、ほとんど見切り出発のような形で書いてしまっていたのだろう。
考えながら書くという極めて非効率なことをしてしまっていた。
考えることを書くことを分けるというのは、多くの合格者が言っていることだから、意識しよう。
原因と対策
問題文をを正確に把握する必要があるが、それにあたり答案構成用紙に詳細に時系列と人物関係図を書き写すのだと時間が足りない。
そこで、答案構成用紙は捨てる。
問題文を答案構成用紙として、余白に時系列や人物関係図を書き込み、さらに答案構成もする。
その具体的なやり方は、問題演習を通じて今後詰めていく。
再現答案
第1.設問1
1.結論
Bの本件売買契約に基づく代金支払請求は、債権者主義(534条)が適用されないことから、認められない。
しかし、これは他の答案では見られず、あまり目立つことをすると余計な先入観を抱かせるから、やめよう。
形式ではなく、中身を見てくれていると信じたいが、試験委員をそこまで信じられない。
2.理由
(1) 本件売買契約におけるAのBに対する松茸の引渡請求権は、松茸の盗難により履行不能となり、消滅している。
そうすると、反対給付請求権たるBのAに対する代金支払請求権も共に消滅することが双務契約の牽連性に合致する。
(2) しかし、534条は債権者主義を定め、債権者が上記のような危険を負担する旨規定している。
同条が適用されれば、松茸引渡請求権の債権者たるAが危険を負担し、BのAに対する代金支払請求は認められる。
そこで、534条適用の可否が問題となる。
(3) まず、本件売買契約は、松茸5キログラムという不特定物を目的物とするものであり、同条2項・401条2項の特定がされたか検討する。Bが「必要な行為を完了」したといえるか。
(4) 松茸の引渡しはB所有の乙倉庫にて行われると約定されており、Bにとってこれは取立債務である。
したがって、「必要な行為を完了」したといえるためには、目的物の分離、準備、通知がされることを要する。
(5) 本件についてみと、Bは、松茸を箱詰めしており、他の松茸と分離されている。
また、引渡準備を整えて、Aに対して電話により通知をしている。したがって、「必要な行為を完了」したといえ、特定は認められる。
(6) 次に、債権者主義の適用には、「債務者の責めに帰すことができない事由」によって目的物が滅失したことが必要である。
この「債務者」には、信義則上、債務者が債務の履行のために使用する者も含まれる。
(7) 本件では、BはCを用いて松茸の収穫と倉庫管理を行わせており、CはBの履行補助者である。
そして、CはBからの「普段よりしっかり施錠するように」との指示を忘れていて、それにより松茸が盗難に遭っているから、C・Bの帰責性があるとも考えられる。
(8) しかし、Bは簡易とはいえ施錠しており、普段通りの職務は確実に遂行していて、帰責事由とまでは言えない。
また、Aは遅れて取り立てに来ていて、Aが約束の引渡時刻を守っていれば松茸は盗難されていなかったのであるから、それ以降の事由を帰責事由として考慮することはそもそも許されるべきでない。
したがって、Cの上記行為はC・Bの「責めに帰すべき事由」とはいえない。
(9) 以上から、債権者主義の条文上の要件は充足する。したがって、BのAに対する代金請求は認められるとも考えられる。
(10) しかし、債権者主義の規定は、形式的にその適用を認めれると、目的物を占有せず、何ら影響力を及ぼせない債権者に危険負担を認めることになり、妥当でない。
債権者主義が適用されるには、上記要件の他、債権者が目的物の占有を開始したことを要求するべきである。
(11) 本件についてみると、Aは松茸を取り立てに行く前に盗難がされており、Aは占有していない。
(12) よって、債権者主義の適用はなく、BのAに対する代金請求は認められない。
第2.設問2
1.小問(1)
Eの請求は、丙土地占有権に基づく占有保持の訴えである(198条)。
これに対するDの㋐の反論は、占有保持の訴えの被告は現実に占有を妨害している者であり、それはAである、というものである。
すなわち、DとAは所有権留保売買契約をしており、甲トラックの所有権はDにあるものの、DはAに甲トラックを引渡し占有はAにある(契約④)。
そうであるから、被告はAであり、Dではない。したがって、㋐の反論は認められる。
2.小問(2)
もっとも、Dとしては、Dが現実に占有を妨害している者でないとしても、甲トラックの登記名義を引き続きDが有する以上、収去義務を否定することができないとするのが判例である、と主張することが考えられる。
これに対して、Eは、上記判例の射程は本件に及ばない、と反論する。
上記判例が登記名義人に収去義務を認めたのは、①占有訴権の原告は、現実に占有を妨害する者を探求することが困難であることが多いこと、②また、実体を反映する真実の登記を行うことは登記名義人にとってさほど困難でなく、登記名義人に収去義務を認めることが不動産取引における社会通念にも合致するからである。
