平成30年本試験再現(憲法)~青少年と性表現に、営業の自由を添えて~

おす!ウエノだ!

本問は、性表現物の規制における、

  • 文面審査(漠然ゆえに無効の法理)
  • パターナリズム
  • 表現内容規制
  • 営業の自由

等を問題にするものである。

文面審査の書き方、3つの審査基準の内容と使い分け、審査基準論と目的二分論は整合するかなど、

受験生が準備すべき憲法のエッセンス部分をギュッとまとめたから、是非最後まで読んでもらいたい。

では、さっそく始めよう!

問題等

出題趣旨・採点実感のポイント

  • 具体的な条文の文言を指摘する
  • 規制による影響について、現実感をもって的確にイメージ
  • 具体的な理由付けをしてあてはめる
  • 判例に言及する(事件名・結論だけでなく、判例の事案との異同を)
ウエノ
ウエノ
「具体的」というキーワードが頻繁に出てくる。
規範に至る理由付け、事実の指摘、評価の想像力、判例の異同など、掘り下げた検討が高評価に繋がることがわかる

平成30年 憲法 再現答案

第1.青少年について

1.意見

法8条3項は、青少年(法2条1項)の知る権利(憲法21条1項)を侵害するものでない。

ウエノ
ウエノ
ここで、具体的な権利を提示すればよかった。「本件図書類を購入し、閲覧する自由」など

2.理由

(1)憲法21条1項は、表現の自由を保障しているところ、情報発信は当然に受け手を想定するものであるから、知る権利も保障される。

ウエノ
ウエノ
ここで上記権利が知る権利の保障範囲内であること、およびその重要性について論述すべきであった。

(2)法8条3項は、青少年に対して規制図書(法4条)の販売を禁止しており、規制図書の内容を知る権利を制約している。

そして、規制図書は、同条各項に規定する内容の図書類であり、表現内容に着目した規制であって、規制の態様は強度である。

(3)知る権利の重要性、規制が強度であることに鑑みれば、法8条3項が青少年の知る権利を侵害するかは、厳格な基準で判断すべきものと考えられる。

しかし、一般に青少年は判断能力が未熟であり、他方、規制図書に該当するような「成人向け」「アダルト」の図書類は、メディア媒体と販売ルートの発達に伴って巨大化している。

したがって、このような規制図書から青少年の健全育成に支障が生じないよう保護しなければならず、その限度で青少年の知る権利の重要性は低下する。

ウエノ
ウエノ
なぜ、青少年の知る権利がパターナリズムという観点から重要性が低下するといえるのか、そこがメインの論点なのに、説明が浅い。
また、権利の重要性の問題と、規制の必要性の問題とがごっちゃになっている。
パターナリズムの論理
  • そもそも知る権利は表現の自由の一態様であり、表現の自由は自己実現・自己統治がその根底にある。
  • 青少年は、判断能力が未熟であるから、情報の取捨選択ができず、自己実現・自己統治に適うような情報を選び取る能力を類型的に欠いているといえる。
  • ゆえに、青少年の知る権利は、表現の自由の基礎が欠いているといえ、大人のそれに比して、保護すべき必要性(重要性)が低いといえる。
  • これは、目的・手段審査によるバランス論以前の問題であり、その基準を導き出すための表現そのものの価値の問題である。

この論理を、端的に表現する(後述の書き直し答案参照)。

したがって、法8条3項の規制が必要かつ合理的である限り、青少年の知る権利を侵害するものではない。

ウエノ
ウエノ
岐阜県青少年保護育成条例事件(最判平成元年9月19日)の基準だが、必要かつ合理的というのみでは、審査の厳格度が不明確であり、妥当でない。

(4)法8条3項は、青少年に対する規制図書の販売貸与を事業者に禁止するものであり、規制図書から青少年を守るには、このような範囲を限定しない規制をすることが必要である。

