おす!かずだ!
- 行政手続法と行政不服審査法の知識、いくら過去問といても身につかないよ~(暗記つまらん!)
- 行政書士試験まで時間ないのに、行政手続法と行政不服審査法抑えられてない!、重要ポイントを網羅したまとめ教材が欲しい!
という方はいないだろうか?
行政手続法と行政不服審査法は、ともに条文知識がものをいい、また聴聞と審査請求など、知識が混同を起こすややこしい分野だ。
知識は、無味乾燥の暗記に走らず、理解を伴う整理をしないと身につかない。
本記事は、イラストによるイメージ化、表による比較により、あなたの頭にしっかりとと残るよう、両法のポイント知識(過去問知識)を網羅しているので、ぜひ最後まで読んでマスターし、得点源にしていただきたい。
なお、参考文献は、
- 基本書:櫻井敬子・橋本博之『行政法』
- 過去問集:横溝慎一郎『行政書士試験見るだけ過去問 行政法(第2版)
によった。
さて、早速はじめて行こうと思うのだが、その前に、行政書士試験の中での行政手続法と行政不服審査法の位置づけを正確に把握しておこう。
目次
行政手続法と行政不服審査法の行政書士試験における内容・比重
行政法の内容・比重
行政書士試験において出題される行政法の分量と内容は、
であり、行政書士試験の4割近くを占める。
引用:行政書士試験「行政法」の勉強方法!記述式対策もしっかりやろう!(Forsight)
行政法とは、
- 行政手続法
- 行政不服審査法
- 行政事件訴訟法
- 地方自治法
- 国家賠償法
の総称であり、この他学説により形成された「行政法総論」という分野とそれに関連する判例も広義の行政法として、行政書士試験の補足範囲となる。
行政手続法の内容・比重
行政手続法は、行政活動を法による事前手続きによって統制しようとするものである。
事前手続とは、行政の意思決定が行われるまでのプロセスについて、公正・適正の観点から仕組まれた手続的規律をいう。
行政の決定がなされた後に違法性を争うことは多くのコストがかかるため、国民の権利利益の保護の観点から、決定前の事前コントロールの必要性が認識されていた。
これは、以下の重要判例にも現れている。
上記一連の判例は、根拠法令の解釈という形で行政手続き理を形成していたが、その手法に伴う限界があり、事前手続きの統一的ルールの策定が叫ばれていた。
そして、規制緩和の流れの中、許認可行政の透明性・迅速性の要請高まり、平成5年(1993年)に行政手続法が成立した。
この行政手続法は、行政書士試験において、5肢択一方式で例年3問出題される。記述式でも2007年と2019年、2021年の3回出題されたことがある。
問われるのは、行政手続法の条文知識である。
行政不服審査法の内容・比重
明治憲法下から日本国憲法施行後しばらくまでは、行政不服申立てに関する一般法として、旧訴願法が施行されていた。
しかし、同法は、
- 行政の自己統制に主眼を置き(訴願前置主義6)
- その対象も法に列挙されたものに限られる
など、行政救済として不十分なものであった。
そこで、昭和37年(1962年)、旧訴願法に代りる行政不服申立の一般法として、旧行政不服審査法が制定された。
同法は、原則としてすべての行政処分を不服申し立ての対象とする一般概括主義を採用し、簡易迅速な手続きによる権利利益の救済を一歩進めた。
その後、行政手続法の制定を受け、さらなる行政不服申立制度の整備に向けて機運が高まり、平成26年(2014年)、行政不服審査法が制定された。
現行政不服審査法は、審理員による審理手続き、行政不服審査会への諮問手続き、処分庁への異議申立ての廃止による審査請求への一元化など、公正性向上、利便性向上をさらに進めている。
このような新しい行政不服審査制度への期待の高まりからか、行政書士試験における行政不服審査法は、2016年度から5肢択一で3問出題されるようになった(2008年度から2015年度は2問だった)。
さらに、その後「特定行政書士」制度も誕生し、研修を得てテストに合格した行政書士は、不服申立ての手続について代理することができるようになり、行政書士試験における行政不服審査法の知識の重要性は高まっている(参考:特定行政書士とは?行政書士の違いは?研修や試験、合格率も紹介!Forsight)。
行政不服審査法において問われる知識は、条文内容に関するものがほとんどである。
条文知識は、知識整理が重要!
