【周りから攻めろ!】『反対尋問の手法に学ぶ 嘘を見破る質問力』(荘司雅彦)

オス!かずだ!

「嘘」ってきくと悪いイメージもあるけど、人間関係を円滑に回すのに、必要なときもあるよな。

言われた方も、それをわかって対応しなければならなかったり…

コミュニケーションって、言葉そのものの意味だけでなく、相手が体で発しているメッセージや、それを包み込んでいる宇宙全体から、その真意をくみ取らなくてはならないのである。

ビジネス、男女関係…

言葉の表層を超えて、奥にある真意を捉える能力って、人と関わって生きる人間には必須。

特に、AIが発達してきている流れの中で、コイツがいる領域に留まっていると、容易に食われてしまうのだ。

また、人間が成長するって、「できない」とか「わからない」領域に進出していくことであり、それには「言い訳」という嘘を、自他との対話で解きほぐしていかねばならない。

それには、嘘というものは何なのか、これを見抜くにはどうすればいいのか、嘘についての理解を深めなければならないのである。

本記事を読めば、

  • 「笑顔だけ」素敵な詐欺師に引っかからないようになる
  • 相手の真意を理解してくみ取る力が身につき、本物の笑顔が溢れる人間関係をつくれるようになる
  • 嘘を見破る質問力が身につき、自他を進化させる、新しい領域に、仲間と一緒に踏み出すことができる

から、ぜひ一緒に学んでいこう。

教材は、コレ↓

『日本弁護士白書』に公表されている平均弁護士の約10倍という膨大な弁護士経験を積んできた著者。

他人を思いやる責任感の強い人たちが、平気で嘘をつく人の犠牲になるのは、見ていられない…

そんな思いから、自身が育んできた嘘を見抜く質問術を、一般向けに公開することにした。

様々な人間関係で活きる「アート」、それが反対尋問スキルである。

かず
かず
ざっくり一言でいうと、前戯をおろそかにするな!だな。

反対尋問といわれても、法律を学んでいない人にはなじみが薄いだろう。

だから、まずは、それがどんなものか、実際に見ていただくことにしてた!