また、規制図書のような図書類が未成年者の価値観に影響を及ぼし、性的な逸脱行為に繋がることは社会共通の認識となっているから、このような規制に合理性も認められる。

(5)よって、法8条3項は、青少年の知る権利を侵害するものでない。

ウエノ
ウエノ
採点実感では、改行を繰り返してそのたびに番号を振るなどの箇条書きのような記載はしないように注意していた。俺の答案のことをいっているのだろう。

第2.18歳以上の者について

1.意見

法8条1項2項は、18歳以上の者の知る権利を侵害し、違憲である。

2.理由

(1)18歳以上の者の知る権利は、憲法21条1項により保障される。

(2)法8条1項は、日用品の販売を行う事業者に規制図書の販売を禁止し、また同条2項は、規制区域に店舗において、規制図書の販売を禁止している。

(3)ところで、規制図書とは、「性交または性交類似行為」(法7条1項)「衣服の全部又は又は一部をつけない者の卑わいな姿態」(2項)という内容を含む図画である。

この文言は、漠然不明確・過度に広範であり、上記知る権利を侵害するものであるから、違憲ではないか。

ウエノ
ウエノ
漠然不明確と過度に広汎は別概念であり、分けるべきと採点実感では言われていた
ウエノ
ウエノ
また、文面上違憲の判断は未成年者にもあてはまる事柄であり、総論のように先にくくりだして、まとめて論ずべきであった。

(4)ある規定が漠然不明確・過度に広範か否かは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合にその文言に該当するか判断可能でなければならない。

(5)そして、成年者の知る権利が未成年者と異なり、規制図書から保護する必要性が低い事に鑑みれば、「性交または性交類似行為」「衣服の全部又は又は一部をつけない者の卑わいな姿態」とは、そのような行為または姿態がどのようなものか一般人において一見して明らかであることが必要であると解すべきである。

(6)本件において、規制図書の指定は、市長等が図書類を個別に指定することはせず、要件に該当する図書類が自動的に規制対象となるのであって、どのような図書が誰によって判定されるのか不明である。

(7)したがって、一般人において、上記文言の内容がどのようなものなのか、一見して判断することはできない。

(8)したがって、法8条1項2項の規制は、漠然不明確かつ過度に広範であり、18歳以上の者の知る権利を侵害し、違憲である。

ウエノ
ウエノ
また、文面審査のみを問題にしており、「規制の内容」について検討できていない

第3.日用品と並んで規制図書を販売してきた店舗について

1.意見

法8条1項・15条1項は、上記店舗の営業の自由(憲法22条1項)を侵害するものでなく、合憲である。

ウエノ
ウエノ
ここで、単に「営業の自由」とするのではなく、本件の具体的な自由を提示する。
「規制図書類を販売する自由」など

2.理由

(1) 憲法22条1項は、職業選択の自由を保障する。そして、職業は営業を前提とするから、営業の自由も保障される。

(2) 法8条1項は、日用品と並んで規制図書を販売してきた店舗の、規制図書の販売という営業行為を禁止するものであり、かつ、違反者には罰則が科される(15条1項)。

したがって、上記規定は、上記店舗の営業の自由を制約している。

(3) 営業の自由への制約は、規制の種類、性質・目的が多様であるため、それが許されるかは、規制の目的・必要性・内容、規制によって制限される財産権の種類・性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきである。
具体的には、目的が公共の福祉に合致しないことが明らかであるか、規制手段の必要性・合理性が欠如している場合、違憲となる。

ウエノ
ウエノ
この森林法違憲判決の規範は、権利の重要性と規制の強さを検討しそれに応じた審査基準の定立・適用により比較衡量を行うスタイルとは異なる。
すなわち、ただ考慮要素を羅列しただけで、やっていることは裸の比較衡量であるから、恣意的な運用を招くものであり、使うべきでない。

(4) 法8条1項・15条1項の規制の目的は、規制図書を見たくない者の利益、青少年の健全育成であり、性風俗に係る善良な市民の価値観を醸成することにある(法1項)。これは、公共の福祉に合致しないとは言えない。

(5) 規制手段について、規制図書を見たくない者・青少年の利益を保護するためには、普段立ち寄る日用品を購入する店舗で規制図書の販売を禁止することは必要である。

(6) また、確かに、A市内の上記店舗は、全小売店3000店舗のうち2400店舗であり、そのうち600店舗と4分の1が規制図書を扱っているから、その影響は少ないとはいえず、規制の程度は重大であり、不合理といえそうである。
しかし、これらの店舗は主に日用品をあつかっており、規制図書が売り上げに占める割合は微々たるものであるから、重大な影響はなく、不合理とは言えない。