確かに、本件では、Aからは毎月4万円の振り込みがされるだけで、DとAは互いに連絡をすることがなかった。Aは転居先を知らせることなく、借家を引き払って帰郷しており、Aの居所を把握することは困難である(①)
しかし、②について、所有権留保売買契約は、所有権を売主に留めて占有だけ買主に引き渡すことを内容とする契約であって、したがって、売主に登記名義が引き続きある状態は、実体を反映するものであり、上記判例と基礎となる事情を異にする。
また、所有権留保売買契約は社会において一般的に行われているものであり、登記名義人に収去義務を認めることが不動産取引における社会通念にも合致することにならない。
したがって、上記判例の射程は本件におよばず、Eの上記請求は認められない。
第3.設問3
1.結論
Fは、Gに対して、不当利得返還請求(703条)により、150万円の支払いを請求することができる。
2.理由
本件遺言のうち、相続人たるFに1200万円、Gに600万円を「相続させる」旨の遺言は、遺産分割方法の指定であると解される(908条)。
他方、Hは排除されて相続人ではないから(892条)、Hに200万円を与える旨の遺言は、特定遺贈である(964条本文)。
そして、CがBに対して負っていた300万円の金銭債務は、分割債務として、相続人F・Gに遺産分割を経ることなく承継される。そして、その負担割合は、均等であると解され、150万円ずつである。
そして、FはBに300万円を支払っていることから、150万円について、Bは法律上の原因なく利得し、Fは同額の損失を被っている。
よって、Fは、Gに対して、不当利得返還請求(703条)により、150万円の支払いを請求することができる。
以上
成績:D(2001位から2500位)
書き直し答案(改正考慮)
1(設問1)
(1)Bの売買契約に基づく代金支払い請求に対して、Aは536条1項の履行不能を理由とする反対債務の履行拒絶の抗弁により、代金の支払いを拒んでいる。
すなわち、同条の主張が成立要件は①引渡債務の履行不能、②自己の反対債務につき拒絶の意思表示が認められる必要があるところ、
本件では、本件売買の目的物たる松茸は盗難により全部が滅失しており、①を満たす。
また、②Aは代金を支払わないと述べており、これを満たす。
したがって、Aの上記主張は認められる。
これに対して、債務者は債権者の帰責事由・債務者の履行完了による危険の移転を主張する(例外としての債権者の危険負担)。すなわち、
536条1項の趣旨は、双務契約において一方の債務が履行不能であるときに、反対債務ついて債権者に履行拒絶権を与えるのが、履行面での均衡を保障するうえで適切であるとの趣旨である。
双務契約における原則的な取り扱いだな(原則としての債務者の危険負担)。
例外としての債権者の危険負担は、
- 536条2項本文の債権者の帰責事由により危険が移転した場合1、
- または、以下述べる売買の特則である567条1項の引渡しまたは受領遅滞により危険が移転した場合
である。
なお、536条1項は、「当事者双方の責めに帰することができない事由」による履行不能と規定しているが、これは要件事実的には無用な文言である。
なぜなら、債権者の帰責性は同条2項において債務者が主張立証すべき事柄であるし、また債務者の帰責性は、上記413条の2第2項または567条の債権者の受領遅滞における危険の移転において、債務者が「自己に帰責事由がないこと」として主張立証すべき事柄だからである。
(2) これに対し、、Bは、567条1後段・2項により、債権者に危険が移転しているから、Aの上記主張は認められないと反論することが考えられる。
そこで、以下この主張が認められるか検討する。
このBの主張が認められるには、
①契約の目的物が「特定」していること(567条1項かっこ書き・401条2項)
②買主(債権者)に受領遅滞が生じていること(567条2項・413条1項)
③その受領遅滞が履行不能前に生じたこと(「その履行の提供があったとき以後に…滅失」)
④売主(債務者)の責めに帰すことができない履行不能であること2
が必要である。
そこで、まず、①本件タールに特定が生じているか検討する。
ア ①特定が生じているか
AのBに対する松茸引渡債権は、一定の種類に属する物の一定量の引渡しを目的とするものであり、種類債権である。
種類債権は、「債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了」したときに特定する(401条2項)。
本件売買契約は、債権者たるAが債務者B所有の乙倉庫に目的物たる松茸を引取りに赴く取立債務であるところ、Bがいかなる行為をしたときに「必要な行為を完了」したといえ、特定が生じるのかが問題となる。
この点につき、「必要な行為を完了」とは、自らができることを全てした状態を意味するところ、現行民法は、契約の内容及び社会通念に基づく契約規範確定という姿勢を反映するものであるから、この観点から、取立債務における債務者が「自らができることを全てしたといえるか」を判断すべきである。