このように、択一は、行政手続法3問、行政不服審査法3問合わせて6問であり、行政法試験択一19問の約3分の1を占める。
さらに、記述も出る可能性があるから、この2分野は行政書士試験全体の中で、かなりの比重があるといっていいだろう。
そして、この二つの分野の知識は、上述のように条文知識が問われており、条文知識は、知識整理がものをいう。
単に過去問をといて間違いを直していても、
- 似ている知識と混同していたり、
- 制度趣旨との繋がりがない孤立した知識となっている場合、
全然身につかない。
個々の知識と言うのは、それを支えるネットワーク(ほかの知識との関連性)があってこそ維持されるのである。
そして、ネットワークとは、
- 体系の中での位置づけ
- 他の知識との異同
という要素がある。
上のマインドマップがそのいい例で、記憶における高い有効性が承認されている。
本記事も、行政手続法と行政不服審査法について、このマインドマップ的構造を意識して、
- イラスト
- 比較表
で整理したから、知識のネットワークが「つながった!楽しい!」という感覚と共に、繰り返し学んでいただきたい。
まずは、行政手続法から。
行政手続法の適用範囲
行政手続法は、処分・行政指導・届出・命令等の制定について一般的規律を定めるものであるが(1条1項)、処分等であっても、
- 他の法律による特別の定め(1条2項)
- 3条、4条に掲げられた一定の類型
については、適用除外となる。
後者の知識は膨大であり、すべてを押さえるのは得策ではない。
行政書士試験に出るポイントをしっかり押さえよう。
試験に出るのは、なんといっても3条3項、すなわち地方公共団体が行う処分等の知識である。
まず、択一の問題で、行為主体が地方公共団体であることを確認したら、以下の表にあてはめて結論を導こう。
行為類型 | 処分・届出 | 行政指導・命令等 | ||
---|---|---|---|---|
根拠 | 法律 | 条例・規則 | 法律 | 条例・規則 |
適用 | 〇 | × | × | × |
このように、適用除外は、
- 行為主体
- 行為類型
- 根拠
という3つの判断要素で結論を導こう。
申請に対する処分と不利益処分の手続き比較
行政手続法の対象となる処分がわかったところで、申請に対する処分と、不利益処分を比較でおさえよう!
定義イメージ
まず、申請に対する処分と不利益処分の定義が定まっていないと、後の様々な問題を解く際に、ごちゃごちゃになって混乱する。
しっかり定義を確立しておこう。
実際、ひっかけが問題が出ている。
- 「申請」とは、法令に基づき、申請者本人または申請者以外の第三者に対しなんらかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう(2020年問11(4))
- 「不利益処分」とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名宛人として、直接にこれに義務を課し、又は申請を拒否する処分である(2011年問13(2)改題)
…
…
答えは、両方×。
理由は、上のイメージ図と条文で要チェックだ!
「届出」(2条7号)とは、申請から、「諾否の応答」という要素が抜けているものであり、単に一定の事項を通知する行為でしかない。
届出については、
- 様式が形式上の要件に適合しており、
- 提出先の事務所に到達した際に手続き上の義務が履行されたことになること
を押さえておけばOKだ(37条)。
手続きイメージ
定義がわかったところで、今度は、ざっくりとした手続きの流れのイメージを持っておこう!
