民事訴訟法 百選論証
第0編 民訴答案の書き方
第1編 総則
目次
第1章 通則
第2章 裁判所
第一節 日本の裁判所の管轄権(第三条の二―第三条の十二)
第二節 管轄(第四条―第二十二条)
第三節 裁判所職員の除斥及び忌避(第二十三条―第二十七条)
第3章 当事者
第一節 当事者能力及び訴訟能力(第二十八条―第三十七条)
第二節 共同訴訟(第三十八条―第四十一条)
第三節 訴訟参加(第四十二条―第五十三条)
第四節 訴訟代理人及び補佐人(第五十四条―第六十条)
第4章 訴訟費用
第一節 訴訟費用の負担(第六十一条―第七十四条)
第二節 訴訟費用の担保(第七十五条―第八十一条)
第三節 訴訟上の救助(第八十二条―第八十六条)
第5章 訴訟手続
第一節 訴訟の審理等(第八十七条―第九十二条)
第二節 専門委員等
第一款 専門委員(第九十二条の二―第九十二条の七)
第二款 知的財産に関する事件における裁判所調査官の事務等(第九十二条の八・第九十二条の九)
第三節 期日及び期間(第九十三条―第九十七条)
第四節 送達(第九十八条―第百十三条)
第五節 裁判(第百十四条―第百二十三条)
一部請求後の残部請求
一部請求における訴訟物は、当該一部請求部分であるから、前訴において、一部請求部分が棄却されたとき、既判力は当該一部の不存在につき生ずる。そうすると、残部請求については既判力で遮断されないとも思える。この結論は妥当か。
裁判所は、一個の金銭的債権の数量的一部請求の存否を判断するにあたっては、債権全部について判断し、そこから一部請求部分が存するか判断するという過程をたどる。したがって、一部請求の棄却判決は、当該債権全部が全く存在しないという判断を示すものである。
そうであるにもかかわらず、後訴において残部の存在を前提とした請求をすることは、実質的に紛争の蒸し返しであり、特段の事情がない限り、信義則(2条)に反し許されないと解する。
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本件では、前訴において、1億円の不存在につき既判力が生じているところ、この判断に至るまでに残部部分の不存在も認定していることになる。
そうであるにもかかわらず、後訴において残部部分2億9830万円の請求をすることは、実質的に蒸し返しであるといえる。そして、これを許容する特段の事情も見当たらない。
よって、後訴裁判所は、後訴を信義則違反として却下すべきである。