登場していただくのはなんと…あ、あの、ひげのおいちゃんである。

華麗なる芸術~リンカーンの反対尋問~

奴隷解放の父と言われる、第16代アメリカ合衆国大統領、エイブラハム・リンカーン。

ご存じない方が多いかもしれないが、実は、彼は弁護士として働いていたことがある。

反対尋問や最終弁論では手強い相手と評されていた。

リンカーンが政治家としての活動を開始したのは、25歳の頃。

イリノイ州の議会議員選挙にホイッグ党員として立候補し、当選。

当時郵便局で局長を務めていた彼は、仕事と並行して弁護士の勉強も始めます。

27歳のときに弁護士資格を取得すると、議会議員を務める傍ら弁護士としての活動も開始し、2足のわらじを履いた生活が始まりました。

そして37歳のときに同州の連邦下院議員選挙に出馬し、見事当選を果たします。

しかしその後は一時政界の中心から遠ざかり、約10年の間、弁護士としての仕事に集中した日々が続きます。

この頃の弁護士としてのリンカーンは、正義感が強く貧困者に対しても真摯な弁護に取り組み、「正直者のエイブ」という愛称で親しまれました。

引用:リンカーンとはどんな人物?簡単に説明【完全版まとめ】歴史人物.com

さあ、ここで紹介するのは、殺人罪で起訴された被告人の裁判で、被告人が殺人を犯すのを見たという、目撃証人に対する反対尋問である。

このリンカーンの反対尋問は、嘘を暴く芸術、反対尋問とはどのようなものかを知るうえで、恰好の教材である。

 リンカーン:「それで、あなたは、犯行の直前まで被害者と一緒にいて、被告人が被害者を拳銃で狙撃するところを見たというのですね。」

証人:「そのとおりです。」

リンカーン:「あなたは、彼らの近くにいたのですか。」

証人:「いや、20フィート(6.096m)ばかり離れていました。」

リンカーン:「10フィートくらいじゃなかったのですか?」

証人「いいえ!20フィートか、あるいはもっと離れていました。」

リンカーン:「そこは、見晴らしの良い野原でしたか。」

証人:「いいえ。林の中です。」

リンカーン:「何の林でしたか。」

証人:「ブナの木の林です。」

リンカーン:「8月でしたから、ブナの木の葉は繁っていましたよね。」

証人:「どちらかといえば、そうですね。」

リンカーン:「(犯行に使用されたとするピストルを示して)このピストルですが、これはその時使用されたものだと思いますか。」

証人:「そのように見えます。」

リンカーン:「被告人が発砲したところが見えましたか。その銃身をどのようにぶら下げていたとか、そんなところが全部みえましたか。」

証人:「ええ。」

リンカーン:「現場は、集会場所にそんなに近かったのですか。」

証人「1マイル(1.6km)くらいは離れていました。」

リンカーン:「電灯はどこについていました。」

証人:「集会所の牧師席の脇の上です。」

リンカーン:「1マイルくらい離れた?」

証人:「そうです。その点についてはすでに答えました。」

リンカーン:「ところで、あなたは、犯行現場で、被告人か被害者かが、ろうそくなどの灯を持っているのを見なかったですか。」

証人:「いいえ。そんなところに、何でまたろうそくなどの灯がいるのですか。」

リンカーン:「じゃあ、あなたは、狙撃の様子がどうして見えたのですか。」

証人:「月明りです。」

リンカーン:「夜中の10時に銃撃の様子が見えたのですか。」「それも、電灯のある場所から1マイルくらい離れた、ブナ林の中でですよ。ピストルの銃身が見えましたか。被告人が発砲するところが見えましたか。20フィートも離れたところから、それが見えましたか。月明りでそれらが全部見えたのですか。」

証人:「ええ。前に言ったように、全部見えました。」

(リンカーンは、胸ポケットから青表紙のついた暦を取り出し、おもむろにそれを開き、証拠として提出して、あるページを陪審員と裁判官に見せた。)

(そして、当日犯行当日の夜は月が出ておらず、月は翌朝の1時にならないと昇らないという記載の部分をゆっくりと用心深く読み上げた。)

引用:「嘘を見抜く技術」の嘘・19(総集編1・リンカーン尋問) 501westのブログ

アメリカの著名な弁護士であるウェルマンは、著書『The Art of Cross-Examination』(邦訳「反対尋問」)の中で、様々な反対尋問のやり方を紹介している

ここで注目していただきたいのが、原題では「Art」という言葉を用いていることである。

「Technique」ではないのである。

これは、もはや反対尋問は技術の域を通り越して、芸術の域にまで達している、ということを物語っている。

では次に、リンカーンが示してくれた、反対尋問の芸術の描き方とはどのようなものだったのか、分析してみよう。

リンカーンが用いたアート~外堀を埋めて退路を断つ~

リンカーンの反対尋問を読んでみて、あなたは、「ずいぶん回りくどい質問だなぁ」と思われたかもしれない。

単刀直入に、「夜中の10時に、どうやって被告人の犯行状況を詳しく見ることができたのですか?」と聞き、証人が「月明りです」と答えたところで、暦を証拠として提出すれば、一件落着なのではないか?

しかし、後述するように、ほとんどの敵対証人は往生際が悪く、素直に負けを認めてくれないのである。

  • 「月明りは私の勘違いでした。集会場の電灯で現場が少し明るくなっていたのです」
  • 「被告人がロウソクをもっていて明るかったのです」

というように、うまくかわされてしまう恐れがある。

だからリンカーンはあらかじめそれを見越して、証人が詭弁を弄して逃げられないように、いわば「外堀を埋めて退路を断つ」べく、あのような回りくどい質問ををしたのである(⑨⑩⑪、⑫)。

このように、真実を語らせるには、決定的な証拠があっても、「逃げ道」をふさいでおく必要ある。

獲物を絡めとるのは、ストーリーという、断ち切れないクモの糸なのである。

かず
かず
なお、リンカーンの②③、⑨の質問は、敵性証人の「反発心」を利用して逆に有利な証言を引き出すというアートである。ちょっとリスキーだが、よく相手の性質を見てるからできたんだろうな

このように、退路を断って外堀を埋めてから、本丸を攻めるのは、嘘を暴くのに有効な方法である。

しかし、むやみに相手を「嘘つき」呼ばわりすると、「何だと!私は嘘をついていない!あなたの方が嘘つきだ!」と嘘つき呼ばわり合戦になり、ビジネス上の信頼関係やプライベートにおける交友関係を失ってしまうことがある。