申請に対する処分の手続き
行政庁は、申請が到達した場合、遅滞なく審査を開始しなければならない。
また、申請が形式要件を満たしていない場合、
- 申請者に対して補正を求めるか、
- 申請を拒否するか
の対応をしなければならない(7条)。
従来行われていた「受付拒否」や「返戻」が違法であることを明確にしたものとして、同規定は重要である。
不利益処分の手続き
予定される不利益処分の通知は、不利益処分の名宛人が自己の権利利益を手続的に防御するための不可欠の前提として、行政庁の行為義務として定められている(聴聞について15条・弁明の機会の付与について30条)。
行政庁は、不利益処分の決定をするときは、聴聞調書・報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌して行わなければならないとされるのみで(26条)、主宰者の意見に従う義務はない。
比較
申請に対する処分(2③・2④イ参照) | 不利益処分(2④本) | ||
---|---|---|---|
基準の策定 | 定め | 義務(5Ⅰ) | 努力(12Ⅰ) |
公開 | 原則:義務 例外:行政上特別の支障(5Ⅲ) | 努力(同) | |
標準処理期間 | 定め | 努力(6) | × |
公開 | 義務(6) | × | |
拒否理由 | 原則:処分と同時(8Ⅰ本) 例外:客観的指標に適合しないことが明らかな場合(同但) | 原則:同時 例外:理由を示さないで処分する差し迫った必要があるときは、困難な事情がある場合を除き、相当の期間内に示せば足りる(同Ⅰ但・Ⅱ) |
|
意見聴取 | 努力(公聴会。10) | 原則:義務(聴聞・弁明の機会の付与。13Ⅰ) 例外:同Ⅱ参照 |
いくつか、ポイントとなる部分を解説しておこう。
- 申請に対する処分における審査基準の公開は、行政指導指針においてもほぼ同内容の規律となっている(36条)
- 不利益処分において、処分基準の定めが努力義務とされている理由、個別具体的な判断が必要だからである。
- 申請に対する処分において標準処理期間の定めが努力義務であるにもかかわらず、公開が義務となっている理由は、標準処理期間を定めただけで公開しないと、目安として機能せず、意味がないからである。
聴聞と弁明の機会の付与の比較
聴聞イメージ
下図を見ながら、第3章第2節の条文をすべて一読しておこう。これだけで、過去問がどんどん解ける。
弁明の機会の付与のイメージ
簡易な手続きである弁明の機会の付与は、
- 弁明書・証拠書類を提出して行う書面審理が原則であり(29条1項・2項)、
- 行政庁が口頭で認めた時に、例外的に口頭で行われる(29条1項)
ことを押さえよう。
これに対して、聴聞は書面・口頭の原則・例外の区別なく、口頭で質問・説明のやりとりを行うこともできるし(20条1項2項)、出頭に代えて陳述書等の書面を提出することもできる(21条1項)。比較しよう。
また、どの聴聞の規定が準用されるか押さえることも大事である(31条)。
準用されるのは、
- 公示送達(15条3項)
- 代理人(16条)
だけだと押さえておけば大丈夫だ!
行政指導手続き規制の体系
行政指導の定義から、さまざまな手続規制が派生して生じていることを意識しつつ、条文と過去問を押さえよう。
また、行政指導は口頭でなされることを前提としており、内容・責任者・権限の根拠が記載された書面交付は、
- 相手方から書面を求められたときに(35条3項)
- 行政上の支障がない場合であって(同)
- 同条4項の2つの場合にあたらないとき
になされることを押さえよう。
命令等策定手続の体系
上図をみつつ、条文と過去問を押さえよう。
まず、出発点の「命令等」(2条8号)の定義が重要である。
命令等とは、内閣または行政機関が定める次に掲げるものをいう。
- 法律に基づく命令または規則(イ)
- 審査基準(ロ)
- 処分基準(ハ)
- 行政指導指針(二)
とくに、「行政指導指針は命令等に含まれない」という形で、過去問で繰り返し問われている。
聴聞手続と審査請求手続の比較
行政手続法の聴聞を押さえたら、審査請求を比較して押さえると、コスパがいい!
引用元:櫻井敬子・橋本博之『行政法』【第6版】235頁
図で手続きの全体像のイメージを持てたところで、表で両者を比較していこう。
条文を引いて、過去問と照らし合わせてくれ!