ウエノ
ウエノ
「規制図書を販売していること自体に集客力がある」という問題文の反対事実に言及できていない

(7)よって、法8条1項・15条1項は、上記店舗の営業の自由を侵害しない。

第4.学校周辺の規制区域となる場所で規制図書を扱ってきた店舗について

1.意見

法8条2項・法15条1項は、上記店舗の営業の自由を侵害し、違憲である。

2.理由

(1) 営業の自由は上記のように保障されている。

(2) 法8条2項は、学校の周囲200メートルでの規制図書の販売を禁止し、かつ法15条1項により、違反者には罰則が科せられる。したがって、上記店舗の営業の自由を制約している。

(3) それが許されるかは、第3と同様の基準で判断する。

(4) 目的は、第3と同様に公共の福祉に合致しないとは言えない。

(5) 規制手段について、確かに同条によって規制される店舗が全体の面積に占める割合はわずか20%程度であり、商業地域に限っても30%にとどまる。市内の規制区域にある店舗数は全700店舗であり、そのうち規制図書を販売するのは150店舗と過半数に達しない。

しかも、このうち、規制図書の売り上げが全体の20%を超えるのは、わずか10店舗にすぎないから、規制の程度は弱いともいえそうである。

しかし、規制図書の売り上げが売り上げ全体のごく1部であっても、これを販売すること自体に集客力があるのであり、規制の程度が弱いとは言えない。

ウエノ
ウエノ
この事実は、日用品を販売する店舗に関する事実である。事実の整理ができていない

また、これまで通り営業しようとすれば、規制区域外に店舗を移転しなければならず、本件条例の施行までの6か月間という短期間で移転を強いるのは小売店には困難であり、合理的な制約とは言えない。

(6) 以上から、法8条2項・法15条1項は、上記店舗の営業の自由を侵害し、違憲である。

第5 規制図書とそれ以外の図書を扱っている書店やレンタルビデオ店について

上記と異なり、規制図書とそれ以外の図書を扱っている書店やレンタルビデオ店は、法8条4項によって単に販売方法を制限されるのみで、内装工事も扉、壁など簡易のものにすれば費用負担も少ないから、合理的な制約であり、合憲である。

以上(答案用紙7枚と20行)

成績E(2501位~3000位)

ウエノ
ウエノ
検討対象が複数あり(買う側複数、売る側複数)、苦手な数字も多くでてきて、混乱した。

A答案の特徴

↑辰巳のハイローヤーのA答案を分析した。

プラス面

  • 権利の保障根拠、その重要性についてしっかり理由をつけて検討していた
  • 代替手段の検討ができてた(販売禁止でなく、年齢確認)
  • 事実を多く拾い、十分な量検討できている(11頁半強)

マイナス面

  • 出題形式が「法律家としての意見」であるにもかかわらず、主張・反論形式だった
  • 「見たくないものを見ない権利」について、深く掘り下げた言及がなかったり、事実の評価にムリヤリ感があったりした。

全体として

論理的に?のところが多く、決してクオリティが高い書面とはいえない。

しかし、多くの事実を上げて、代替手段の検討をし、規範部分やあてはめの理由付けが(形式にでも)なされている。

短時間での相対試験で、採点項目も決まっているのだから、採点項目のポイントを押さえた答案が評価されるのだろう。

書き直し答案

第1 購入する側

1 規制の範囲について

ア 保護範囲

憲法21条1項(以下、憲法は省略)は、表現の自由を保障しているところ、情報発信は当然に受け手を想定するものであるから、知る権利も保障されている。

本件において、「規制図書」(法7条)は表現物であるから、青少年および18歳以上の者の「規制図書を閲読する自由」は21条1項の保障を受ける。

イ 制約

法8条1項が規定する日用品等の販売を主たる業務とする事業者(以下、「1項事業者」という)および、同条2項の学校の敷地の200メートル以内の事業者(以下、「2項事業者」という)は、規制図書類を「販売または貸与してはならない」とされており、これは青少年および18歳以上の者が規制図書類にアクセスする機会を減少させるものであるから、間接的に上記権利を制約している。

また、A市内において規制と書類を販売し貸与する事業者は、「青少年に対し規制図書類を販売し又は貸与してはなら」ず(同条3項)、さらに同条4項により、同項に掲げられた「措置」を取らなければならず(以下、「3項4項事業者」という)、上記権利を間接的に制約している。

ウ 正当化

ところで、規制図書とは、「性交または性交類似行為」(法7条1項)「衣服の全部又は又は一部をつけない者の卑わいな姿態」(2項)に該当し、「殊更に性的感情を刺激する」ことを内容とする図画である。

