平成27年司法試験 民法(改正対応)過去問検討~With『かずスペシャル物権・占有まとめ図』~

オス!かずだ!

本問は物権法からの出題が主なものとなっている(設問1、2)。

  • 設問1…添付(加工・付合・償金請求)、即時取得
  • 設問2…対抗要件具備による所有権喪失の抗弁、留置権
  • 設問3…責任能力がある未成年者の不法行為についての監督義務者の責任、被害者側の過失

そこで、ただ上記論点をピンポイントで押さえるだけでなく、各論点が物権法という体系の中で、どのような位置づけになっているのか押さえ、各概念の整理整頓もしておこう。

そのために、かずスペシャル物権・占有まとめ図を用意しておいた。

ただ個別知識を修得しても、それが体系的に理解できてないと、使いこなせない。

これは、採点実感でも要求されていることである。

問題等

かずスペシャル物権・占有まとめ図

物権変動・物権の性質まとめ図

添付・即時取得の位置づけ(1枚目の画像)

共に、物権の原始的取得方法の一つであることを押さえよう。

立木の位置づけ(2枚目の画像左下)

不動産の物権変動は、登記が対抗要件である(公示の原則。177条)。

そして、土地とその定着物が「不動産」であるところ(86条1項)、
この土地の定着物とは、土地に固定されており容易に移動させることができないもので、取引通念上も土地に継続的に固定された状態で利用されると認められるものをいう。

「定着物」と「付合物」(242条)の関係

定着物は、自分が定着させた物だけでなく、第三者が付属させた場合(付合)を含む概念である。

立木も土地の定着物となりえ、原則として土地の譲渡に伴って一緒に移転する。

しかし、

  1. 立木は、立木法の定める登記がされると、地盤から独立した不動産になる。
  2. また、この登記がない場合であっても、立木を土地と別個に所有権移転の対象とすることが判例上認められている

ことを押さえよう。

そのため、本問では、土地の移転と共にした立木の移転(土地の定着物としての移転)と、立木を独立の取引対象とした移転とで、立木の二重譲渡の関係が生じるのだ。

なお、二重譲渡(公示の原則)および即時取得制度(公信の原則)の本質的理解は、以下の記事を読めばばっちりだ。↓

【誤解されない人間になる】渋沢栄一と公示・公信の原則から学ぶ処世術

占有まとめ図

  • 即時取得は占有から生じる本権取得的効力のひとつであること(1枚目)
  • 即時取得の要件(平穏・公然・善意・無過失)は、186条・188条の推定規定が及ぶこと(2枚目)

を押さえよう。

答案

第1. 〔設問1〕

1. 小問(1)

(1)  Aの主張の根拠
かず
かず
設問に「Aの主張の根拠を説明し、」とあるのだから、それに答える姿勢を見出しで示す。
そうすると、以降の記述も問いからはずれにくいし、採点者も採点項目と論述の対応関係がわかりやすく、採点しやすい。
実質(文章)だけでなく、形式(構成)でも、読みやすい答案を目指そう!

AのCに対する材木①の請求は、AがCに対する、所有権に基づく物権的妨害排除権としての材木①の引渡請求権を有することを理由とする。
すなわち、Aは、1⃣Aの所有権の存在、2⃣Cの材木①の占有を主張する。

 本件において、A・B間の丸太の売買契約は、Bの代金支払い時に所有権が移転する旨の特約が付されており、これは所有権が留保されている。
そして、いまだ代金支払いがない以上、丸太の所有権はAにある。

かず
かず
採点者には、受験生に出して欲しキーワードがある。
それを推測し、答えよう。
採点表を意識

そして、丸太はBにより製材され、材木①となったが、これは加工(246条1項本文)であり、所有権はAにある。

ゆえに、1⃣は認められる。

また、Cは材木①を自己の倉庫に保管しており、2⃣も認められる。

よって、Aの主張は認められる。

かず
かず
「Aの主張が認められるか」という問いに答える
(2)  Cの反論
かず
かず
「Cの反論を挙げ」という問いに答える姿勢をわかりやすく示す。

もっとも、Cとしては、即時取得(192条)により、自己が材木①所有権を原始的に取得したことによるAの所有権喪失を主張する。

 即時取得の要件は、ⅰ取引行為によって、ⅱ平穏・公然・善意で、ⅲ動産を占有し、ⅳ善意につき過失がないこと、である。

本件についてみると、BはCに売買に材木①を譲渡しており、ⅰは肯定される。
また、ⅱは186条1項により、推定される。
さらに、ⅲ材木①は動産である。
また、ⅳ無過失も、188条により前主Bの占有の適法性が推定される結果、Cの無過失も推定される。