聴聞 | 審査請求 | |
---|---|---|
できる場合 | 出来る場合を限定列挙(13Ⅰ①)し、それ以外は弁明の機会の付与(同②) | できない場合を限定列挙し、それ以外はできる(7。一般概括主義) |
主宰者 | 行政庁が指名する職員(19Ⅰ) →処分に関与した者も可 | 審理員(9Ⅰ) →処分に関与した者は不可(同Ⅱ①) |
審理方法 | 陳述書等(21)または口頭(20Ⅱ) | 原則書面(29、30) 例外として、申立による口頭意見陳述(31) |
意思決定への影響 | 十分斟酌(26) | 答申書、審理員意見書と異なる内容である場合には、その理由を裁決書に付記(50Ⅰ④) |
不服申立 | 出訴(審査請求不可。27) | 再審査請求(6)または出訴 |
審査請求後に出訴を選択する場合、次に問題となるのが、原処分主義と裁決主義である。
ここが結びついてない方は、下の記事で押さえておこう!
審査請求・再調査請求・再審査請求比較
審査請求の特徴がつかめたところで、これと再調査請求・再審査請求を比較して押さえてしまおう!
審査請求 | 再調査請求 | 再審査請求 | |
---|---|---|---|
特徴 | 旧法になかった「公正」(1Ⅰ)手続きという要素が加味され、審理の客観性・公正性が向上 | 簡易な手続きで処分庁自身に処分の見直しをさせる | 審査請求に準じた手続きで、専門性を有する審査会による2段目の救済手続きとして存置 |
対象 | 処分(2)・不作為(3) | 処分(5Ⅰ本) | 処分または原判決(6) |
誰に | 原則として処分庁・不作為庁の最上級行政庁(4④) | 処分庁(5Ⅰ本) | 法律で定められた行政庁(6Ⅱ) |
要件 | ・処分について法律上保護された利益(2)、不作為について「法令に基づく申請」(3) ・再調査請求したときは、原則として決定を得た後(5条2項本文) ・適用除外でないこと(7) ・処分について審査請求期間(18)、不作為は相当期間経過後(49Ⅰ) | ・「法律上保護された利益」 ・処分庁に審査請求できる場合は不可(5Ⅰ本) ・法律に特別の定めがある場合(5Ⅰ本) ・審査請求していないこと(5Ⅰ但) ・請求期間(54) | ・審査請求をしたこと(6Ⅰ) ・法律の特別の定め(6Ⅰ) ・請求期間(62) |
準用 | 審理員(9) | × | 〇(66Ⅰ本。以下〇は同じ) |
執行停止(25) | 〇(61本。以下〇は同じ) | 〇 | |
口頭意見陳述(31) | 〇 | 〇 | |
行政不服審査会への諮問(43) | × | × | |
事情裁決(45Ⅲ) | × | 〇 | |
拘束力(52) | × | 〇 |
再調査請求の、「処分庁に審査請求できる場合は不可」(5条1項本文)がわかりずらいな。
これは、審査請求を例外的に処分庁にしなければならない場合(4条1号。上級行政庁が無い場合等)は、再調査請求はできないということである。
かかる場合、審査請求も再調査請求も、どちらを選んでも処分庁に対してなすことになるのであり、簡易な再調査請求をあえて選んで不公正な結果になり遺恨を残すよりも、どうせ時間と労力をかけてやるのであれば、比較的公正な審査請求で納得できる形で納め、短期の紛争解決を図る、というものではないだろうか?
この点、みなさまのご意見もコメントで頂けると嬉しい。
あとがき
いかがだったであろうか。
無味乾燥にみえる条文知識も、実は現実社会の必要性(立法趣旨)に基いて定められ、それに伴いさまざまな個性を持っていることが、イメージと表で浮き彫りにできたのではないか。
行政書士試験が近づき、焦りがちだが、こんなときこそ慌てて走っては転ぶ。
焦らず、じっくり、本物の実力を涵養していこう!
ではまた!
参考文献
- 基本書:櫻井敬子・橋本博之『行政法』
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- 過去問集:横溝慎一郎『行政書士試験見るだけ過去問 行政法(第2版)
この過去問集は、膨大な過去問を、
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