この文言は、漠然不明確であり、文面上違憲ではないか。
表現の自由の優越的地位に鑑み、上記のような間接的制約であっても、文面上漠然不明確な文言の違憲性を早期に確定し、萎縮効果を除去すべきであるから問題となる。

「漠然性ゆえに無効の法理」と「過度の広汎性ゆえに無効の法理」をどのように使い分ければいいか
この点につき、

  1. まず漠然性を検討し、
  2. 過度に広汎かは法文が漠然不明確でないことを前提として、適用範囲が広すぎる場合に使われる

と区別すればよい。

過度に広汎のイメージとしては、複数の表現行為が具体的に限定列挙されている規定において、その一部に権利を侵害する部分があるような場合を想定すればいいだろう。

文面上違憲の主張適格

本問のように、規制法規が第三者(販売業者)を直接制約するにとどまるものであり、
問題となっている権利主体(青少年または18歳以上の者)には間接的な効力しか及ぼさない場合において、
当該権利主体が文面上違憲を主張することがが許されるか問題となる。

この点について、俺が使っている『立憲主義と日本国憲法』の著者である髙橋和之は以下のように考える。

  • 表現の自由については、萎縮効果の早期排除のため、間接的制約を受ける者も主張適格が認められる。
  • 他方、経済的自由の領域においては、直接制約を受ける者に限り主張適格を認めるにとどまる。

ある規定が漠然不明確か否かは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合にその文言が適用されるか判断可能か否かで決せられる1

法7条の「性交または性交類似行為」についてみると、例えば、フレンチ・キスは、わいせつ性は低く規制する必要はないと考えられるところ、これも男女間の肉体的接触である以上「性交類似行為」とされる可能性があり、一般人においてその該当性が一義的に判断できない。

また、「衣服の全部又は又は一部をつけない者の卑わいな姿態」について、たとえば漫画雑誌巻頭の水着のグラビアがあたるのか否か判断できず、一般人においてどのような行為がこれにあたるのか判断できない。

ウエノ
ウエノ
このような文言を漠然不明確でないというには、たとえば刑法177条の「性交等」の定義のように、該当する行為が限定列挙されていたりする必要がある。

したがって、法7条の規制図書類の定義は漠然不明確であって、その規制により間接的に、青少年および18歳以上の者の「規制図書を閲読する自由」を萎縮効果により侵害するものであるから、文面上違憲である。

2 規制の手段・内容について

(1)青少年
ア 保護範囲

上記のように、青少年の「規制図書を閲読する自由」は21条1項の保障を受ける。

イ 制約

この権利が法8条各項により間接的制約を受けているのも上述のとおりである。

ウ 正当化

表現の自由が個人の人格的自律に密接な関係を有すること、規制が内容に着目する見解規制であることに鑑みれば、法8条3項が青少年の知る権利を侵害するかは、厳格な基準で判断すべきものとも考えられる。

事前抑制と事後抑制の区別

検閲は、判例によれば発表前の禁止であるから2、いちおう発表はされており、販売店舗を規制する本問では問題とならない。

もっとも、事前抑制は、その定義によっては問題にしえる。

事前抑制と事後抑制の定義と両者の区別はあいまいである。

学説では、発表後であっても、受領前であれば、事前抑制とするものがあり、これによれば本問規制図書類の規制は事前抑制になる。

しかし、北方ジャーナル事件において裁判所は、印刷・頒布当の禁止を命ずる仮処分を事前抑制と認定しており、受領前まで事前抑制の範囲を広げるかは明らかにされていない。

受験生としては、検閲と平仄を合わせ、発表前を事前抑制としておけば、安全パイであろう。

そうすると、本問では事後抑制となり、これは表現の自由に対する規制における原則形態であるから、特に明記する必要はないことになる。

しかし、一般に青少年は判断能力が未熟であり、表現の自由の根拠である自己統治・自己統治に資するような表現物を取捨選択する能力を類型的に欠いているといえる。

それゆえ、青少年の規制図書を閲読する自由は、パターナリズムの観点から抑制されうる性質を有するものであり、その要保護性は、大人と比して低いといえる。

したがって、法8条各項による当該自由への規制は、規制の目的が重要であり、その手段が目的と実質的関連性を有するときにのみ、許容される。

目的についてみると、①青少年の健全育成および、②一般市民の見たくないものを見ないようにする利益の確保である(法1条)。

①青少年の健全育成については、規制図書のようなアダルトメディア媒体が過激化していることを踏まえれば、判断能力が未熟な青少年の価値観に及ぼす影響は甚大であり、人格的自律の前提として特に保護する必要性があるといえ、目的の重要性が肯定できる。

