おす、かずッティよ!
本記事を読めば、自分で出費せずに、賃貸物件を快適な状態に維持する法的知恵が身につく。
法律知識がない方でもわかるよう簡単にかみ砕いて、賃貸において知らないと損する必須の法律知識を紹介しているので、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
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俺、借り家暮らしなんだが、台所の蛇口からチビチビ水漏れしやがって、ずっとストレスためてた。
でも、こういうのって、我慢する必要ないんだよ。
賃貸借契約において貸主は、賃料の対価として、借主に賃借物を「使用及び収益させる」義務を負っていて(民法601条。以下民法は省略)、必要な修繕をしなければならないんだ(6061項本文)。
ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
これ、民法学んでれば、超常識なんだが、「このくらいの水漏れで修繕してくれんのか?」と疑問だったし、水道が使えなくなるわけでもないので、キッチンペーパーを挟んで頻繁に取り換えることでしのいで、ずっと放置していた。
しかし、微妙にカビは生えてくるし、キッチンペーパー取り換えるのめんどいしで、この度、「いっちょチャレンジてみるかっ」て感じで、オーナーに修繕請求した。
その結果、バッチしピカピカになった。
オーナーは当初、金を出すのを渋った。
雨漏りなどの大きめのトラブルと異なり、少しの水漏れ程度では、部屋の価値を下げるほど重大ではないからである。
だが、このようなオーナーに対して修繕請求を飲ませるノウハウがあるから、同じように「修繕したいけど動けない」って方は、参考にしてほしい。
また、このような①「必要費」にあたる修繕以外にも、民法、借地借家法には②「有益費」③「造作」にあたる費用支出を、賃貸人の負担でできるとの規定があるから、これらも紹介する。
修繕請求と必要費償還請求
上記のように、賃貸人は、賃貸物の修繕に必要な修繕をする義務を負っているのであるが、小さめの修繕は渋る。
小規模の修繕は、危機感が湧きにくいのだ。
俺が電話で修繕請求をしたときに、オーナーは「わかりました」といって、業者を部屋に来させて蛇口をみて、その後「蛇口を交換します」ということになったのだが、それから2か月くらい音沙汰がなかった。
このような有言不実行に対する対策が、
必要費償還請求をチラつかせる
というものである。
以下の規定をざっとでいいから見てみてくれ。
607条の2第1号は、賃借人が修繕が必要である旨を賃貸人に通知し、それでも賃貸人が修繕しないときは、賃借人は自分で修繕しちゃえると規定している。
そんで、608条1項は、その費用をすぐに賃貸人に請求できると規定している。
賃貸人っていうのは、修繕するなら顔なじみの業者に頼みたいものなのである。
ところが、賃借人が勝手に決めた業者に修繕されると、不必要に高価なものを取り付けられたり、高い費用を請求されかねない。
賃貸人は、賃借人に勝手に修繕されるのをいやがるのである。
だから、賃貸人が修繕してくれない場合、「この修繕は必要費ですから、このまま修繕していただけない場合はこちらの方で修繕し、費用を請求させていただきます」といえば、一発だ。
俺の場合、当日のうちに、5分で、修繕工事の日程を決めてくれた。そんなもんなのである。
だが、そもそもこの「必要費」って、具体的にどのようなものなのだろうか?
必要費とは
必要費とは、賃借物を、契約で約定された使用収益に適する状態にするために支出した費用のことをいう。
たとえば、雨漏りの修繕に要した費用、台風などで破損した窓ガラスの取り換え費用、備付け給湯器やエアコンなどの修理費用がこれにあたる。
俺の蛇口についてみると、賃貸物の一部として蛇口が備え付けれていて、これを水漏れしないような通常の状態で使用することが契約として約定さえていたといえるから、必要費にあたる。
このように、必要費に当たることがバシッと分かっていれば、自信をもって賃貸人に請求できるから、自分がしてほしい修繕が契約に照らして「必要」といえるか、上記例を参考にしたり、ググったりして調べてみよう。
法的交渉は、①法的知識だけでなく、②社会心理学に基づく心理誘導スキルも大切になる。
ここも俺はしっかり学んでいるから、破産を自分で完遂したり、単なる法律ガリベンではできないこともやってのけられるのだ。
結論からいうと、貸主は小規模な修繕については、特約で免れることができるが、大修繕にあたる義務を免れることはできない。
契約書に、「小修繕は借主の負担に属する」という条項があった場合、このような特約は有効であり、電球取り換え費用などの細かい修繕費用は賃借人の負担となってしまう。
他方、「必要費は、借主の負担に属する」などと、大修繕も含めて借主の負担に属するとする条項は、貸主に有利すぎて反社会的であるので、無効である(民法1条2項・民法90条・消費者契約法10条)。
小修繕と大修繕の区別について、「建物の基本構造に影響すべき現状を変更するような修繕部分は賃貸人の負担すべき修繕義務の範囲に属する」(=大修繕)と判示する裁判例がある(東京地裁平成3年5月29日)。
以上のように、必要費に当たる場合、修繕請求したり、必要費償還請求ができるのだが、「必要」とはいえなくても、賃貸物にとって「有益」な支出をしたときは、どうなるのだろうか?