まず、本件契約の内容についてみると、松茸と代金は平成29年9月21日の夜に、B所有の乙倉庫において引き換え給付をする旨の合意があり、
社会通念上、Bのなすべき行為としては、、履行期までに乙倉庫に松茸を搬入してすぐに履行できるよう分離し、準備しておくことが契約規範になっているといえる。
そして、Bは履行期の21日の夜までに、松茸を乙倉庫に搬入し、目的物たる松茸5㎏を他から分離したうえ、箱詰し履行の準備を整えていたので、Bの当該行為は契約の内容・社会通念に照らし何ら問題はなく、自らできることをすべてしたといえる。
したがって、Bは「必要な行為を完了した」といえ、特定が認められる。
イ ②受領遅滞について
受領遅滞(567条2項・413条)の要件は、1⃣履行(弁済)の提供があること(493条)、2⃣受領拒絶または受領不能があること、である。
1⃣ついて検討する。
履行の提供は、「債務の本旨にしたがって現実に」するのが原則である(493条本文)。
もっとも、同条は例外として、弁済の準備と通知による受領の催告で足りる旨規定している(同条但書。口頭の提供)。
本件では、Bは、本件売買契約の約定に合う松茸について、乙倉庫への搬入及目的物となる5㎏の箱詰めを終え、準備をしていた。
そして、Aに準備が整った旨電話し受領の催告をしたのであり、これが満たされる。
そして、2⃣受領拒絶または受領不能について、Aはトラックを調達できず、履行期に乙倉庫に赴くことができに受領できなかったのであり、受領不能が認められる。
よって、②受領遅滞は認められる。
ウ ③受領遅滞が履行不能前に生じたこと
Aによる受領遅滞の後に、松茸の盗難による履行不能が起きているから、これは認められる。
エ ④債務者の責めに帰すことができない履行不能であること
受領遅滞の効果として、特定による400条の善管注意義務から、413条1項に基づく「自己の財産に対するものと同一の注意」への注意義務の軽減がある。
そこで、Bにおいて、上記義務違反がないか検討する。
この点について、松茸は、CがBからの指示を忘れて普段通りの簡易な鍵で施錠したことにより、何者かの侵入を許し盗難に遭っており、Cについて帰責事由を問題にする余地がある。
Cは、債務者Bが松茸の収穫のために雇っている者であり、Bの本件売買契約に基づく松茸引渡債務の履行のために使用する者と認められるから、履行補助者であるところ、まず前提として、このような履行補助者の帰責事由が債務者の帰責事由と認められるか問題となる。
目的物引渡債務のような結果債務についての履行補助者の帰責事由は、契約・社会通念に照らし、債務者の帰責事由と評価できるか否か検討すべきである(415条1項但書参照)。
なお、手段債務については、「当該第三者の行為が債務の履行過程に組み込まれ、債務者の負担する行為の具体的内容になっていたか」で決する。
本件では、Bは上記のように本件売買契約の目的物たる松茸をCを通じて取得し、またその保管も任せているのであるから、Cは本件売買契約において、Bの手足となり一体として松茸引渡債務を履行する者であるといえ、社会通念上、Cの上記行為について帰責事由が認められる場合、Bの帰責事由も認められると解するべきである。
そして、Cの行為についてみると、Cは普段通りの簡易な鍵をかけていたのであり、自己の財産に対する注意を引き続きしていたうえでの盗難であるといえ、帰責事由は認められない。
したがって、C・Bに413条の注意義務の違反は認められないから、債務者の責めに帰すことができない履行不能といえる。
オ 結論
以上より、567条2項・1項後段の要件が満たされ、Bのした債権者への危険移転の主張が認められるから、Aの履行不能を理由とする反対債務の履行拒絶の抗弁は認められない。
よって、Bの代金支払請求は認められる。
2(設問2)
(1) ㋐のDの発言は、正当であると認められる。
なぜなら、所有権留保売買契約において代金債務の債務不履行が生じるまでは、売主に留保される所有権は、担保権の性質を有するものにすぎず、占有使用権限は買主に帰属している。
そうであれば、売主たるDの立場は抵当権者と変わりなく、抵当権者は抵当権目的物による妨害排除請求の相手方とならないのと同様に解すべきであるからである。
(2) Eの請求は、丙土地所有権に基づく物権的妨害排除請求権としての甲トラック撤去請求であるところ、物権的請求権は、物の支配を現に回復するためのものであるから、その相手方は、原則として、現在の妨害者たる占有使用権原を有する所有者である。
そこで、Dがした、「道路運送車両法5条に基づく自動車の登記が自己にあるものの、占有使用権原を有しないから、物権的請求の相手方とはならない」旨の、㋑の発言は正当であるとも考えられる。
しかし、判例によると、他人の土地の上にある建物の所有権を取得した者は、自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には、建物を他に譲渡したとしても、その登記名義を有する限り、土地所有者に対して譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物の収去義務を免れることはできないとされる。