なぜなら、「嘘」と「記憶違い」は別だからである。

この区別を知っておこう。

「嘘」と「記憶違い」

嘘とは何か?

goo辞書で引くと、

  1. 事実でないこと。また、人をだますために言う、事実とは違う言葉。偽 (いつわ) り。「―をつく」「この話に―はない」
  2.  正しくないこと。誤り。「―の字を書く」
  3. 適切でないこと。望ましくないこと。「ここで引き下がっては―だ」

と定義されている。

ここでは、「事実でないこと」よりさらに広く、「だます」とか、「正しくない」とか、「適切でない」・「望ましくない」のように、『悪い』という感じのニュアンスがある概念であることがわかる。

人間が客観的事実と異なることを述べることだけでは、嘘というには大雑把すぎるのである。

そういうものを細かくみると、次の二つに分類できる。

  1. 記憶違い…見間違い、聞き間違いなどにより誤った記憶が作られ、それにより無意識に、客観的事実と異なることを述べてしまう
  2. 嘘…意識的に、客観的事実だと記憶している事と、異なることを述べる

人間の記憶ってのは、すこぶる頼りないのである。

例えば、冤罪事件の王道パターンは、取り調べにおいて長時間身体を拘束させられ、「素直に認めろ!」「一生出られないようにしてやる!」などと大声で怒鳴られ、「認めれば執行猶予ですぐに出られる」などと甘言に誘われて、捜査機関の「ストーリー」に沿った供述調書を作られてしまう、というものである。

取調担当の警察官の意に沿った証言をしないと、あれこれと揚げ足をとられたりしてなかなか解放してくれず、次第に事情聴取を受けている証人は、頭の中が混乱してしまって、警察官に誘導された通りの記憶に、上書きされてしまうのである。

そして、「自分に不利なことを言うわけがない」という人間の記憶・意思への妄信が仇となり、その事実に反する調書が、後の裁判で「効いてしまう」のだ。

こういう捜査機関によるバイアス以外にも、マスコミに洗脳されがちな我ら日本国民は、報道内容=真実としてしまう側面がある。

あなたも、コロナ禍を通して実感されたのではないか。

われわれは、事実を記憶するのではなく、「自ら欲することを信じようとする」(『反対尋問』ジョン・ロミリ―)のである。

ってか、そもそも人間の記憶は事実を抽象化して保存するようにできており、具体的な事実を逐一記憶するようにはできていないらしい。

参考:なぜ人は都合よく”記憶”を書き換えるのか PRESIDENT Online

そうすると、客観的事実と異なることを述べでも、「悪い」という評価ではなく、「しょうがないよね」っていう憐みの気持ちで接する方がいい場合もあると、納得してもらえるのではないだろうか。

したがって、嘘とは、客観的事実と異なることを述べることのうち、自分で「憶えてる事と違うこといってんなぁ」と自覚していること、というように、記憶違いとは分けて、定義すべきであろう。

このような区別があることを知れば、相手には悪意がないのかもしれないという、疑いを持つことができるから、ハードな交通事故をさけて、人間関係を優しく、柔らかく守っていくことができるだろう。

偽証罪でパクられないようにしよう!

ちなみに、偽証罪の「虚偽の陳述」は、嘘より少し広い概念である。

かず
かず
いつ犯罪を目撃して、裁判に引っ張りだされるかわからんから、学んでおこう!

(偽証)第169条
法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3か月以上10年以下の懲役に処する。

判例である主観説は、虚偽の陳述を、「自己の記憶に反する陳述」と、定義している。

これによれば、

  • 証言内容が客観的な事実とは異なっていても、本人がその事実を真実と信じ込んでいれば、偽証罪は成立しない(記憶違いに基づく陳述)
  • 逆に、証言内容な客観的事実に合致していても、それが本人の記憶に反するものであれば、偽証罪が成立する