AVの弊害

アダルトものの表現物、特にAVはマジやめた方がいいよ。

性能力その他漢としてのバイタリティーを奪う。

【中星一番】視聴者「AV見て自慰しすぎて体調悪いです」中星「見るなっつってんだろ!」【切り抜き】

②「一般市民の見たくないものを見ないようにする利益」について、日常利用する公共の場所で心の静謐を害されないことは人格的生存にとって重要であり、広い意味でのプライバシーと呼ぶことができるから(13条)、その保護を目指す目的は重要といえる3

3つの審査基準使い分け方
 目的手段
厳格な基準必要不可
→やむにやまれぬ利益。憲法上の権利と認められる利益について、侵害から保護する必要性があり、かつ緊急性が認められること
必要最小限度
→よりゆるやかな他の代替手段(LRA)が存在しないこと
在宅投票制度廃止事件第一審判決参照
厳格な合理性の基準
(通常審査)
重要
→憲法上の権利と認められる利益について、その保護の必要性が認められること
実質的関連性
→手段としての必要性および合理性
単に観念上必要といえるだけでは足りず、確実な根拠に基づき合理的といえることが必要
薬事法違憲判決
合理性の基準
(明白性の基準)
正当
→不合理であることが明らかな目的でないこと
合理的関連性
→手段が著しく不合理であることが明白といえないこと
※小売市場距離制限事件参照

参考:『読み解く合格思考 憲法』玄唯真 著 大野純 補訂

俺は法的思考力の涵養を重視するので、基本、知識を切り貼りしただけの予備校本は使わないのだが、知識整理の際、思考の踏み台としてつまみ食いのように用いるものも、中にはある。

この本は、著者の思考を介入させて知識整理がなされており、批判的に読むことを前提とすれば、便利に使うことができるものである。

上記表は、この本の整理をベースに判例や後掲高橋、芦辺、その他論文や論稿を参考にまとめ上げたものである。

手段について、法8条各項は、いずれも一定の態様での規制図書の販売貸与を事業者に禁止するものであり、これにより青少年が規制図書に接触する機会を減少させる効果があるから、必要な手段であるといえる。

また、法8条1項について、日用品を販売する1項事業者は青少年・一般市民が日常利用する店舗であるから、法8条1項2項の規制の範囲は①②目的に適合し合理的といえる。

同法2項事業者は青少年が通う「学校」(学校教育法1条)の近辺の事業者であり、この者に規制図書の販売を禁止することは、①目的に適合し合理的といえる。

同法3項については、規制図書を青少年に対して販売貸与を禁止するものであり、①目的に適合するから、合理的といえる。

同法4項の「措置」は、青少年が規制図書を目にすること自体を防止することで、規制図書の内容に興味・関心を抱くことを妨げる効果があるから、①目的に適合し合理的とえる。

さらに、「措置」によれば一般市民が規制図書を目に入れる機会を減少させ、見たくないものを見なくてもよくなるといえるから、②目的に適合し合理的といえる。

したがって、手段について目的との実質的関連性は認めらる。

よって、法8条各項は、青少年の「規制図書を閲読する自由」を侵害するものでない。

(2)18歳以上
ア 保護範囲

上記のように、成年者の「規制図書を閲読する自由」は21条1項の保障を受ける。

イ 制約

この権利が法8条各項により間接的制約を受けているのも上述のとおりである。

ウ 正当化

成年者については、青少年とは異なり、情報を取捨選択する能力を類型的に有しているといえるので、上記権利の重要性は低下しない。

そして、規制の態様が内容規制であることを踏まえれば、合憲であるというためには、目的が必要不可欠であり、手段が必要最小限度である必要がある。

岐阜県青少年保護育成条例事件が成年者の審査をテキトーにしていることへの批判

この点につき、岐阜県青少年保護育成条例事件(最判平成元年9月19日)は、青少年保護のための規定が成年者へ及ぼす影響について、「青少年の健全な育成を阻害する有害環境を浄化するための規制に伴う必要やむを得ない規制」であるとして、表現の自由を侵害するものではないとしている。