そこで、この判例の射程が本件にも及ぶかが問題となる。
上記判例が例外的に登記名義人を物権的請求の相手方をした趣旨は、➀建物所有による不法占有の場合には、その妨害は敷地面積全体に固定的・継続的に及び、不利益が大きいのに対して、
使用占有権限が誰に帰属するかを建物自体やその利用状況から判断することは容易ではないこと、
②不動産物権変動においてその当事者には、その物権変動に従った登記手続きをとることが要請されており、これを怠ったときは、不利益を負担してもやむを得ない、という点にある。
そうであれば、➀②が認められる場合には、本件におけるDがEの請求の相手方になることが認められるといえるから、以下検討する。
➀について、たしかに、トラックも建物と同じく、その占有使用権原が誰にあるのか、車両自体から判断することは容易ではない。
しかし、丙土地は山林であり、宅地より広大であると考えられ、トラックも移動可能な動産であるから、占有妨害による不利益が大きいとはいえない。
また、②について、所有権留保における登記は純粋な物権変動の登記と異なり、被担保債権の弁済まで登記を売主名義のままにしておくことが当然の前提であり、DにAに対して自動車の登記を移転しなかったことの帰責事由を認めることはできない。
したがって、本件では➀②を認めることができず、上記判例の射程は及ばない。
よって、Eの請求は認められない。
まあ、試験だからさ、射程の理解を示す必要がある。勘弁してくれ。
3(設問3)
(1) 記載②③について
遺言書は、そこで表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきである。
本件遺言においては、②相続人たるFに1200万円、③Gに600万円を「相続させる」旨の遺言がされている。
このような特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は、これを特定遺贈(964条)と解するべきでなく、遺産分割方法の指定(908条・1014条2項参照)と解するべきである。
なぜなら、これを遺贈と解すると、相続放棄(939)をした受遺者は、相続債務を一切負担せずに遺言の対象財産を取得することができるが、これは他の共同相続人に対し不公平であり、遺言者の意思解釈として不合理であるからである。
このような遺産分割方法の指定がなされることにより、他の共同相続人は遺言に拘束され、これと異なる遺産分割協議・審判をなしえないから、特段の事情がない限り、なんらの行為を要せずして、被相続人の死亡の時に、直ちに当該遺産が当該相続人に承継されることになる。
本件についてみると、②によりFは1200万円、③によりGは600万円を、Cの死亡時に承継されたことになる。
このような内容の遺言を「特定財産承継遺言」という。
相続法改正により新たに名前が与えられた(1014条2項)。
なお、Fは自己の法定相続分を超える財産を取得しているから、その超える部分について登記をしなければ、第三者に対抗することができない(899条の2第1項)。
この論点、問われそうだな!
(2) 記載④について
「排除の意思を変えるものではない」との文言から、これはHの廃除を取り消す(894条2項・893条)ものではない。
そして、廃除によりHは相続人でなくなっているから、「200万円の定期金のみ与える」との記載は、上記遺産分割方法の指定ではなく、特定遺贈である。
(3) 300万円の借入金債務について
では、CがBに対して負う300万円の借入金債務はどうなるか。
この点について、②③④の記載は、あくまで個別の積極財産の処分についての記載であって、債務の承継割合まで指定したと解することはできない。
そして、金銭債務については、これを不可分債務にすると共同相続人すべてに固有財産を含めて引き当てになり(430・436条)、相続という偶然の事情を通じて債権者が有利な地位を得ることになり妥当でないから、分割債務となると解すべきである。
この本楽しくてわかりやすくていいね!
本件では、Hは廃除により相続人ではなくなっており、債務を承継しない。
他方、被相続人Cの子であるFとGは相続人であり(887条1項)、法定相続分に従い(900条4号本文)、各150万円ずつ相続することになる。
(4) FのGに対する請求
そうすると、Fの300万円のCへの弁済(150万円について第三者弁済となる。474条)により、Gは150万円を法律上の原因なく利得しており、これによりFは同額の損害を被っているから、FはGに対して、不当利得に基づく150万円を請求することができる(703条)。
以上
参考文献
- 松井宏興「担保物権法」
- 窪田充美 「家族法 民法を学ぶ」
- 百選
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