つまり、偽証罪を免れるためには、自分(の記憶)に正直であればいい、ということである。

真実を述べようと肩肘はる必要はない。

真実は、みんなで協力して、近づいていくものなのだ。

罪のない記憶違いと、罪の嘘。

反対尋問は、いずれであっても、あなたに寄り添い、真実に導いてくれる。

反対尋問とは

裁判は当事者がそれぞれ得るべきと考える利益に争いがあるから起きるのであり、その勝敗は証拠で決まる。

そして証拠には書面などの物証と、人の証言、すなわち人証がある。

後者を得るのが、証人尋問である。

証人尋問には、主尋問と反対尋問という二種類がある。

そして順序としては、主尋問→反対尋問、となる。

主尋問というのは、概ね主尋問を行う側にとって有利な証言をしてくれる証人に対して裁判官の面前で行われる尋問である。

先のリンカーンの反対尋問の前には、検察官の主尋問があり、おそらく証人は検察官にとって満足できる証言をしたのだろう。

それに対して、反対尋問は、いわば敵側が、証人の証言の信ぴょう性を崩すために行われるものである。

リンカーンは、検察側の証人であって、自分の依頼者にとって不利な証言を行った証人の証言の信ぴょう性を崩すために、上記のような反対尋問を行ったのである。

当然のことながら、証人は主尋問のときとはうって変わって、反対尋問者に対して警戒心をもち、人によってはあからさまに敵意を示す場合もある。

「お前の口車には乗らないぞ」というように。

だが、立ち向かわないわけには、いかない。

前述のように人間の記憶というはすこぶる頼りないものであり、反対尋問で証言の正確性を検証することは、公正な裁判を実現するうえでマジで大切なものなのである。

特に、人権制約の強度が高い、刑事事件では。

だから、憲法では、刑事被告人の証人審問権が保障されているのである。

憲法
第37条 ①略
② 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
③略

自己に不利な証人に対する反対尋問の機会が与えられなければ、その証言は証拠として認められない。

その典型が、伝聞証拠である。

伝聞証拠とは、簡単にいうと「又聞き」であり、最初の発言者に反対尋問がされていないから、原則として証拠能力が否定される。

だから、ある証言が伝聞か伝聞ではないかを巡って、刑事裁判の法廷では、検察官と弁護人が(もっと)火花を散らす(べきな)のである。

【伝聞と非伝聞の区別を図で完全マスター】「しゃ罪といしゃ料」共謀メモを非伝聞とした東京高裁昭和58年1月27日に不同意を突きつけよう!

伝聞証拠の理解と反対尋問の巧拙が、法廷弁護士としての手腕を左右するといっても過言ではない。

身体に現れる嘘

では、反対尋問において、相手が嘘をついているとどのように見抜けばいいのだろうか?

法廷で陳述するには、「真実を述べます」と宣誓させられた挙句、傍聴人や裁判官、相手方の視線の的になる。

こんな状態で堂々と嘘をつける人は少なく、次のような特徴が現れてしまう。

  1. 目の動き…男性に限ってのことだが、嘘をついていると、目を見られたらバレてしまうという恐怖心から、つい目をそらしてしまう
  2. 先端部の動き…人間は緊張状態に置かれると、指先や足を震わせたり動かしたりする傾向がある
  3. 手の動き…人間が話を聞いてもらいたいとき、手の動きは大きくなってアピールする。反対に、聞いてもらいたくないとき(=嘘をついているとき)は、手の動きは内側に縮こまるようになる
  4. 話し方…人間が自分の記憶に基づいて話をするときは、その当時の状況を思い浮かべながら話すので、いきおい話にも抑揚が出る。
    他方、あらかじめ暗記した文章をなぞるときは、しゃべり方が単調になり、文章を棒読みしているような印象になる。
    また、バレないように早く話し終えたいという焦りから、早口になる
  5. 話の内容…嘘をつくにあたり、矛盾のないストーリーを周到に準備することになる。
    証言のときにはそれを吐き出したいという心理が働くから、嘘をつくときは、聞かれた事以上のことを土石流のように吐き出してしまう傾向がある

引用:「ミザリー」スティーブン・キング

コミュニケーションは、全身全霊で行うものである。

そして、細部まで繕うことは難しいのだ。

だがしかし、以上のような嘘つきの特徴は、あくまで一般論であり、多様な人間の中には、常に頻繁に目を動かす人もいるし、元来単調なしゃべり方の人もいるし、貧乏ゆすりがクセの人もいる。

嘘の身体的表象は、あくまで警戒心を抱くためのヒントなのであり、断定するにはまだ早い。

このヒントを得たら、次の質問術により、さらにスクリーニングをかけるのだ。

嘘を見破る質問術

著者は、嘘を見破る質問術として、次の5つを挙げている。

  1. ハッタリ
  2. 話を広げ、突然戻る
  3. 話の前後関係を変える
  4. イエスで囲い込む
  5. わざと相槌を打たずに、じっと目を見て話しを聞く

ビジネスや男女関係で、重要な決断を下すときに、役立てよう!

