司法試験平成29年過去問検討 民法(改正対応)

オス!ウエノだ!

本問は、賃借権の重要論点を網羅的に問うものだな!

早速はじめよ!

論点

  • 設問1…賃借権の時効取得
  • 設問2…借地上の建物の譲渡と信頼関係破壊の法理
  • 設問3…「売買は賃貸借を破る」原則と修正(借地借家法・権利濫用等)

問題等

答案(改正対応)

第1〔設問1〕

1.Cの反論  

ウエノ
ウエノ
「Cは‥どのような反論をすることが考えられるか」と問うているので、見出しと問いを対応させて、採点者が採点しやすいようにする。
採点表をイメージするのだ!
すると、問いごとに点が振られてる採点表がみえてきて、無駄な記載が無くなる。

Aの所有権に基づく物権的返還請求権としての丙建物収去甲土地明渡請求に対して、Cは、本件土地の賃借権の短期取得時効(163条・162条2項)を主張し、反論する。

2. 根拠

 163条は、「所有権以外の財産権」を取得時効の対象財産と認める。

時効の趣旨である永続した事実関係の尊重から、「所有権以外の財産権」といえるためには、一定程度継続した事実状態を観念しうる財産権である必要がある。

 そして、賃借権は債権とはいえ、賃貸人と賃借人との間には継続的な人的関係があり、また借地借家法による各種保護により長期間の占有が保障されているから、目的物の継続的利用関係という事実状態を観念でき、上記「所有権以外の財産権」にあたる。

3. 要件

 上記のように、賃借権も取得時効の対象となるものの、時効取得により不利益を受ける者の時効の完成猶予の機会を保障する必要がある。

ウエノ
ウエノ
時効による不利益を正当化するには、「権利の上に眠る者を保護しない」という許容性を満たす必要がある。

そこで、賃借権の時効取得が認められるためには、①「行使」(163条)につき、他人の土地の継続的な用益という外形的事実が必要であり、②また「自己のためにする意思があること」(163条)につき、その用益が賃借の意思に基づくものと客観的に認められることが必要と解する1

ウエノ
ウエノ
判例の文言を条文に引き付けて解釈する。
判例がこれをしてなくとも、条文を解釈するという姿勢を示すことが大切である(そんな判例を反面教師にしよう)。

そのほか、 占有開始時に平穏・公然・善意無過失であること、10年間継続して物を占有したことも要件となるが、平穏・公然・善意は186条1項により推定されるので、Cは、③10年間物の占有を継続し、占有開始時に無過失であったことを主張すればよい。

ウエノ
ウエノ
なお、ここでいう善意とは、占有者が自己に財産権があると信ずることをいう。

4. 反論が認められるか

①について、たしかに、平成16年10月1日に、CはAから本件土地の引渡しを受けているものの、本件土地は全く利用されておらず、この時点では土地の継続的な用益という外形的事実は認められないとも考えられる。

しかし、本件土地の周囲にめぐらされた柵は立てられたままであったのであり、これにより外部に対して占有範囲を公示する機能を果たしており、権利者に時効完成猶予の機会を付与するに足りるものといえる。

したがって、Cは本件土地の継続的な用益を開始したのは、平成16年10月1日とすべきである。

そして、それ以降請負人の工事や丙建物の所有を通じて、Cは本件土地を継続的に用益していたと外形的に認められる。

ウエノ
ウエノ
これに対して、工事が開始した平成17年6月1日とする評価もありえる(この場合、時効は完成していない)。

②について、平成16年10月1日以降、CはAに賃料を振り込んでおり、賃貸借契約に基づく賃料の継続的支払が認められ、賃借の意思に基づくと客観的に評価できる。

③10年間物の占有を継続し、占有開始時に(善意)無過失であったことについて、CはAと共に本件土地を実地調査し、柵があることを確認していた。
また、測量により本件土地の面積が登記簿の地積とほぼ合致することを確認していた。

実地調査と登記の確認は、不動産の取引において一般になすべき調査といえ、Cは取引上必要な注意をしていたといえるから、無過失は認められる。

そして、上記のように平成16年10月1日の継続的用益開始から、平成27年4月20日現在まで継続して本件土地を占有しており、10年間物の占有を継続していたと認められる。

