オス!かずだ!
抵当権の効力が及ぶ「付加して一体となっている物」(370条本文。以下、「付加物」という)について、判例・通説は原則として、従物(87条)と付合物(242条本文)もこれに含まれるとしているよな。
だが、
- 「従物」とか「付合物」の定義があやふや…
- それぞれの違いがわからず、イメージがもてない…
- それぞれの具体例も整理できてない…
という方がいないだろうか。
抵当権の効力が及ぶ範囲ってのは、実務上も試験対策上も極めて重要な論点だよ。
その理解があいまいだと、試験でも実務でもパッとしない実力であると判断されてしまう。
この記事では、
- 上記各概念をバッチリ定義して表で整理し、
- それぞれを図にしてイメージできるようにし、
- 具体例を豊富に示している。
本記事を読めば、「付加物って何なのか」という司法試験・司法書士試験の重要分野が得点源になり、かつ従物や付合物の概念も併せて押さえられるので、知識が関連付けて整理され、コスパがよい学習ができる。
ぜひ、最後まで読んでいってくれ!
なお、参考文献は以下によった。
- 民法の基礎2 物権第2版 佐久間 毅
- 担保物権法 第2版 (民法講義) 松井宏興
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目次
カオス!「付加物」概念
ある不動産について抵当権が設定された場合、抵当権の効力は、抵当不動産の他に、付加物にも及ぶ(270条本文)。
抵当権は非占有担保であり、抵当権者は管理する手間を省けるし、設定者も担保物の価値を利用しながら被担保債権を返済していけるので、かなり便利で普及している。
ところが、付加物の概念は抽象的で不明確だし、抵当不動産と一体をなしている物は少なくなく、「どのへんまで抵当権の効力が及ぶか」はかなり重要な問題点となっている。
しかも、かつ民法には「従物」(87条)や付合物(242条)という似た概念があることから、それぞれをどう整理するか、そしてこれらが付加物に含まれるのかという点からも争いが生じており、付加物概念をカオスにしている。
これらの問題を解決する方法は、以下行うように、図でイメージできるようにし、それぞれを定義し整理し、具体例をたくさん挙ることである。
図と表と具体例
まず、図と表で全体像をざっくりつかもう。その後、詳しめに説明していく。
定義 | 効果 | ||
---|---|---|---|
従物 | 2個の物の間に、経済的に一方が他方を補う関係がある場合の、補っている方 | 主物の処分に従う (87Ⅱ) |
|
付合物 (242本) | 弱い付合 | 不動産に別の物が結合して、分離によって社会通念上認容することができない不利益を生じるおそれが生じている場合であって、 当該付合物にが未だ取引上の独立性を有している状態 | 原則として、不動産の所有者が所有権を取得するが(242本)、権限による付属のときは吸収されない(同但) |
強い付合 | 上記場合のうち、 付合物が取引上の独立性を有しなくなっている状態 | 上記権限による例外は認められない |
従物とは
定義
2個の物の間に、経済的にみて一方が他方を補う関係がある場合に、効用を補われている方を主物、補っている方を従物という。
要件
2個のもの(甲と乙)は、次の要件が満たされるときに、一方が主物(甲)、他方が従物(乙)と認められる。
- 甲と乙に、互いに物としての独立性が認められること
- 甲と乙が接着しているなど、付属していると認められる場所的関係にあること
- 乙が甲の効用を継続的に高めていること
- 甲と乙が同一の所有者に属すること
である。
具体例
- 絵画と額縁
- 建物とエアコン・畳・その他家具調度品、
- 土地と石灯籠・取り外し可能な庭石・ガソリンスタンドの地下タンク
などは、前者が主物、後者が従物の関係にあるとされている。
効果
2個の物が主物と従物の関係にあるとされた場合には、従物は主物の処分に従う(87条2項)。
たとえば、主物が譲渡されると、従物も一緒になって譲渡されることになる。
主物の処分は、従物によって効用が高められた状態のままでされることが通常であると考えられるからである。
したがって、同条は当事者の合理的意思の推測に基づく任意規定である。
付加物に含まれるか
判例
従物は主物の処分に従うという87条2項を根拠に、抵当権設定当時に存在した従物に抵当権の効力が及ぶことが肯定されている(大連判大8年3月15日)。
そして、抵当権設定後の従物に関しては、上記判例は間接的に否定する態度を示すものであると解されていた。
しかし、その後の判例は、抵当権設定後の従物にも抵当権の効力が及ぶとしている(大決大正10年7月8日など)。
学説
抵当権は、設定から実行に至るまでの間に、ある程度の期間が経過するので、設定後の従物に効力が及ばないとするのは、抵当不動産全体を被担保債権の範囲内で把握しようとする抵当権の要請に反し、かつ当事者の通常の意思にも反する。
そこで、今日では付加物に従物も含まれるとして、設定時に関わらず、抵当権の効力は従物に及とぶとするのが通説である。
付合物とは
定義・要件
付合物とは、「不動産に従として付合した物」をいう(242条本文)。
その具体的な意味について争いがあるが、分離による社会的損失を防ぐという趣旨から、分離によって社会経済上容認できない不利益を生じうる場合に付合すると解するのが妥当である。
効果
不動産の所有者が、付属物の所有権を取得する(242条本文)。
付属物を所有していた者は、248条により、不動産の所有者に対して償金請求をすることができる(248条)。
弱い付合+権限ありの場合の例外
ただし、
- 弱い付合とされる場合であって、
- かつ他人が「権限」1によりその物を付属させたときは、
付属物は不動産に吸収されない(242条但書)。
弱い付合とは、付属物が不動産に対して取引上の独立性を有すると認められる場合をいう。
かかる場合、付属物の所有権を不動産の所有権とを別々にしても、分離により物理的に物の損傷が起きる危険は少ないし、付属物について独立の客体とする必要性が認められるからである。
反対に、付属物について独立性が認められない場合は、242条但書は適用されず、権限の有無にかからわず、不動産の所有者は付属物の所有権を取得する(強い付合)。
具体例
- 土地については、立木法の登記のない立木、取り外し困難な庭石、土地に投入された土砂、建物の増改築部分などである。
- 建物については、雨戸や入口の戸扉など建物の内外を遮断する建具類、ビルのエレベーターや配電盤などである。
付加物に含まれるか
上記242条但書の場合を除き、付合物は抵当不動産に吸収されてしまうことから、付合物は付合の時期に関わらず、370条の付加物に含まれる。
まとめ&370条但書の2つの例外
このように、従物も付合物(242条但書の場合を除く)も、付加物に含まれる。
ただし、370条但書は、次の二つの例外を定めている。
- 設定行為に別段の定めがある場合
- 424条3項の詐害行為取消が可能な場合2
あとがき
いかがだっただろうか。
ごちゃごちゃの従物、付合物、付加物の概念を定義、イメージ、具体例で整理できたのではないだろうか。
勉強とは、整理整頓である。
試験や実務で即座に使えるように、分類して準備しておくのである。
参考文献
- 民法の基礎2 物権第2版 佐久間 毅
- 担保物権法 第2版 (民法講義) 松井宏興
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