①ハッタリ

私がたまにやったのは、次のようなハッタリです。

法廷で敵性証人を反対尋問していましたが、どうも相手が嘘をついているかどうかわからない。

そこで私は、「え~!そんなはすないでしょう!なぜなら、私の手持ちのこの写真ではこのように写っていますよ!」といって、手元の書類をあたふたと探すふりをしました。

すると、嘘つき証人はあわてて前言を翻したり、支離滅裂な言い訳を自発的にしゃべりだすことが、少なくありませんでした。

その後、私が、「失礼しました。写真の件は私の勘違いでした」と謝罪したときには、もはや手遅れ。

相手の支離滅裂な証言だけがしっかり残っています。

引用:本書111頁

嘘つきは、まったく想定していなかった反応に出くわすと、反射的に正直になってしまうか、支離滅裂な言い訳をしてしまうものなのだ。

②話を広げ、突然戻る

これは、アメリカの法廷弁護士がよくやる手法だ。

証人が証言事項を暗記しているような場合、ともかく一度全部しゃべらせてから、話を「アサッテの方向」にもっていき、突然、元の肝心の証言部分の一部に戻すのである。

弁護人は、証人の証言を聞いた後、証人の職業や普段の生活、交友関係などを尋ね、

  • 「被告人は窓から逃げたのでしたっけ?」
  • 「被告人の顔を確認してから、お父様が倒れているのに、気づかれたのですか?」
  • 「あなたが二階に上がるまで、どのくらい時間がかかりましたか」

などという断片的な事実をしゃべらせる。

体験に基づく強固なストーリーであれば、断片の記憶も揺るがないが、作られたものならガタガタになる。

③話の前後関係を変える

上記の応用である。

  • 「ところで、彼が急に『離婚だ』と言い出したのは、玄関でしたよね?」
  • 「居間で彼が投げたバックはどこに当たったのですか?」

④イエスで囲い込む

これは、上述したリンカーンが使った「外堀を埋めてから本丸を攻める」方法である。

練習問題。

「家族との約束を破り,飲み屋などで遊んでいたことを隠し,色々と言い訳をしている夫を,妻がいかに追いつめるか」

なお、夫のスーツのポケットには、くしゃくしゃに丸まった、複数の店のレシートが入っていた。夫はそれを忘れているようである。

参考:リンカーンと反対尋問 弁護士作花知志のブログ

成功したかな?

注意点として、相手のメンツをつぶさないようにしよう。

家庭は法廷ではないので、敏腕弁護士のように振る舞うと、血の雨が降りかねない。

DV夫の場合などは特に、身の安全のために、「あなたに悪気はなかったのよね」というような、逃げ道を作るべきである(本書216頁)。

⑤わざと相槌を打たずに、じっと目を見て話しを聞く

嘘をついている人は、絶えず見破られないように頭を働かせなければならない。

その後ろめたさを隠そうと必死なのである。

だから、自分に注目されることに耐え切れない。

腕の立つ詐欺師は、自分の態度や目の動きに相手の注意が注がれないように、相手の注意をそらす工夫をするものなのだ。

例えば、オレオレ詐欺に引っ掛けるための仕掛けとして、「10軒の郵便局から10万円ずつ振り込んでほしい」という奇妙な要求をする。

これは、被害者の意識を、郵便局を回ることに向けさせ、詐欺師の言っている内容からそらすための、トリックなのである。

だから、嘘つきにに精神的なプレッシャーをかけるには、相手に注意を注ぎ続けるのが一番なのである。

あなたと対面している相手が、相槌も打たずに、じっと目を見てあなたの話しを聞いているのを想像してみて欲しい。

これで堂々を嘘をつける人は、そうそういないだろう。

上述した「身体に現れる嘘」が噴出したり、何かぼろを出してしまうはずだ。

女性は男性よりはるかに嘘が上手い

これまで延べてきた嘘を見破るアートは、男女差をほとんど考慮にいれなかった。

だが著者は、実際には、男性と女性では、嘘の上手さ、見破り方が全く異なるといっても過言ではないという。

発展篇に、話を進めよう。

たとえば、法廷で証人席に座ったとき、私の経験では、例外なく女性は堂々としています。

それに比べ男性は、そわそわしたり、顔が緊張でこわばったり、手が震えていたり、見るも哀れな人が少なくありません(もちろん、堂々としている男性もたくさんいます。念のため)