よって、Cの本件土地の賃借権の短期取得時効の反論が認められる。

第2〔設問2〕

1. ①の法律上の意義

➀は、Cが丙建物をDに賃貸し、使用収益させた事実から、乙土地および甲1土地賃借権の無断転貸を主張するものと解される。

 すなわち、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに賃借物を転貸し、第三者に使用させたときは、賃貸人の解除権が発生する(612条1項、2項)。

ここで、土地賃借人が借地上の自己所有建物を第三者に賃貸し、それにより「敷地」を使用収益させることは、土地の賃貸借とは別個の、それに従属する建物賃貸借に基づくものであり、土地の賃借権についての転貸に当たらない。

本件において、C・D間のの丙建物賃貸契約は、C・A間の本件賃貸借契約に従属する別個の賃貸借であり、それに基づいてDに乙土地および甲1土地を使用収益させたとしても、無断転貸ではない。

したがって、①はAの解除を基礎づける法律上の意義を有しない。

(2) ②の法律上の意義

②は、Cが甲2土地をDに対し無断転貸借して、使用収益させたことを主張するものと解される。

ア 甲2土地の無断転貸にあたらないこと 

甲2土地は、診療所たる丙建物の駐車場であり、また救急車の停車スペースがあることからすると、丙建物と一体として機能するものである。

そうであれば、Dによる甲2土地の使用収益は、C・D間の丙建物の賃貸借に基づく「敷地」の使用収益に含まれると解すべきである。

したがって、上述のように無断転貸にあたらず、②は法律上の意義を有しない。

イ C・A間の信頼関係を破壊しないこと

仮に、「敷地」に含まれないとしても、C・A間の信頼関係を破壊せず、Aは612条に基づく解除ができないから、②は法律上の意義を有しない。

すなわち、612条の趣旨は、個人が個人を信頼して物を使用収益させる賃貸借関係においては、賃借権の無断譲渡・転貸は、原則として、当事者の信頼関係を破壊するという点にある。
そうだとすれば、背信行為と認めるに足らない特段の事情があるときは、解除権は発生しない。
これは、人的側面・経済的(即物的)側面を総合考慮して行う。

ウエノ
ウエノ
規範はできるだけ具体的にする(少なくとも、具体的な考慮要素を知っておく)。
そうすると、あてはめるべき事実が見えてくるし、事実の評価と規範の繋がりがなめらかになり、論理的になる。

 本件では、たしかにに、C・D間の丙建物賃貸借契約の賃料は、月額60万円であり、これに対して、A・C間の賃貸借契約の賃料は月額20万円である。
Cは、契約機関の5年間で、1440万もの差額を得ることになる。Cは、不当な経済的利益を得るために、無断で本件転貸借契約を締結し、背信性が高いとも考えられる。

しかし、Cが転貸借を決意した動機は、健康上の理由で廃業を考えていたからであり、廃業に至れば収入が途絶えるのであるから、自己の生活費の確保のために賃料を高く設定したと考えられ、不当に経済的利益を得ようとしたわけではない。

また、CはDの友人であり、同人が勤務医をやめて開業するというから、温情として賃貸したという側面もあり、もっぱら経済的利益をえようとしたものでもない。

さらに、両契約いずれも、丙建物を診療所として所有するために行われたものであり、利用態様が同じであるから、Aの予想に反し不利益を及ぼすものではない。

加えて、転貸借契約は、5年を期間として定められ、A・C間の賃貸借契約の期間30年と比べて6分の1と大幅に短く、Aへの影響は少ない。

 以上を総合的に判断すると、甲2土地のDによる使用収益により、Cの経済的利得によりAが経済的不利益を被るような事態は生じず、またAの当初の予想を裏切るなど人的信頼関係を破壊するような事情も認められないから、背信行為と認めるに足らない特段の事情が認められる。

 よって、②は法律上の意義を有さず、Aは本件土地賃貸借契約を解除することができない。

第3〔設問3〕

 Cは、①甲1土地・乙土地につき、借地借家法10条1項に基づく占有正権原の抗弁を主張し、Eの請求に反論する。

また、②甲2土地について、Eの請求は権利濫用(1条3項)にあたると主張し反論する。

1 ①について 

Cは、乙土地及び甲1土地につき、借地借家法10条1項の対抗要件を備えている。

すなわち、Cは、建物(診療所)所有目的の土地の賃借権を、本件土地賃貸借契約に基づき取得しており、これは「借地権」であるから(借地権借家法2条1号)、Cは丙建物につき「借地権者」である(同2号)。