これは、成年者に対する規制について、青少年への規制と同等ないしそれ以下の厳格度で審査するものであり、上記のような両者の差異を看過するものであるから、妥当でない。

目的についてみると、①の青少年保護については、上述のように過激な性表現物が未成年者の人格的自律に悪影響を与えることに加え、性表現物の依存性を鑑みれば、早期にその効果を阻む必要性・緊急性が認められ、必要不可欠といえる。

②について、一般市民の見たくないものを見ないようにする利益の確保は重要といえるものの、「みたくないもの」は人によって変わり得るものであるし、そのようなものを見てしまったとしても一瞥する程度であり、早期にこれを除去する緊急性が認められるほどの規制の必要性があるとはいえない。

したがって、②については目的の必要不可欠性は認められない。

手段について、法8条1項・2項各業者への規制は、青少年か否かに関わず網羅的に販売・貸与を禁止するものであり、これは免許証の提示等を伴った対面販売の徹底という、より強度の少ない手段により、①の目的の実現が可能である。

したがって、法8条1項・2項は「成年者の規制図書を閲読する自由」を侵害するものであり、違憲・無効である(98条1項)。

第2 販売する側

1 規制の範囲について

法15条(1)は、法8条1項2項3項の規定に違反した者に刑罰を科している。

また、法15条(2)は、法9条の改善命令等に違反した者に刑罰を科しているところ、改善命令等は上記法8条1項ないし3項だけでなく、4項の規定に違反した者も対象となっている。

このように、法8条各項に違反した事業者は、法15条により刑罰を科されうるところ、同条は「規制図書類」(法7条)に該当する表現物に対する規制である。

そのため、刑罰法規を構成する「規制図書類」の定義が、刑罰法規の明確性の原則に反しないかが問題となる。

明確性の原則とは、立法者は刑罰法規の内容を具体的かつ明確に規定しなければならないとする原則をいい、刑罰法規の内容が不明確で漠然としているときは、その法規は罪刑法定主義から許されず、31条に違反し無効となる。

ある刑罰法規が漠然不明確のゆえに31条に違反するかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合にその文言が適用されるか判断可能か否かで決せられるところ、法7条の「規制図書類」の定義が漠然不明確であることは既述の通りである。

したがって、法7条・8条・15条は31条に反し、文面上違憲である。

2 規制の手段・内容

(1)日用品と並んで規制図書を販売してきた店舗について(法8条1項)
ア 保護範囲

22条1項は、職業選択の自由を明文で保障しているところ、選択した職業が自由に遂行できないと自由な経済活動とはいえないから、同条は営業の自由も保障していると解するべきである。

そして、規制図書類の販売貸与も、そのような職業を選択し、そのような営業活動を行うことに他ならないのであるから、1項事業者の「規制図書を販売貸与する自由」は職業選択および営業の自由の補足範囲内であり、22条1項により保障される。

イ 制約

既述のように、法8条1項は、日用品販売業者の上記権利を直接的に制約している。

ウ 正当化

職業選択・営業の自由は、自己の生計維持・社会的機能分担という機能だけでなく、自己の個性を発揮する場として人格的価値をも有する4

もっとも、その性質から公共の安全に与える影響が大きく、また政策的な配慮が要求される場合が少なくないので、精神活動の自由と比較して広範な制約を受けざるを得ない。

また、職業は多種多様であり、その要保護性は、裁判所の審査能力と規制態様を踏まえ精査されなければならない。

したがって、通常審査(厳格な合理性の基準)をベースラインとして、⓵規制の目的、⓶態様を考慮のうえ、通常審査が緩和されるかという観点から判断枠組みを設定すべきである。

目的二分論は審査基準論と整合するか~高橋ベースライン論の位置づけ~

違憲審査基準論は、規制を受ける人権側の性質の違いに応じて、審査基準を設定し、それにより対立利益たる公共の福祉を理由とする規制の必要性・相当性を計ろうとする理論である。

ところが、判例が採っていたとされる積極的・消極的目的二分論は、規制する側の理由(悪く言えば、都合)に基づくものであり、しかも、具体的な立法目的の緊急度とは関係のないものである。