引用:本書125頁

女性の方が嘘が上手い理由

著者は、女性の方が生命力が強いという。

雪山で遭難しても、女性の方が生き残ることが多いし、寿命も長い。

参考:なぜ女性は男性より長寿なのか?WHO報告が原因を解明 人民綱

おそらく、女性は出産という大仕事に耐えられるだけの生命力が、遺伝的に与えられているのではないか。

カマキリも、メスが卵を産むために、交尾した男をたべてしまうのである。

交尾中に頭を食べられるオオカマキリのオス【共食い】

その大仕事に比べると、女性にとって法廷での嘘など、”朝飯前”なのかもしれない。

女性の嘘の見破り方

女性は嘘をつくときに相手と目を合わせる傾向が強い。

男性がビビって目をそらしてしまうのと対照的だな。

だが、これだけだとまだ嘘か否か不安定である。

第二段階として、瞳孔を見るようにしよう。

映画「ミザリー」原作スティーブン・キング

人間は興奮すると、瞳孔が大きくなる。

これは、デートで応用できる。

一緒にいる男性に関心がある場合、女性の瞳孔は大きくなるから、もっと攻めても大丈夫だとわかるのである。

嘘が蝕む心~映画「ミザリー」~

YO!YO!

新作を、書き上げた!

意気揚々の、作家ポール。

調子に乗って、車で爆走、事故って死にそう、そんな相。

中年女性がこじ開けて、今日から始まる狂気の強要。

YO!YO!

ミザリー』(Misery)は、1990年製作のアメリカ映画。スティーヴン・キングの同名小説の映画化作品で、主演のキャシー・ベイツがアカデミー主演女優賞を受賞した。

ポールの小説タイトルであり、小説内のヒロイン名「Misery」とは、直訳で「哀れ・惨めさ・悲嘆」を意味している。

大衆向けロマンス小説『ミザリー・シリーズ』の作者である流行作家のポール・シェルダンは、「ミザリー・シリーズ」最終作に続く新作を書き上げた後、雪道で自動車事故に遭って瀕死の重傷を負ってしまう。

そんな彼を助けたのは、ポールの『ミザリー・シリーズ』の熱狂的な愛読者と称する中年女性アニー・ウィルクスだった。元看護婦だという彼女は両足を骨折したポールを献身的に介護するが、看病と言いつつポールを帰さないアニーは、次第にその狂気の片鱗を覗かせ始める。

そんな時、ポールが書き上げたばかりの『ミザリー・シリーズ』の最新作の原稿を見たアニーは、出産によりヒロインが死んでしまうという結末に納得できないという理由で、原稿を燃やす事を強要してくる。

新作を灰にされたポールは、彼女の狂気に気づいて命の危険を感じたことから、決死の脱出を試みる。

車椅子を用意して、タイプライターと紙を買ってきたアニーは、「ミザリーを生き返らせろ」と強要してくる。「高級な紙はインクがにじむ」と説明すると、再び激昂してアニーは新しい紙を買いに出かけた。

その隙を狙って、アニーが落としたヘアピンで、部屋の鍵を開けて脱出を試みるが、電話線すら繋がっていなかったため、鎮痛剤を少しだけ盗んで急いで部屋に戻る。

一方、FBIも加わってのポールの捜索は、ポールの車が雪の中から見つかったことで終了してしまう。

しかし、車のドアの傷を見たバスター保安官は、ポールの生存を確信していた。

引用:ミザリー wiki

ほとんど家の中で撮られた映画。

なのに、そこらのゾンビ映画なんか比じゃないくらい、怖い。

たしかに、人間は嘘をつく生き物なのだが、それを塗り重ねすぎると、もう、自分でも何がなんだかわかんなくなってくるのではないか。

人間は、真実の中で生きているのである。

じゃあ、どういう嘘なら許されるのだろうか?