そして、丙建物は、所有権保存登記がされており、その所在する土地の地番を、「乙土地の地番」から、「乙土地の地番及び甲1土地の地番」に更生する登記がなされているから、Cは乙土地及び甲1土地につき、「土地の上に借地権者が登記されている建物を所有する」といえ、同条の対抗要件を取得する。

そして、この対抗要件具備は、平成27年11月10日であり、平成28年12月16日に所有権移転登記をしたEに先立つ。

 よって、Cの乙土地及び甲1土地についての、土地賃借権による占有正権原の抗弁の反論は認められる。

補足説明

借地借家法のコアとなる知識と、賃貸人たる地位の移転の新条項についてのまとめは、以下の記事でバッチリつかめる↓

【借地借家法から見る!賃貸借の重要知識完全整理】(借地借家法と民法の賃貸借の比較・賃貸人たる地位の移転・賃借人の地位の移転・敷金の承継)

2②について

一方、甲2土地については、その上に丙建物はなく、対抗要件を有しない。
そのため、Cの賃借権はEの所有権に基づく引渡請求に対抗できないのが原則である。

もっとも、権利の行使といえど、社会的に許容される限度を超えており、公平の見地から認められない場合がある。
民法1条3項はかかる場合を権利の濫用として、例外的にその権利行使を阻止しうることを定めている。

そして、権利濫用にあたるかは、公平性を実質的に判断するために、➀客観的利益考量だけでなく、②当事者の主観的な状況も考慮をして、総合的に判断するべきである2

本件について、まず①客観的利益衡量を行う。

Eの請求が認められた場合にEが得る利益について検討すると、Eは、上記のように甲1土地及び乙土地のC対する明渡し請求は認められないのであるから、Eは甲1土地・乙土地について使用・収益できない。
そして、甲2土地のみの明渡が実現されても利用価値は小さく、得られる利益は小さい。

ウエノ
ウエノ
なお、EはCによる賃借権の対抗要件を備えられた甲1土地及び乙土地の譲渡を受けたのであり、Cに対して賃貸人の地位にある(605条の2第1項)。

他方、上述のように甲2土地は丙建物の駐車場であり、緊急車両の駐車スペースもあるから、診療所と一体となってその機能を助けている
そのため、開業医Dがこれを利用できないことは、診療所運営および患者の利用上多大な不利益が生じる。

②そして、Eの主観的状況についてみると、Aのした、すでに賃貸借契約が解除されたとの説明を、Cへの聞き取り調査をせずに安易に信じたのであり、軽率であったといえる。

以上のように、Eの所有権に基づく本件土地明渡請求は、経済的に不合理であり、また同人には帰責性が認められる。

ウエノ
ウエノ
総合考慮に基づく判断は、事実の総合評価をしてから行うと、論理的になる。

したがって、Eの請求は社会的に許容される限度を超えており、公平の見地から認められるべきでない。

 よって、Aの所有権に基づく甲2土地明渡請求は権利濫用であり、かかるCの反論は認められる。

以上

記憶事項

  • 163条に基づく賃借権の時効取得の規範は、時効の趣旨である➀永続した事実関係の尊重をする必要性、②権利の上に眠る者は保護しないという許容性から導き出される。
  • 信頼関係を破壊の法理の規範は、賃貸借が人的信頼関係を基礎とした契約であるということから導き出される。
  • 権利の濫用(1条3項)とは、権利の行使が社会的に許容される限度を超えており、公平の見地から認められない場合であり、この下位規範は、客観的必要性主観的許容性から導く。
ウエノ
ウエノ
客観で必要性、主観で許容性という法解釈の正当性は、刑法にも通じるな(客観的違法性と主観的な責任)。
そして、刑法だけでなく、法解釈一般に通じることが、勉強を積んだあなたなら想起できよう。

参考文献

  • 佐久間毅 「民法の基礎 1 総則」・「同 2 物権」
  • 潮見佳男 「基本講義 債権各論Ⅰ 契約法・事務管理・不当利得」
  • 百選

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