これと、審査基準論は、整合するのだろうか。

この点について髙橋は、

裁判所の審査能力に着目すれば、規制目的二分論も理解できないわけではない。

というのは、消極目的規制の場合は、健康や安全に対して現に生じている害悪の除去、あるいは、規制しない場合必ず生ずるであろう害悪の予防が立法目的であり、裁判所が「目的ー手段」審査の枠組みの下で立法事実を基礎とする審査を行うのに特に能力的な障害はないが、

積極目的規制の場合には、立法目的は現実的な弊害の除去・予防というよりは、より安定的・調和的な社会の創造という未来志向的性格の強いものとなりがちで、経済的弱者の保護や経済の安定あるいは戦略的成長の実現など、政治的考慮の優越した政策的目標が背後に在ることが多く、そのような場合、目的や手段の選択範囲は広いし、目的と手段の適合関係も推量的なものとならざるを得ず、裁判所が「目的ー手段」審査の枠組みの下で立法事実を精査する事には限界があるである。

かかる限界を自覚すれば、立法府の裁量を尊重するのもやむを得ないということになろう。

しかし、積極目的だということから一律に審査の現角度を緩和するのではなく、通常審査を出発点に置き、具体的事例における積極目的の内容に応じて厳格度度を緩和すべき場合かどうか考えていくべきであろう。

と述べて、審査基準論は目的二分論は整合するのであり、それはベースライン論という形をとると説明している(後掲髙橋『立憲主義と日本国憲法』第5版283頁)。

そして、

弱者保護の手段については立法府の広範な裁量が認められるにしても、真に弱者保護が目的なのかどうかについては、弱者の存在とその窮状を裏付ける立法事実の確認が必要と思われる。

さらに、租税制度の観点からの規制は、納税義務を憲法が明示することからも、租税制度そのものが公平かつ合理的なものである限り、立法府の裁量を認めるべきであろう。

このほか、裁判所が審査能力を著しく欠くと認められ、その結果民主的なプロセスに委ねる方がより適切な解決が得られるという場合にも、通常審査を緩和することが認められるといえよう。

とし、表面上積極目的であっても、真の意図するところや、制約を認める憲法上の根拠に着目するなどすべきとしている(同285頁)。

ウエノ
ウエノ
立法裁量が認められる場合って、専門技術的判断や高度の政治的判断が要求される場面など、細かいこと緊急性が低い事柄であり、類型的に人権の制約が弱い場合であるといえる。

そうすると、人権の要保護性から基準を設定するという審査基準論と適合するといえるよな。

このような観点からは、人権の制約の強さを多角的かつ綿密に検討する必要があるのであり、違憲審査基準の設定に際して、①目的のみの審査で終らず、②本文で述べたように規制の態様をも検討すべきといえる。

②は髙橋では述べられていないが、後掲の芦辺では①だけでなく②も検討すると述べられており、試験で書いても問題ないであろう。

⓵規制の目的についてみると、青少年の健全育成、見たくないものを見ない利益の保護という目的(法1条)は、社会的・経済的弱者保護とは異なり、国民の健全な精神的発達・精神的生活を保護する消極目的規制であるから、立法裁量が広く認められるものではない。

また、⓶その規制態様について、日用品を販売する1項事業者に規制図書類の販売を禁止するものであり、規制図書類の売上は事業全体の売り上げの一部でしかなく、営業内容に対する規制に留まるとも思える5

しかし、職業を選択し営業するにあたっては、経営上の採算を考慮するのであり、規制図書類を販売していること自体に集客力があることは否定できないことからすれば、実質的に規制図書類販売業への参入規制の側面をも有しているといえ、制約効果は小さいとはいえない6

そうであれば、法8条1項の規制は、規制の目的が重要であり、その手段が目的と実質的関連性を有するときにのみ、許容されるとすべきである。

本件についてみると、青少年の健全育成、一般市民の見たくないものを見ない利益の保護という目的に重要性が肯定できること、

また、手段についても、日用品を販売する1項事業者は青少年・一般市民が日常利用する店舗であるから、法8条1項2項の規制の範囲は目的に適合し合理的といえることは、青少年の箇所で既述した通りである。

したがって、法8条1項は目的が重要であり、かつ達成手段について実質的関連性を有している。

よって、1項事業者の規制図書類を販売する自由を侵害するものでなく、合憲である。

ウエノ
ウエノ
厳格な合理性への持って行き方で薬事法判決の理解を示すことが重要であり、具体的な検討は青少年の箇所を引用して省エネ♪
(2)学校周辺の規制区域となる場所で規制図書を扱ってきた店舗について
ア 保護範囲