女性の嘘に対する対抗策

妻が漢と浮気しているまさにその場に夫が現れ、妻の浮気を責めた。

妻は、言った。

「あなたはなんてひどい人なの!愛する私の言うことより、自分の目の方を信用するなんて!」

男性よりも女性の方が嘘に「強い」ことを示す、フランスのエスプリ1である。

著者は、その膨大な弁護士経験から得た結論として、1対1のときは、強いて女性の嘘を暴こうとはしないほうが得策と述べる。

その理由として、

  1. 新たな攻撃材料は与えるリスクがある
  2. 逆に言い負かされるリスクがある
  3. 「脅迫の抗弁」を与えてしまうリスクがある

それぞれについて述べよう。

①新たな攻撃材料を与えるリスクがある

嘘を暴かれた女性は、物理的あるいは精神的な先制攻撃をしかけてくる可能性がある。

そんなとき、口では勝てない無骨な男性は、優位な腕力に訴えてしまうことがある。

そうすると、女性のほうにだけケガの痕跡が残り、後の裁判などで、男性が不利になってしまう。

②逆に言い負かされるリスクがある

法律や哲学を学んだ男性が、お得意のロジカル・シンキングで女性を追い込もうとしても、「ちゃぶ台」返しが待っている。

ヒステリックな感情論で理性的は話を止める戦法は、男女ともにみられるものだが、女性は迫力が違う。

私も、相談室、調停室、法廷で、女性が感情的になって涙を流しながら訴える姿を何度も見てきましたが、とても心揺さぶられるものがあり、到底男にはまねのできないものだと痛感しました。

引用:本書144頁

俺にも同様の経験がある。

周りから見ると、完全に男が敵にみえてしまうのである。

③「脅迫の抗弁」を与えてしまうリスクがある

訴訟などで、「彼女はこの書類に署名・捺印した」と主張すると、女性からお決まりのように繰り出されるのが、「脅迫の抗弁」だという。

「署名捺印しないと家から出さないといわれ、無理やり書かされたものなのです」

せっかくの印籠を突き付けても、その優位性にケチをつける瞬発力が、女性には備わっているようである。

黄門さまも、助さん格さんも、真っ青なのだ。

このように、女性とサシでやり合っては、勝ち目は薄い。

では、どのように対処すればいいのかというと、公の場で主張する、とうことだ。

第三者の目がある公の場で、上述したような「外堀を埋める」戦術を取った後、動かぬ証拠を突き付けるしかない。

女性とやり合うには、それ相応の準備と覚悟が必要なのだと、肝に銘じておくべきである。

かず
かず
女性と男性の性差については、愛の理解を深めるために、さらに考察を進めていく。

あとがき

人間の記憶のあいまいさ、嘘をつく生物「人間」の性、それをくみ取る技術…

人間のコミュニケーションって、深くて、きっと、ずっと、たどり着けないんだな。

だけど、歩んでいきたいんだ。

もっと、近づけるはずなんだ。

あっ、本記事では紹介しきれなかったが、本書には、

  • 著者が行い嘘を暴いた、様々な民事事件での反対尋問の具体例
  • ふんぞり返った専門家を対等にする必殺技「●●を変える」

など、まだまだ搾り取れるものがある。

ぜひ、実際に手に取って、華麗に嘘と付き合えるようになろう!

また、嘘を暴く反対尋問の様子を、実際の映像で見たい方は、こちらを参照するといいだろう。

 

反対尋問だけでなく、主尋問、冒頭陳述、そして最終弁論まで、裁判員裁判における法廷弁護士のコミュニケーション手法が学べる。

解説をしてくれる先生は、本場アメリカで法廷技術を学び、日弁連刑事弁護センター・法廷技術小委員会委員長を務めた、高野隆さん!

神山啓史、後藤貞人と共に三大刑事弁護人の一人として広く認知されている

高野さんは、カルロス・ゴーンの弁護人として、保釈請求に際しては、住宅への監視カメラの設置など具体的条件を提示するなどの方法で、東京地裁の保釈決定を引き出している。

さあ、嘘を見破る最強の助っ人を得て、人生のキャンパスに、スパイシーな彩りを加えていこう!

俺は、財産開示で、弁護士への尋問だ!

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