かず
かず
なお、Cは、246条1項ただし書により、加工者たるBが材木①の所有権を取得したことによる所有権喪失の反論も考えられるが、結局要件満たさないし、問題文では即時取得に関する記述が多く、採点者が聴きたい内容ではないと考えられる。
様々な法律構成が考えられる中、時間は有限である。「採点者が一番聞きたいことは何だろうか」と予測し、勇気をもって主張を絞り、そこにエネルギーを集中させることが必要である。
(3)  Aの再反論

もっとも、Aとしては、上記ⅳに対し、Cは有過失であることの具体的事実を主張し、再反論する。

過失とは、取引上要求されるべきことをしなかったために前主の権利を信じたことである。

かず
かず
この定義がしっかりかけてないと、答案がぼんやりしてしまい、基礎知識がないと判断されてしまう。
基礎的概念の定義は記憶する必要がある。

Cは,A・Bの売買に関し、それまでの取引の経験から,Aが丸太を売却するときにはその所有権移転の時期を代金の支払時とするのが通常であり、かつ代金の支払いについて最近もAB間でトラブルが生じていたことを知っていた。

そうであるならば、本件売買でも同様の事態を想定し、AまたはBに代金の支払いが済んでいるのか調査することが、取引上要求されていたといえる。

かず
かず
➀義務の定立→②義務違反の流れ。
➀をうやむやにしないようにしよう。それは、過失の定義がちゃんと書けていることが前提となる。

それにも関わらず、Cは上記20本の丸太についてはAB間で代金の支払が既にされているものと即断し,特にA及びBに対する照会はしなかったのであり、取引上要求される調査をしておらず、過失が認められる。

したがって、Aのした、上記有過失の再反論は認められる。

(4)  結論

 以上より、Aの有過失の再反論が認められ、Cの即時取得の反論は認められない。

かず
かず
(Cの)「反論が認められるか」という問いに答える

2. 小問(2)

(1)  AのDに対する材木②の価格償還請求

 Aの上記請求の根拠は、材木②が乙建物に付合するから、242条本文・248条に基づく不当利得返還請求権(703・704条)を有することである。

D所有の乙建物のリフォームに際し、A所有の材木②が用いられ一体化しており、分離によって社会経済上容認することできない不利益を生ずる状態となっているから、「従として付合した」といえ、この主張は認められる。

かず
かず
付合の定義書けるといいね!242条の不動産の付合は、243条の動産の付合より広いことを意識しよう。

(2)  Dの反論

これに対して、Dは、善意による利得消滅の抗弁(703条)を主張する。

たしかに、Dは平成23年8月5日に、Aから、Bによる丸太の所有権留保中の売買があった事情を聞いたのであり、同時点で材木②について「法律上の原因」がないことについて知ることになったから、同時点で「悪意」となる(704条)。

しかし、同年7月25日、リフォームが完成し材木②は完全に乙建物に付合し、同時点で材木②の対価たる性質も有する600万円をCに給付しており、物としてもその対価たる金銭的利益としても、この時点でDの利得が消滅している。

したがって、Dの利得消滅の抗弁による反論は認められる。

第2. 〔設問2〕

1. (小問1)

Aの所有権に基づく物権的妨害排除請求権としての丸太③の引渡請求請求に対して、Gとしては、所有権喪失の抗弁により反論する。 

すなわち、丸太③の元の立木はAからEに譲渡され、かつ、AからFにも、甲土地の移転に伴って譲渡されている。これは、丸太③の二重譲渡である。

そして、二重譲渡の場合、その所有権の帰属は、対抗要件の具備で決する。この場合の対抗要件は、立木への墨書きなどの明認方法、土地の所有権移転登記である(177条)。

 本件についてみると、Eは、丸太③の元であった甲土地の西側の立木には墨書きをしていなかったのであり、対抗要件を具備していない。
他方、F甲土地につき所有権移転登記を得ている。

したがって丸太③の所有権はFにあり、反射的にEの所有権は消滅する。

よって、Gの所有権喪失の抗弁が認められ、Eの請求は認めらないから、Gは以上のような事実を主張・立証すべきである。

かず
かず
「Gはどのような事実を主張・立証すべきであるか」
という問いに答える

2.  (小問2)

Aの丸太④の引渡請求に対して、Gとしては、留置権の主張により反論することが考えられる。

留置権の成立要件として、「その物に関して生じた債権」(牽連性)を有することが必要であるところ、これは、物自体から債権が生じた場合と、物の引渡し請求権と同一の法律上・事実上の関係から生じた債権であることが必要である。

本件では、GはFに対する寄託契約(657条)に基づく保管料請求権があるが、これは物自体から生じた債権でも、Eの引渡し請求権と同一の法律上・事実上の関係から生じたものではない(FとGとの法律関係から生じた債権である)。