2項事業者の「規制図書を販売貸与する自由」は職業選択および営業の自由の補足範囲内であり、22条1項により保障される。

イ 制約

既述のように、法8条2項は、2項事業者の上記権利を直接的に制約している。

ウ 正当化

⓵1項事業者の箇所で述べたものと変らず、法8条2項の目的も消極目的規制である。

⓶規制の態様についてみると、学校の敷地の周囲200メートル以内の規制区域内のあらゆる事業者に、規制図書類の販売を禁止するものである。

たしかに、規制区域内の店舗700店舗のうち、規制図書を販売する店舗が150店舗であり、そのうち規制図書類の売上が20パーセントを超える事業者は10店舗にすぎないこと、その事業者は規制図書をを販売したければ規制区域外に移転すればいいこと、そのための期間を6ヶ月設けていること(法附則1条)を鑑みれば、規制の強度は弱いとも考えられる。

しかし、上述のように規制図書類の集客効果を鑑みれば、新規事業者に対する規制区域内への参入規制の側面も有していることは否定できず、その利益の考慮において、既存の店舗数、規制図書類自体の売上は意味をなさない。

したがって、その制約の強度は小さいものとは言えない。

そうであれば、法8条1項の規制は、規制の目的が重要であり、その手段が目的と実質的関連性を有するときにのみ、許容されるとすべきである。

目的の重要性について、青少年の健全育成という目的が重要であること、手段について、2項事業者は青少年が通う「学校」(学校教育法1条)の近辺の事業者であり、この者に規制図書の販売を禁止することは、青少年の健全育成という目的に適合し合理的といえることは、既述のとおりである。

したがって、法8条2項は目的が重要であり、かつ達成手段について実質的関連性を有している。

よって、2項事業者の規制図書類を販売する自由を侵害するものでなく、合憲である。

(3)規制図書とそれ以外の図書を扱っている書店やレンタルビデオ店について
ア 保護範囲

3項4項事業者の「規制図書を販売貸与する自由」は職業選択および営業の自由の補足範囲内であり、22条1項により保障される。

イ 制約

3項4項事業者は、「青少年に対し規制図書類を販売し又は貸与してはなら」ず(法8条3項)、さらに同条4項により、同項に掲げられた「措置」を取らなければならず、上記権利を直接的に制約されている。

ウ 正当化

⓵規制の目的は、既述のとおり消極目的規制である。

もっとも、⓶規制の態様について、法8条3項は成年者への販売を制限するものでなく、また、4項陳列場所についての規制は規制図書の販売そのものを規制するのではないから、販売内容の規制である。

4項について、たしかに、内装工事には費用がかかるが、暖簾(のれん)や簡単な仕切りをつけることはわずかな費用でできる。

これらの規制の態様を踏まえれば、3項4項事業手段への規制は小さいものと言わざるをえず、目的が正当であり、かつ手段に合理的関連性が認められれば、合憲である。

目的について、上述のように、青少年の健全育成は不可欠な目的であり、他方、みたくないものを見ない利益は重要性が肯定できる以上、不合理とはいえない。

また、これも上述したように、同法3項、4項について合理的といえる以上、著しく不合理であることが明白といえない。

したがって、法8条3項4項は目的が正当であり、かつ手段について合理的関連性を有している。

よって、3項4項事業者の規制図書類を販売する自由を侵害するものでなく、合憲である。

書いてみた感想と今後の方針

処理すべきことが多すぎる。

出題方針について疑問を覚える。

  1. 「ほどほどのクオリティで大量に処理する能力」を法曹として必要な能力と捉えているのか。
  2. 「ふるい落とす必要」という試験の特性か。

ここでは深く述べないが、上記2点両方に異議がある。

もっとも、文句を言っているだけでは合格できない。

彼らが本当に必要な能力を気付くまで、求められる「具体的事実の掘り下げた検討」が少しでも現場でできるように、知識の「使える化」をし、処理速度を上げる必要がある。

ウエノ
ウエノ
焦らず、かつ逃げずに、自分のできることを、マイペースでやっていこう。勉強は楽しむものだよ。

参考にした基本書

  • 高橋和之『立憲主義と日本国』
  • 芦辺信喜『憲法』
  • 宍戸・巻美・安西『憲法学読本』

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歯に衣着せぬ司法試験の基本書レビュー

 

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