これを「有益費」というのだが、これについても民法は、制限付きで貸主に請求できるとしている。
次は、この有益費について見ていこう。
有益費償還請求
有益費とは、賃借物の改良のために支出した費用であって、賃貸目的物の客観的価値を増加させるものをいう。
たとえば、傷んだ壁紙、外壁タイル、床の張り替え費用などである。
賃借人のシュミ趣向で「価値が高まった」といってもダメで、「客観的」(=万人がみて)に価値を高めるといえるものでなければ、有益費とは認められない。
また、客観的価値を高めるものであっても、賃貸物に一体化せずに独立しているものは、後述する「造作」にあたり、有益とはならない。
有益費は、①賃貸借の終了時に、②その価格増加が現存するときに限り、③賃貸人の選択に従って投下費用または増加額が償還される(608条2項・196条2項)。
造作買取請求
造作とは、独立性を有しつつ賃借物にくっついた1賃借人の所有物のであって、賃借物の使用に客観的に便益を与えるものである。
畳、建具がこれにあたるが、裁判例ではその他、店舗の釣り棚、雨戸、広告用表示用板、木造の間仕切り、空調設備、据付け戸棚、ダクト等一式などが造作と認められている。
他方、容易に取り外しができる状態で取り付けられているエアコンは、造作に当たらないとする下級審裁判例がある(東京簡判平成22年1月25日)。
造作は、①賃貸人の同意を得てくっつけていたときは、賃貸人に対し、②賃貸借契約の終了時に、③時価で買い取ることを請求することができる(借地借家法33条)。
①の同意って大事だから、忘れないようにしよう。
練習問題~オーダーメイドの網戸は必要費?有益費?造作?~
俺はクーラー使わない派だから、夏は窓を全開にする空冷スタイルだ。
しかし、俺の部屋(出窓)には当初から網戸がなく、虫が入り放題だった。
虫、入り乱れること、夏の夜の夢のごとし。
我慢の限界がきて、網戸をオーダーメイド(6000円くらい)したのだが2、この網戸って、必要費・有益費・造作のどれに当たるだろうか?
いままでの知識を動員して、考えてみてほしい。
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まず、必要費とは、約定の使用収益に適する状態にするための費用をいうところ、本件網戸は契約後につけたものであるから、必要費にはあたらない。
そして、部屋が虫が入らないものとなり、客観的価値を高めているから、有益費か造作にあたる。
そうすると、残る判断要素は、独立性がないか(→有益費)あるか(→造作)である。
ここは、判断が分かれうる。
オーダーメイド網戸造作説
網戸は取り外し容易であり、部屋と一体化したとはいえないから、独立性が認められ、造作であるという考えも成り立ちうる。
そうすると、「賃貸人の同意」がないと、造作買取請求はできない。
のだが、俺は、漠然と有益費にあたる思ってしまっていて、同意を得ないでくっつけてしまった。
ミス!
事後の同意だと色々メンドクサイことになるから、エネルギー使いたくない。
造作説に立つと、この網戸は、
- 勉強費用
- 退去費用の交渉材料(網戸つけたんだから‥)
- 次の賃借人へのプレゼント(いいことすれば、なんかいいことあるさ♪)
となるにとどまる。
オーダーメイド網戸有益費説
対して、オーダーメイド網戸はその窓だけに適するサイズであり、その窓と一体化していて初めて存在価値が生じるのだから、独立性はない、という考え方も成り立ちうる。
俺の直観はこっちだ。
だから、賃貸借終了時に有益費として請求してみる。
その成果は、退去時にまた報告するな!
参考にしたいから、コメントで考えを教えていただけると嬉しい!
あとがき
このように、法律の知識があれば、賃貸人にちゃんと仕事をさせて生活をより快適にしたり、自分でより快適にして費用を払ってもらうことができる。
法律には「権利の上に眠る者は保護しない」という格言がある。
法律って、法律家だけでなく、民主主義社会で生きるすべての人が学ぶべき、自分の身を守る必須スキルだといえるだろう。
では、アディダス!
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