かず
かず
そもそも留置権の趣旨は、物の留置による債務の間接強制であるところ、Gが材木③を留置することで、Fの保管料支払債務の履行を間接的に強制する関係にない。
これは、物と被担保債権の牽連性を考えるうえで常に念頭に置くべきことである。

それゆえ、「その物に関して生じた債権」とはいえず、Gの留置権の主張は認められない。

かず
かず
ある要件の充足を否定し、主張を認めないとする結論をとる場合には、その要件を充足しない理由を必要十分に示せば、他の要件について触れなくとも不利に扱われることはない(採点実感)。
逆に言えば、その主張を認めるためには、必ず、要件のすべての充足性が示されねばならない。

第3. 〔設問3〕

1. (小問1)

Lは、加害者Hの親権者Cに対し、自らが被った30万円の損害の賠償を請求する。

その根拠としては、714条の監督義務者の責任があげられるが、Hは15歳であり、「自己の行為の責任を弁識する能力」(712条)があるから、これは認められない。

かず
かず
同条の趣旨は、法の命令・禁止を理解しえない人間を、損害賠償責任から解放することによって保護する、という点である。なお、12歳前後で責任能力ありとされる(小6)。

そうすると、H本人にしか賠償請求ができないとも考えられる。

しかし、加害者が未成年者あれば、資力に乏しいことがほとんどであり、その場合被害者の救済が事実上図れない。

また、責任能力があるといえ、親権者には、未成年者が成年に達するまで監督義務があるのであり(820条)、この義務違反は損害賠償義務の根拠となる。

 そこで、親権者の監督義務違反と、未成年者の引き起こした損害との間に相当因果関係が認められるときは、709条に基づく損害賠償請求を親権者に請求できると解する。

本問についてみると、Hは,中学2年生の終わり頃から急に言動が粗暴になり,喧嘩で同級生に怪我をさせたり,同級生の自転車のブレーキワイヤーを切るといった悪質ないたずらをしたりしたことなどから,Cが学校から呼び出しを受けるという事態が何度も生じていた。

Hの上記行為は他人の身体、場合によっては生命に対する危害を加える重大なものであり、このような行為は度が過ぎており、2度としてはならないことであると丁寧に言い聞かせる義務が親権者たるCにはあったといえる。

しかし、CはHに対し,他人に迷惑を掛けてはいけないといった一般的な注意をするものの,それ以上の対策を講ずることはなかったのであり、監督義務違反が認められる。

そして、以上のような監督義務を履践すれば、本件角材を道路におくような行為には至らなかった可能性が高く、Lに生じた損害と監督義務違反との相当因果は認められる。

 したがって、LのCに対する上記請求は認められる。

2. (小問2)

このLの請求に対して、Cとしては、過失相殺(722条2項)の主張により、反論する。

Kは事故の際,携帯電話で通話をしていたため,片手で自転車を運転していた。
また,自転車の前照灯が故障していたが、前照灯の故障を気にせず走行していた。

夕方の視認性が低下し危険な時刻に、我が子を後ろに乗せて走行する際には、障害物の存在に特に気を払い、それによる事故が生じないよう自転車を整備し運転する注意義務があるというべきであり、上記Kの運転にはこの義務違反、すなわち過失が認められる。

もっとも、同条は、「被害者」の過失を考慮すると定められており、上記事由は親権者Kのものであるから、文言を素直に解すれば、これは認められない。

しかし、過失相殺は、発生した損害の公平な分担を旨にするところ、被害者と経済上密接な関係を有する者の犯した過失が考慮されないのは、加害者にとって不公平である。

そこで、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にある者の過失とすべきである。

これを本件についてみると、KはLの親権者であり、被害者本人と身分上・生活関係上、一体とみられる関係が認められる。そして、上述のように、Kには過失が認められる。

したがって、Cの過失相殺の反論は成立し、その限度で賠償責任を負うこととなる。

  以上

記憶事項

  • 即時取得(192条)は信頼保護の規定であるから、「善意」とは、前主の権利を信じたことであり、その「過失」とは、取引上要求されるべきことをしなかったために前主の権利を誤信したことである。
    ↔取得時効の「善意」(162条2項)は占有者が自己に所有権があると信じることである

  • 242条本文の「その不動産に従として付合」とは、不動産と動産の分離によって社会経済上容認することできない不利益を生ずる状態になったことをいう。

  • 留置権(295条)の「その物に関して生じた債権」(牽連性)とは、➀物自体から債権が生じた場合と、②物の引渡し請求権と同一の法律上・事実上の関係から生じた債権である。
    →「留置により債務の弁済を間接的に強制する関係にあるか」がポイント

参考文献

  • 佐久間 「民法の基礎Ⅱ 物権」
  • 潮見「プラクティス民法 債権総論」
  • 潮見「基本講義 債権論Ⅰ」・「同Ⅱ」
  • 松井 「担保物権法」

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